ガイド

株式交付の手続き|株式交換との違い・特別決議・下限の数

他の株式会社を子会社にするため、相手の株主から株式を譲り受け、対価として自社の株式を渡すのが株式交付です。株式交付計画、親会社の株主総会、株主からの申込み、効力発生までの順に、会社法の条文で整理します。

法人の運営
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

取引先や買収したい会社の株式を、現金ではなく自社の株式で買い取りたい場面があります。相手を100%子会社にする必要がないなら、株式交換より小回りのきく株式交付が選択肢になります。

株式交付は、株式会社が他の株式会社を子会社とするために、その会社の株式を譲り受け、譲渡人に対価として自社の株式を渡す制度です。親会社になる会社は、株式交付計画の作成、株主総会の特別決議、譲渡しの申込み、効力発生日の順で進めます。

株式交付とは何か(株式交換との違い)

会社法の定義では、株式交付は、株式会社が他の株式会社を子会社(法務省令で定めるもの)とするために、その株式を譲り受け、譲渡人にその対価として自社の株式を交付することです(会社法2条32号の2)。令和元年の会社法改正で新設された制度です。

項目株式交付株式交換
取得する株式子会社になる数(下限を計画で定める)発行済株式の全部
相手の株主申込みをした株主が個別に株式を譲り渡す契約の効力で、株式が親会社に移る
根拠会社法774条の2〜774条の11、816条の2〜816条の10会社法767条・769条(株式交換の手続きを参照)

株式交換は相手を100%子会社にしますが、株式交付は、相手の株主の一部だけから株式を譲り受けて子会社にできます(会社法774条の3第2項)。残りの株主は、そのまま子会社の株主として残ります。

会社そのものを一つにする方法は会社の吸収合併の手続き、事業だけを移す方法は会社の事業譲渡の手続きで扱っています。

株式交付計画に定める事項

株式交付をする株式会社(株式交付親会社)は、株式交付計画を作成します(会社法774条の2)。計画には、会社法774条の3第1項が次の事項を定めるよう求めています。

  • 株式交付子会社の商号と住所
  • 譲り受ける子会社株式の数の下限(子会社が効力発生日に親会社の子会社となる数でなければならない)
  • 対価として渡す親会社の株式の数(または算定方法)と、親会社の資本金・準備金の額に関する事項
  • 子会社の株式の譲渡人に対する親会社株式の割当てに関する事項
  • 株式のほかに金銭、社債などを渡すときは、その内容と割当てに関する事項
  • 子会社の株式の譲渡しの申込みの期日と、効力発生日

対価の一部に金銭などを混ぜることもできます。ただし、株式以外の対価が多いと、後述の債権者保護手続が必要になります。

株主総会の承認と省ける場合

親会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議で株式交付計画の承認を受けます(会社法816条の3第1項)。決議は特別決議で、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条2項12号)。

簡易株式交付として、総会を省ける場合があります。親会社が公開会社で、子会社の株主に渡す対価の額が親会社の純資産額の5分の1(定款で引き下げ可)以下のときです(会社法816条の4第1項)。

親会社が公開会社でない(全株に譲渡制限がある)場合は、使えません。対価の額は、親会社の株式の数に1株当たり純資産額を掛けた額、社債や新株予約権の帳簿価額、株式等以外の財産の帳簿価額を合計して計算します。

簡易株式交付でも、親会社が渡す株式等以外の金銭等の帳簿価額が、譲り受ける株式の額を超える場合は総会を省けません(会社法816条の3第2項・816条の4第1項ただし書)。また、一定数の株主が、通知または公告から2週間以内に反対を通知したときは、総会が必要になります(会社法816条の4第2項)。

子会社になる会社は、株式交換と違って、株式交付のために会社法が定める総会の承認手続きがありません。子会社の株主が、それぞれ申込みをして株式を譲り渡す形になるためです。なお、子会社の株式に譲渡制限がある場合の譲渡承認は、株式交付の手続きとは別に子会社側で必要になることがあります。

子会社の株主の申込みと下限の数

親会社は、子会社の株式の譲渡しを申し込もうとする人に、親会社の商号と株式交付計画の内容などを通知します(会社法774条の4第1項)。申込みをする人は、計画で定めた申込みの期日までに、氏名、住所、譲り渡したい株式の数などを書いた書面を親会社に出します(同条2項)。

親会社は、申込者の中から譲り受ける人と数を決めて割り当てます(会社法774条の5)。申込者は、割り当てられた数の株式について譲渡人になります(会社法774条の7第1項)。

申込期日に、申込みのあった株式の総数が計画で定めた下限の数に満たないときは、割当てと譲渡しの規定は適用されません(会社法774条の10)。つまり、子会社になる数に届かなければ、株式交付は成立しません。

申込み、割当て、譲渡しの意思表示については、心裡留保や虚偽表示を理由に無効や取消しを主張する民法の規定が適用されません(会社法774条の8)。

反対株主の株式買取請求と債権者保護

親会社の反対株主は、株式交付に反対するときに、会社に公正な価格での株式の買取りを請求できます(会社法816条の6第1項)。

ただし、簡易株式交付で総会を省く場合は、買取請求は生じません(同項ただし書)。親会社は、効力発生日の20日前までに、株主へ株式交付をする旨と子会社の商号・住所を通知します。請求は、効力発生日の20日前の日から前日までの間に行います(同条3項・5項)。

債権者保護手続は、子会社の株主に渡す対価が、親会社の株式その他これに準ずるもののみである場合以外のときに必要です(会社法816条の8第1項)。この場合、親会社は官報に公告し、知れている債権者には個別に催告します。債権者が異議を述べる期間は1か月以上です(同条2項)。

債権者保護手続の進め方の全体像は、会社分割の手続きでも扱っています。

効力発生と事後の手続き

効力発生日に、親会社は申込者から給付を受けた子会社の株式を譲り受けます。譲渡人は、計画の定めに従って、対価の親会社の株式の株主になります(会社法774条の11)。

親会社は、計画の内容などを記載した書面を、株式交付計画備置開始日から効力発生日後6か月を経過する日まで本店に備え置きます(会社法816条の2)。備置開始日は、総会の2週間前の日と、反対株主への通知または公告の日のうち、早い日などです。

効力が生じたあとは、譲り受けた子会社の株式の数など、株式交付に関する事項を記載した書面を遅滞なく作り、効力発生日から6か月間、本店に備え置きます(会社法816条の10)。

親会社が新株を発行して資本金の額や発行済株式の総数が増えたときは、登記事項の変更として、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(会社法915条1項)。

手続きの順番

親会社で総会の承認が必要な株式交付の標準的な順番は次のとおりです。

  1. 株式交付計画の作成(下限の数・申込期日・効力発生日を定める)
  2. 備置開始日から、計画などの書面を本店に備え置く
  3. 株主へ通知または公告(効力発生日の20日前まで)と、債権者保護手続(必要な場合)
  4. 親会社の株主総会で特別決議(効力発生日の前日まで)
  5. 子会社の株主へ通知し、申込みを受ける(申込期日まで)
  6. 割当てと給付、効力発生日
  7. 事後書面の作成と6か月間の備置き、変更登記(2週間以内)

申込みの総数が下限に届かない場合は、株式交付は成立しません。株主への通知期限と債権者異議の1か月以上の期間を先に置き、そこから日程を逆算します。

まとめ

  • 株式交付は、他の株式会社を子会社にするため、相手の株主から株式を譲り受け、対価として自社の株式を渡す制度。
  • 株式交換と違い、100%取得は不要。子会社になる数の下限を計画に定める。
  • 親会社は特別決議が原則。親会社が公開会社で、対価の額が純資産額の5分の1以下の簡易株式交付では総会を省けることがある。
  • 子会社の株主は申込みをして株式を譲り渡す。申込みの総数が下限に届かなければ成立しない。
  • 反対株主には効力発生日の20日前までに通知する。対価が株式のみでないときは債権者保護手続が必要。

次に確認したい論点は、株式交換の手続き、会社の吸収合併の手続き、株式の譲渡承認の手続きです。

公式一次情報

よくある質問

株式交付と株式交換はどう違いますか?
株式交換は相手の発行済株式の全部を取得して100%子会社にします。株式交付は、子会社になる数の株式を、申込みをした株主から個別に譲り受けます(会社法2条32号の2・774条の3)。
株主総会の決議は必要ですか?
親会社は原則として特別決議が必要です(会社法816条の3・309条2項12号)。親会社が公開会社で、対価の額が親会社の純資産額の5分の1以下の簡易株式交付では、総会を省けることがあります(会社法816条の4)。
申込みが下限の数に届かなかったらどうなりますか?
申込期日までの申込みの総数が計画で定めた下限の数に満たないときは、割当てと譲渡しの規定が適用されず、株式交付は成立しません(会社法774条の10)。
反対する株主は株式を買い取ってもらえますか?
親会社の反対株主は、公正な価格での買取りを請求できます。親会社は効力発生日の20日前までに通知し、請求は効力発生日の20日前の日から前日までの間に行います(会社法816条の6)。
債権者保護手続は必要ですか?
対価が親会社の株式その他これに準ずるもののみであれば不要です。社債や金銭などを渡す場合は、親会社の債権者が異議を述べられ、異議期間は1か月以上です(会社法816条の8)。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月20日時点の会社法の条文と法務局の公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の株式交付の可否や税務の判断に代わるものではありません。