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法人が株式を売ったときの法人税|計上時期・原価の計算

会社が持つ株式を譲渡したときの譲渡損益の計算式、計上する事業年度、原価の算出方法(移動平均法・総平均法)、みなし配当の控除を説明します。

法人税法61条の2・国税庁の通達
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

会社が持っている他社の株式を売ると、売った金額と取得にかかった金額の差が、その会社の法人税の所得に入ります。個人の株式売却とは計算の考え方が違い、どの事業年度に入れるかも決まっています。

この記事は、会社(内国法人)が有価証券を譲渡した場合の基本の計算を説明します。会社法上の譲渡承認は株式の譲渡承認の手続き、会社が自分の株式を買い取る場合は自己株式の取得とみなし配当を見てください。

譲渡損益の計算式

法人税法61条の2第1項は、内国法人が有価証券の譲渡をした場合の譲渡利益額と譲渡損失額を、次の2つの金額の差で計算すると定めています。

項目内容
第1号:対価の額譲渡の時における、有償で譲渡した場合に通常得られる対価の額。みなし配当があるときは、その金額を差し引く
第2号:原価の額会社が選んだ一単位当たりの帳簿価額の算出方法で出した金額に、譲渡した数を掛けた金額

第1号が第2号を超えるときのその超える部分が譲渡利益額、第2号が第1号を超えるときのその超える部分が譲渡損失額です。譲渡利益額は益金の額に、譲渡損失額は損金の額に、それぞれ算入します。

たとえば、1株あたりの帳簿価額が5万円の株式を100株、合計800万円で売ったなら、原価は500万円で、譲渡利益額は300万円になります(数字は説明のための例です)。

いつの事業年度に入れるか:契約をした日

譲渡損益は、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金または損金に算入します(法人税法61条の2第1項)。代金を受け取った日や株券・名義書換えの日ではなく、売買契約を結んだ日で判断します。

決算期をまたいで売買する場合は、契約日が決算日の前か後かで、利益が入る事業年度が変わります。たとえば決算日の直前に契約し、代金は翌期に受け取るなら、損益は契約日がある事業年度に入ります。

なお、剰余金の配当など財務省令で定める事由による譲渡は、契約の日ではなく、配当の効力が生じる日などの財務省令で定める日が基準になります。

譲渡原価の算出方法:移動平均法と総平均法

譲渡した株式の原価は、一単位(1株など)当たりの帳簿価額に、譲渡した数を掛けて出します。一単位当たりの帳簿価額の算出方法は、法人税法施行令119条の2第1項が次の2つを定めています。

方法平均単価の出し方
移動平均法銘柄ごとに、取得のたびに、取得の直前の帳簿価額と取得価額の合計を総数で割って平均単価を出す
総平均法銘柄ごとに、事業年度の開始時に持っていた帳簿価額と、その事業年度中に取得した取得価額の総額の合計を総数で割って平均単価を出す

銘柄は、有価証券を売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券、その他有価証券のいずれかに区分したあとで、それぞれ分けます(施行令119条の2第2項)。同じ会社の株式でも、区分が違えば別々に平均を出します。

買った株式の取得価額は、購入の代価に購入手数料などの購入のために要した費用を加えた金額です(施行令119条1項1号)。金銭の払込みで取得した株式は、払い込んだ金額に取得のために要した費用を加えた金額になります(同項2号)。

算出方法の届出と、届け出なかったとき

算出方法は、有価証券の区分ごと、かつ種類ごとに選びます(施行令119条の5第1項)。有価証券を取得した場合は、取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、どちらの方法によるかを書面で納税地の所轄税務署長に届け出ます(同条2項)。同じ区分・種類の有価証券についてすでに届出をすべき場合などは、例外があります。

算出方法を届け出なかった場合や、届け出た方法で算出しなかった場合は、移動平均法で計算します(法人税法61条の2第1項第2号、施行令119条の7第1項)。届出を忘れても、原価の計算は移動平均法で行います。

みなし配当があるときの控除

譲渡の相手が株を発行した会社自身である場合などは、受け取る金額の一部が配当とみなされることがあります。法人税法24条1項は、会社の株主である法人が、その会社の自己の株式の取得などにより金銭等の交付を受けたとき、交付を受けた金額が、その株式に対応する資本金等の額を超える部分を、受取配当等の益金不算入の対象になる金額(23条1項1号・2号)とみなすと定めています。

このみなされた金額があるときは、譲渡損益の計算の第1号(対価の額)から、そのみなされる金額に相当する金額を控除します(61条の2第1項1号)。

金融商品取引所の市場での購入による自己株式の取得など、政令で定める取得は、24条1項5号のみなし配当の対象から除かれています。

時価より安く売ったとき

法人が無償または低い価額で有価証券を譲渡した場合、第1号の「通常得べき対価の額」の算定には、法人税基本通達4-1-4(市場有価証券等の価額)と4-1-5・4-1-6(市場有価証券等以外の株式の価額)の取扱いを準用します(法人税基本通達2-3-4)。時価より低い価額で売ると、実際に受け取った金額ではなく、時価に近い通常の対価の額で譲渡損益を計算する場面があります。

グループ会社や役員との間で非上場株式を譲るときは、売価の決め方で課税が変わるため、事前に税理士へ確認してください。

公式一次情報

よくある質問

株式の譲渡損益は、いつの事業年度に入れますか?
譲渡に係る契約をした日の属する事業年度です(法人税法61条の2第1項)。代金を受け取る日ではありません。
譲渡した株式の原価は、どう計算しますか?
一単位当たりの帳簿価額に譲渡した数を掛けて計算します。一単位当たりの帳簿価額は、会社が選んだ移動平均法か総平均法で算出します(施行令119条の2第1項)。
算出方法を税務署に届け出ていないと、どうなりますか?
移動平均法で算出します(施行令119条の7第1項)。
購入手数料は取得価額に含めますか?
購入した有価証券は、購入の代価に購入手数料などの購入のために要した費用を加えた金額が取得価額です(施行令119条1項1号)。
みなし配当があると、譲渡損益の計算はどう変わりますか?
対価の額から、みなし配当とされる金額に相当する金額を差し引いて計算します(法人税法61条の2第1項1号)。
株式を安く売った場合、実際の売価で計算してよいですか?
無償や低い価額での譲渡では、通常得べき対価の額を、基本通達4-1-4から4-1-6の株式の価額の考え方を準用して算定します(基本通達2-3-4)。

まとめ

  • 譲渡損益は、通常得べき対価の額と、譲渡原価の額の差で計算し、利益は益金、損失は損金に入れる。
  • 入れる事業年度は、売買の契約をした日の属する事業年度。
  • 原価は、移動平均法か総平均法で出した一単位当たりの帳簿価額に譲渡数を掛ける。届け出なければ移動平均法。
  • みなし配当があるときは、対価の額からその金額を差し引く。
  • 低い価額での譲渡は、通常得べき対価の額で計算する場面がある。

次に知りたいことは、自己株式の取得とみなし配当、株式の譲渡承認の手続き、受取配当等の益金不算入です。

本記事について。税理士監修前の概説です。組織再編に伴う株式の交付や、完全支配関係のある法人間の譲渡など、特別な扱いがある場合は含めていません(会社法上の株式交付の手続きは株式交付の手続きで扱っています)。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。