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会社の事業譲渡の手続き|特別決議・個別同意・競業避止20年

会社の事業の全部または重要な一部を別の会社に売る事業譲渡は、株主総会の特別決議、反対株主への通知、従業員の個別同意、債務の引き継ぎ方の取り決めが必要になります。会社分割との違いも説明します。

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編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

会社が手がけている事業のうち、一つだけを別の会社に売りたい、あるいは事業ごと会社を譲りたいときに使われるのが事業譲渡です。株式を売る方法と違い、会社そのものではなく、事業を構成する資産や契約を選んで売る形になります。

株式会社が事業の全部、または重要な一部を譲渡するときは、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議が必要で、反対する株主には株式の買取請求権があります。従業員の契約は自動では移らず、一人ずつの同意が必要です。

事業譲渡と会社分割・株式譲渡の違い

事業を別の会社へ移す方法には、事業譲渡のほかに会社分割があります。事業譲渡での権利義務の承継は、特定承継(個別に引き継ぐ)です(厚生労働省の資料)。会社分割は、分割契約の定めに従って権利義務が包括的に承継されます。

項目事業譲渡会社分割
承継の形特定承継(個別の契約で移す)契約・計画の定めに従い包括的に承継
従業員の契約本人の個別同意が必要(民法625条1項)労働契約承継法の通知・異議申出の手続き
債権者への手続き会社法467条〜469条に債権者異議の定めはない官報公告と催告(異議期間1か月以上)

会社分割の手続きは会社分割の手続きで、会社ごと一つにまとめる方法は会社の吸収合併の手続きで扱っています。会社の株式を売る場合は株式の譲渡承認の手続きが別に必要です。

株主総会の承認が必要な場合と省ける場合

株式会社は、次のような行為(主なもの)をするときは、効力発生日の前日までに株主総会の決議で契約の承認を受けなければなりません(会社法467条1項)。

  • 事業の全部の譲渡
  • 事業の重要な一部の譲渡
  • 他の会社の事業の全部の譲受け
  • 事業の全部の賃貸、経営の委任など、これらに準ずる契約の締結・変更・解約

この決議は特別決議で、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します(会社法309条2項11号)。

次の場合は、承認を省くことができます。

場合内容条文
重要でない一部の譲渡譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款で下げた場合はその割合)以下のとき、承認は不要467条1項2号
略式の事業譲渡契約の相手方が特別支配会社(議決権の10分の9以上を持つ会社)のとき、承認は不要468条1項
簡易な事業の譲受け他の会社の事業全部を譲り受ける対価が、純資産額の5分の1(定款で下げた場合はその割合)以下のとき、承認は不要468条2項

簡易な事業の譲受けは、一定数の株主が反対を通知したときは、総会の決議が必要になります(会社法468条3項)。

反対株主の株式買取請求

事業譲渡をする場合、反対する株主は、会社に対して自分の株式を公正な価格で買い取るよう請求できます(会社法469条1項)。簡易な事業の譲受けなど、一部の場合は除かれます。

事業譲渡をしようとする会社は、効力発生日の20日前までに、株主へ事業譲渡をする旨を通知しなければなりません。公開会社の場合や、株主総会の決議で承認を受けた場合は、通知に代えて公告ができます(会社法469条3項・4項)。

株主が株式買取請求をするには、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、請求に係る株式の数を明らかにして行います(会社法469条5項)。

反対株主として扱われるには、総会に先立って反対の旨を会社に通知し、総会でも反対することが必要です。総会で議決権を行使できない株主は、反対の通知がなくても反対株主に当たります(会社法469条2項1号)。

債務・契約を引き継ぐときの取り決め

会社分割と違い、会社法の事業譲渡の規定(467条〜469条)には、債権者に異議を述べさせる手続きはありません。債務を買い手が引き受けても、元の会社が当然に債務を免れるわけではありません。

債務を譲り受け側に移して、元の会社が責任を免れるには、民法の免責的債務引受にあたる手続きが必要です。契約は、債権者と引受人との間で結ぶか、債務者と引受人の契約に債権者が承諾する形で行います(民法472条2項・3項)。

取引先との契約も、一般に相手の承諾を得て譲り受け側に移します。このため、事業譲渡では、引き継ぐ資産・債務・契約を個別に特定した契約書を作ります。

従業員の労働契約

事業譲渡には、会社分割のような労働契約承継法は適用されません。厚生労働省のQ&Aは、事業譲渡で労働契約を譲り受け側へ承継させるときは、民法625条1項により、承継予定の労働者から個別に同意を得る必要があるとしています。

同じ資料は、同意を得るにあたって、次のように協議することが適当としています。

  • 事業譲渡の全体の状況、譲り受け側の概要と労働条件(業務内容・就業場所など)を協議する
  • 労働条件を変えて承継させる場合は、その変更への同意を得る
  • 真意による承諾を得るまで十分に協議できるよう、時間的余裕をみて行う

事業が譲渡されたことだけを理由とする解雇については、整理解雇に関する判例法理が適用され、客観的に合理的な理由を欠く解雇は認められないとされています。労働組合との協議の扱いも、同じQ&Aの事業譲渡の項に整理されています。

譲渡会社の競業避止と商号続用

事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同じ市町村(特別区、指定都市は区)と隣接する市町村の区域内で、譲渡した日から20年間、同一の事業をしてはいけません(会社法21条1項)。同一の事業を行わない特約をする場合、その効力は譲渡した日から30年の期間内に限られます(同条2項)。不正の競争の目的で同一の事業を行うことは、期間にかかわらず禁止されます(同条3項)。

譲り受けた会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合は、譲り受けた会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法22条1項)。譲り受け後、遅滞なく本店所在地で責任を負わない旨を登記するか、第三者に通知した場合は、この責任は生じません(同条2項)。

まとめ

  • 事業の全部、または重要な一部の譲渡には、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議が必要。
  • 譲り渡す資産が総資産の5分の1以下の一部譲渡などは、承認を省ける。
  • 反対株主は株式買取請求ができ、会社は効力発生日の20日前までに株主へ通知する。
  • 債権者異議の手続きはなく、債務を移して免れるには債権者の承諾などが必要。
  • 従業員の労働契約は、本人の個別同意で承継させる。
  • 譲渡会社は、原則として同一・隣接市町村で20年間、同一事業ができない。

次に確認したい論点は、会社分割の手続きと会社の出口戦略です。

事業ではなく会社の株式を交換して取得する方法は、株式交換の手続きで扱っています。

公式一次情報

よくある質問

事業譲渡に株主総会の決議は必要ですか?
事業の全部の譲渡や重要な一部の譲渡では、効力発生日の前日までに特別決議が必要です(会社法467条1項・309条2項11号)。譲り渡す資産が総資産の5分の1以下の一部譲渡などは、承認を省けます。
反対する株主は株式を買い取ってもらえますか?
反対株主は、会社に株式を公正な価格で買い取るよう請求できます。会社は効力発生日の20日前までに株主へ通知し、請求は効力発生日の20日前の日から前日までの間に行います(会社法469条)。
従業員は自動的に譲り受け側へ移りますか?
移りません。事業譲渡は特定承継のため、承継予定の労働者から個別に同意を得る必要があります(民法625条1項、厚生労働省のQ&A)。
債務を買い手が引き受ければ、元の会社は責任を免れますか?
当然には免れません。債権者と引受人の契約、または債務者と引受人の契約に対する債権者の承諾によって、免責的債務引受にする必要があります(民法472条)。
事業を譲渡した後、同じ事業を始められますか?
当事者の別段の意思表示がなければ、同一・隣接の市町村では譲渡した日から20年間は同一の事業をしてはいけません(会社法21条1項)。別の特約をする場合の効力は、30年の期間内に限られます。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月19日時点の会社法・民法の条文と厚生労働省の公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の事業譲渡の可否や税務の判断に代わるものではありません。

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