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会社分割の手続き|特別決議・債権者異議・登記2週間

会社の事業の一部または全部を別の会社に引き継ぐ会社分割は、分割契約、株主総会の特別決議、債権者保護、従業員への通知、登記の順で進みます。会社法の条文と厚生労働省の資料で、吸収分割と新設分割の違いから整理します。

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編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

複数の事業を営む会社が、一つの事業だけを子会社や別会社に移したいときに使われるのが会社分割です。事業をまとめて移せる点は事業譲渡と似ていますが、資産や負債、契約が分割契約の定めに従って一括で承継される点が違います。

株式会社の会社分割は、分割契約(または計画)の作成、株主総会の特別決議、債権者への官報公告(異議を述べる期間は1か月以上)、労働者への書面通知を経て、効力発生日から2週間以内に登記するのが基本の流れです。この記事は会社法上の手続きの概説で、税務上の扱い(適格分割など)は扱いません。

吸収分割と新設分割の違い

会社分割には、事業の引き継ぎ先が既存の会社か新しく作る会社かで2種類があります。どちらも、株式会社と合同会社が分割する会社になれます(会社法757条・762条)。

種類引き継ぎ先決めるもの効力が生じる時
吸収分割すでにある会社(吸収分割承継会社)吸収分割契約(会社法757条)契約で定めた効力発生日(759条1項)
新設分割分割で新しく作る会社(新設分割設立会社)新設分割計画(会社法762条)設立会社の成立の日(764条1項)

分割する会社は、事業に関する権利義務の全部または一部を引き継ぎ先に移します。引き継ぎ先は、その対価として株式や金銭などを分割する会社に渡すのが一般的です。株主に直接渡す形(人的分割)にするときは、債権者保護の範囲が広がります(後述)。

会社そのものを一つにまとめる方法は会社の吸収合併の手続きで、会社ごと手放す方法の比較は会社を手放す3つの出口の手取り比較で扱っています。事業を個別に売る方法は会社の事業譲渡の手続きで整理しています。

分割契約に定める事項

吸収分割で承継会社が株式会社のとき、吸収分割契約には次の事項を定めなければなりません(会社法758条)。

  • 分割する会社と承継会社の商号と住所
  • 承継会社が引き継ぐ資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
  • 承継会社が分割する会社に渡す金銭等(株式・社債・金銭など)の内容
  • 効力発生日
  • 効力発生日に分割する会社が、承継会社の株式を株主に分配する(取得対価が承継会社株式のみの取得や剰余金の配当をする)ときは、その旨

どの資産や契約を移すかを契約で個別に定めるため、定めのないものは分割する会社に残ります。新設分割でも、計画に同じような事項を定めます(会社法763条)。

株主総会の承認(特別決議)と省ける場合

分割する会社は、原則として効力発生日の前日までに、株主総会の決議で分割契約の承認を受けなければなりません(会社法783条1項)。引き継ぐ側の株式会社(承継会社)も、原則として効力発生日の前日までに株主総会の承認を受けます(会社法795条1項)。新設分割では、分割する会社が総会で計画の承認を受けます(会社法804条1項)。

この決議は特別決議です。議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します(会社法309条2項12号)。

次の場合は、株主総会の承認を省くことができます。

場合内容条文
簡易分割(分割する会社側)引き継ぎ先に移す資産の帳簿価額の合計が、分割する会社の総資産額の5分の1(定款で下げた場合はその割合)以下のとき、分割する会社の総会が不要になる784条2項(新設分割は805条)
簡易分割(承継会社側)承継会社が渡す対価の額が、承継会社の純資産額の5分の1(定款で下げた場合はその割合)以下のとき、承継会社の総会が不要になる796条2項
略式分割相手の会社が特別支配会社(議決権の10分の9以上を持つ会社)にあたるとき、被支配側の総会が不要になる784条1項・796条1項

略式分割と承継会社側の簡易分割には、条文のただし書きによる例外があります。たとえば承継会社側の簡易分割は、取締役が総会で説明しなければならない場合(承継債務額が承継資産額を超えるときなど)には使えません(会社法796条2項ただし書き)。該当するかは条文で確認が必要です。

債権者保護手続

分割すると、債務を負う会社が変わる場合があります。そのため、債権者は一定の範囲で異議を述べることができます。

会社異議を述べられる債権者条文
分割する会社(吸収分割)分割後に分割する会社へ債務の履行を請求できなくなる債権者。人的分割では全債権者789条1項2号
承継会社(吸収分割)承継会社の債権者すべて799条1項2号
分割する会社(新設分割)吸収分割と同様の範囲の債権者810条1項2号

異議を述べられる債権者がいる会社は、次の事項を官報に公告し、知れている債権者には各別に催告します(会社法789条2項・799条2項・810条2項)。

  1. 分割をする旨
  2. 相手の会社(新設分割では設立会社)の商号と住所
  3. 計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
  4. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

異議を述べる期間は、1か月を下ることができません。債権者がこの期間内に異議を述べなかったときは、分割を承認したものとみなされます(会社法789条4項)。

異議を述べた債権者には、弁済するか、相当の担保を提供するか、信託会社等に財産を信託します。債権者を害するおそれがないときは、この対応は不要です(同条5項)。

官報のほかに、定款の定めに従った日刊新聞紙または電子公告でも公告した場合、知れている債権者への各別の催告は省けます。ただし、分割では、不法行為によって生じた債務の債権者への催告は省けません(会社法789条3項・810条3項)。公告方法の定めは公告方法の変更手続きで確認できます。

債権者保護の手続きを取らなかった場合、催告を受けなかった債権者は、分割契約で履行を請求できないとされていても、分割する会社には効力発生日に有していた財産の価額を、承継会社には承継した財産の価額を限度に、債務の履行を請求できます(会社法759条2項・3項)。

従業員への通知と労働契約の承継

会社分割では、労働者の保護のため、会社法のほかに労働契約承継法(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)の手続きが必要です。厚生労働省の資料では、この手続きの対象になる労働者は、正社員だけでなく、パートや嘱託職員を含む、分割する会社が雇用する労働者すべてです。

分割する会社は、次の人に書面で通知します。

  • 承継される事業に主として従事する労働者(主従事労働者)
  • 主従事労働者以外で、承継会社等に承継される労働者
  • 分割する会社と労働協約を結んでいる労働組合

通知事項には、その労働者が承継されるかどうかの分割契約等の定め、異議申出期限日、承継される場合に労働条件がそのまま維持されること、効力発生日などが含まれます。

厚生労働省の資料では、株主総会の承認が必要な場合の通知期限日は「株主総会の2週間前の日の前日」と整理されています。通知日と異議申出期限日の間には、少なくとも13日間を置く必要があります。

異議を申し出られるのは、承継される事業に主として従事しているのに承継されない労働者と、主として従事していないのに承継される労働者です。申し出た場合は、分割契約等の定めにかかわらず、承継の扱いが変わります。また、会社法の手続きとは別に、労働者との協議(平成12年商法等改正法附則5条)が必要で、同じ資料では、協議を全く行わなかった場合などが会社分割の無効原因になり得るとされ、著しく不十分な場合は主従事労働者が承継の効力を個別に争えると整理されています。

通知書や異議申出書の参考様式は、厚生労働省の「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)の概要」に載っています。

会社分割とは別に、従業員を他の会社へ移す方法として出向や転籍があります。違いは出向と転籍の違いで整理しています。

効力発生と登記

吸収分割の効力は、契約で定めた効力発生日に生じ、承継会社は契約の定めに従って分割する会社の権利義務を承継します(会社法759条1項)。

登記は、吸収分割の効力が生じた日から2週間以内に、本店の所在地で行います。分割する会社と承継会社は、どちらも変更の登記をします(会社法923条)。

新設分割では、分割する会社は変更の登記を、設立する会社は設立の登記を行います。期限は、総会の決議、債権者保護手続の終了、株主等への通知から20日の経過など、条文に掲げられた日のうち最も遅い日から2週間以内です(会社法924条1項)。申請書の様式は法務局の「商業・法人登記の申請書様式」にあり、登録免許税は登記の内容ごとに計算します。

手続きの順番

株主総会の承認が必要な吸収分割の標準的な順番を、条文と厚生労働省の資料から並べると次のとおりです。

  1. 分割契約の準備と、労働者との協議の開始
  2. 分割契約の締結
  3. 労働者・労働組合への書面通知(通知期限日は総会の2週間前の日の前日)
  4. 官報公告と債権者への催告(異議期間は1か月以上)
  5. 株主総会の特別決議(効力発生日の前日まで)
  6. 効力発生日
  7. 効力発生日から2週間以内に登記

債権者の異議期間が1か月以上、労働者への通知が総会の2週間前までと、日数を置く手続きが重なります。効力発生日は、これらが終わった後の日に設定します。

まとめ

  • 会社分割には、既存の会社に引き継ぐ吸収分割と、新しい会社に引き継ぐ新設分割がある。
  • 分割契約の承認は株主総会の特別決議。移す資産が総資産の5分の1以下などの簡易分割では、総会を省けることがある。
  • 債権者保護は官報公告と催告で、異議を述べる期間は1か月以上。
  • 労働者には書面で通知し、通知期限日は総会の2週間前の日の前日。通知日と異議申出期限日の間は少なくとも13日あける。
  • 吸収分割の登記は効力発生日から2週間以内。

次に確認したい論点は、会社の吸収合併の手続きと会社の解散・清算の流れです。

分割のあとの消費税の免税判定は、会社分割をしたときの消費税の納税義務で整理しています。

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公式一次情報

よくある質問

会社分割に株主総会の決議は必要ですか?
原則として必要です。分割する会社と承継会社は、効力発生日の前日までに特別決議で分割契約の承認を受けます(会社法783条・795条・309条2項12号)。移す資産が分割する会社の総資産の5分の1以下の簡易分割などでは、総会を省ける会社があります。
債権者は誰でも異議を述べられますか?
分割する会社の債権者は、分割後にその会社へ債務の履行を請求できなくなる人が対象です。人的分割では全債権者が対象になります。承継会社の債権者は全員が対象です(会社法789条1項2号・799条1項2号)。
債権者が異議を述べる期間はどれくらい必要ですか?
1か月以上です(会社法789条2項ただし書き)。期間内に異議がなければ、債権者は分割を承認したものとみなされます。
従業員に何を通知する必要がありますか?
承継されるかどうかの定めの有無、異議申出期限日、労働条件が維持されること、効力発生日などを書面で通知します。通知期限日は、株主総会の承認が必要な場合は総会の2週間前の日の前日と整理されています(厚生労働省の労働契約承継法の概要)。
会社分割の登記はいつまでにしますか?
吸収分割は効力が生じた日から2週間以内に、分割する会社と承継会社が変更の登記をします(会社法923条)。新設分割は、条文に掲げられた日のうち最も遅い日から2週間以内に、設立の登記と変更の登記をします(会社法924条)。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月19日時点の会社法の条文と厚生労働省・法務局の公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の会社分割の可否や税務の判断に代わるものではありません。