株式交換の手続き|特別決議・簡易と略式・事前事後開示
他の株式会社を100%子会社にする株式交換は、交換契約、株主総会の特別決議、書類の備置き、株主への通知、効力発生、事後開示の順で進みます。会社法の条文で、総会を省ける簡易・略式の条件まで整理します。
法人の運営グループ会社を束ねたい、取引先の会社を傘下に入れたい、というときに、相手の株主から株式を現金で買い集める方法のほかに、自社の株式と交換して100%子会社にする方法があります。それが株式交換です。
株式交換は、完全親会社になる会社が完全子会社になる会社の発行済株式の全部を、契約で定めた効力発生日に取得する組織再編です。株式会社同士なら、交換契約の締結、双方の株主総会の特別決議、事前の書類備置き、反対株主への通知を経て効力が生じ、その後に事後開示を行います。税務上の扱いは別の手続きです。
株式交換とは何か(合併・株式移転との違い)
株式交換では、株式会社が、その発行済株式の全部を取得する会社と契約を結びます(会社法767条)。株式を取得される側を完全子会社、取得する側を完全親会社と呼びます。完全親会社になれるのは、株式会社または合同会社です。
効力発生日に、完全親会社は完全子会社の発行済株式の全部を取得します(会社法769条1項)。子会社の株主は、その株式の代わりに契約で定めた対価(親会社の株式が典型です)を受け取ります。
| 方法 | 会社の数 | 子会社になる会社の法人格 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 株式交換 | すでにある2社 | 残る(親会社の100%子会社になる) | 会社法767条・769条 |
| 株式移転 | 新しく作る親会社を設ける | 残る(新しい親会社の100%子会社になる) | 会社法772条 |
| 吸収合併 | すでにある2社 | 消える(存続会社に権利義務が移る) | 会社の吸収合併の手続きを参照 |
子会社の法人格が残るので、子会社の契約や許認可、従業員との雇用関係は、会社としてそのまま続きます。株主だけが入れ替わる点が、合併や会社分割、事業譲渡との大きな違いです。
相手を100%子会社にせず、一部の株主から株式を譲り受けて子会社にする方法は、株式交付の手続きで扱っています。
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交換契約に定める事項
株式会社同士の株式交換契約には、会社法768条1項が次の事項を定めるよう求めています。
- 完全子会社と完全親会社の商号と住所
- 子会社の株主に渡す対価(親会社の株式、社債、新株予約権、金銭などのいずれか)の内容と、その割当てに関する事項
- 対価が親会社の株式のときは、その株式の数(または算定方法)と、親会社の資本金・準備金の額に関する事項
- 子会社の新株予約権者に親会社の新株予約権を渡す場合は、その内容と割当てに関する事項
- 効力発生日
対価が金銭だけでも株式交換はできます。親会社の株式を渡すかどうかは契約で決めることです。
株主総会の承認(特別決議)と省ける場合
完全子会社になる会社と完全親会社になる会社は、原則としてどちらも、効力発生日の前日までに株主総会の決議で契約の承認を受けます(会社法783条1項・795条1項)。決議は特別決議です。議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上に引き下げ可)を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条2項12号)。
公開会社の子会社が譲渡制限株式等を対価として受ける場合は、別の要件(会社法309条3項2号の特殊決議など)があります。
次のとおり、総会を省ける場合があります。
| 場合 | どちらの総会が省けるか | 条件 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 略式株式交換 | 完全子会社の総会 | 親会社が子会社の総株主の議決権の10分の9以上(定款でこれより高く設定可)を持っている | 会社法784条1項・468条1項 |
| 簡易株式交換 | 完全親会社の総会 | 子会社の株主に渡す対価の額が、親会社の純資産額の5分の1(定款で引き下げ可)以下 | 会社法796条2項 |
略式には例外があります。子会社の株主に渡す対価が譲渡制限株式などで、子会社が公開会社で、かつ種類株式発行会社でないときは、総会を省けません(会社法784条1項ただし書)。簡易の例外として、一定数の株主が、通知または公告から2週間以内に反対を通知すると、総会が必要になります(会社法796条3項)。
簡易株式交換は、親会社が渡す株式等以外の金銭等の帳簿価額が、取得する子会社株式の額を超える場合(会社法795条2項3号)など、会社法795条2項各号の場合には使えません(会社法796条2項ただし書)。対価の額が親会社の純資産額の5分の1以下かどうかは、親会社の株式の数に1株当たり純資産額を掛けた額、社債や新株予約権の帳簿価額、株式等以外の財産の帳簿価額を足して計算します(会社法796条2項1号)。
子会社になる会社の株主に、持分会社の持分などが対価として渡される場合は、総株主の同意が必要です(会社法783条2項)。
事前開示と事後開示
株主や債権者が判断できるよう、会社は契約の内容などを記載した書面を本店に備え置きます(完全親会社にも別に備置きの義務があります)。完全子会社は、主に次のいずれか早い日から効力発生日後6か月を経過する日まで備え置く義務があります(会社法782条)。
- 株主総会の日の2週間前の日
- 株主への通知の日、または公告の日
- 新株予約権者への通知の日、または公告の日
効力が生じた後は、完全子会社と完全親会社が共同して、親会社が取得した子会社の株式の数などの株式交換に関する事項を記載した書面を、効力発生日後遅滞なく作ります。完全子会社は、これを効力発生日から6か月間、本店に備え置きます(会社法791条)。
反対株主の株式買取請求
株式交換に反対する株主は、会社に対し、自分の株式を公正な価格で買い取るよう請求できます(会社法785条1項・797条1項)。子会社が行う手続きの流れは次のとおりです。
- 会社は、効力発生日の20日前までに株主へ株式交換をする旨などを通知する(公開会社の場合などは公告で代えられる)。
- 株主は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、買取請求の対象とする株式の数を明らかにして請求する。
完全親会社が簡易株式交換で総会を省く場合は、親会社の株主には原則として買取請求の権利がありません(会社法797条1項ただし書)。ただし、前述の会社法795条2項各号の場合や、一定数の株主が反対を通知して総会が必要になった場合は、請求できます。
債権者保護手続が必要になる場合
株式交換では、子会社の株主が入れ替わるだけで、子会社の債権者の財産は変わりません。そのため、原則として債権者保護手続は不要です。
ただし、子会社の株主に渡す対価が親会社の株式その他これに準ずるもののみではない場合(社債や金銭を渡す場合など)は、完全親会社の債権者が異議を述べられます(会社法799条1項3号)。このときは、親会社が官報公告と知れている債権者への催告をします。
債権者保護手続の進め方の全体像は、会社分割の手続きも参照してください。
効力発生と登記
株式交換の効力は、契約で定めた効力発生日に生じます(会社法769条1項)。登記をした日ではなく、契約で定めた日です。
登記は、効力が生じたあとに登記事項に変更があった会社が、変更の登記をします。たとえば親会社が新株を発行して資本金の額や発行済株式の総数が増えた場合は、その変更を2週間以内に本店の所在地で登記します(会社法915条1項)。申請書の様式は法務局の「商業・法人登記の申請書様式」にあります。
なお、完全子会社は、株式を取得した親会社に株主が代わりますが、株主は登記事項ではありません。子会社側の登記が必要かどうかは、変更が生じた事項があるかどうかで決まります。
手続きの順番
株式会社同士で、双方に株主総会の承認が必要な株式交換の標準的な順番は次のとおりです。
- 交換契約の締結(効力発生日などを定める)
- 子会社の事前開示書面の備置き開始(総会の2週間前の日など、早い日から)
- 子会社が株主へ通知または公告(効力発生日の20日前まで)
- 双方の株主総会で特別決議(効力発生日の前日まで)
- 効力発生日
- 事後開示書面の作成と、子会社での6か月間の備置き
- 登記事項に変更があった会社が、2週間以内に変更登記
通知の期限と備置き開始日が総会より前に来るため、総会の日から逆算して日程を組みます。略式や簡易で総会を省くときも、通知と開示の手続きは別に必要です。
まとめ
- 株式交換は、既存の株式会社を100%子会社にする方法。子会社の法人格は残り、株主だけが入れ替わる。
- 双方の総会で特別決議が原則。親が子の議決権の10分の9以上を持つ略式、対価が親の純資産額の5分の1以下の簡易では総会を省ける。
- 子会社は、総会の2週間前の日などから効力発生日後6か月まで契約書面を備え置き、効力発生後も事後開示書面を6か月間備え置く。
- 株主には効力発生日の20日前までに通知し、株主は20日前から前日までに買取請求できる。
- 債権者保護手続は、対価が親会社の株式のみでないときに親会社の債権者向けに必要になる。
次に確認したい論点は、会社の吸収合併の手続き、株式の譲渡承認の手続き、会社を手放す3つの出口の手取り比較です。
公式一次情報
- 会社法 第309条・第467条・第468条・第767条・第768条・第769条・第772条・第782条・第783条・第784条・第785条・第791条・第795条・第796条・第797条・第799条・第915条(交換契約・承認・開示・買取請求・債権者保護・登記。2026-10-20確認)
- 法務局 商業・法人登記の申請書様式(変更登記の様式。2026-10-20確認)
よくある質問
- 株式交換をすると子会社は消えますか?
- 消えません。完全子会社は法人格が残り、発行済株式の全部を完全親会社が取得する形になります(会社法769条1項)。会社そのものを一つにするのは合併です。
- 株主総会の決議は必ず必要ですか?
- 原則は必要で、特別決議です(会社法783条・795条・309条2項12号)。親会社が子会社の総株主の議決権の10分の9以上を持つ略式株式交換や、渡す対価が親会社の純資産額の5分の1以下の簡易株式交換では、一方の総会を省けます(会社法784条1項・796条2項)。
- 反対する株主は株式を買い取ってもらえますか?
- 反対株主は、会社に公正な価格での買取りを請求できます(会社法785条1項)。会社は効力発生日の20日前までに通知し、請求は効力発生日の20日前の日から前日までの間に行います。
- 債権者保護手続は必要ですか?
- 子会社の株主に渡す対価が親会社の株式その他これに準ずるもののみであれば、原則として不要です。社債や金銭などを渡す場合は、完全親会社の債権者が異議を述べられます(会社法799条1項3号)。
- 株式交換と株式移転は何が違いますか?
- 株式交換は、すでにある会社を親会社にします。株式移転は、新しく作る会社を親会社にします(会社法772条)。どちらも、子会社の法人格は残ります。

