事業譲渡の消費税|資産ごとの課税・非課税と土地があるときの課税売上割合
事業を丸ごと売ると、譲渡の対価は資産ごとに課税と非課税に分けられます。国税庁の質疑応答事例の計算例、土地が混ざるときの課税売上割合への影響、譲り受けた側の納税義務の見方を整理します。
法人の運営事業譲渡は、会社法の手続きだけでなく、消費税の面でも確認が必要です。事業に土地や建物、営業権(のれん)、債権債務が含まれるとき、譲渡の対価全体に消費税がかかるわけではありません。
事業譲渡の対価は、課税される資産と非課税の資産に合理的に区分し、課税される資産の分だけが消費税の課税対象になります。土地は非課税ですが、課税売上割合の計算では分母に入るため、あとの仕入税額控除に響くことがあります。
対価は資産ごとに課税と非課税へ区分する
国税庁の質疑応答事例は、営業権、土地、建物、債権・債務の一切を含めて譲渡する営業の譲渡を、課税資産と非課税資産を一括して譲渡するものと整理しています。
そのうえで、課税資産と非課税資産の対価の額を合理的に区分して課税するとしています。根拠は消費税法施行令45条3項です。
契約書で資産ごとの価額を定めておくと、この区分の根拠を示しやすくなります。会社法側の手続きは会社の事業譲渡の手続きで扱っています。
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国税庁の事例で見る課税対象の額
質疑応答事例の数字は次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 消費税の扱い |
|---|---|---|
| 土地(時価評価額) | 20億円 | 非課税のため算入しない |
| 営業権 | 10億円 | 課税対象 |
| 有形固定資産 | 10億円 | 課税対象 |
| 預り保証金(負債) | 5千万円 | 差引支払金額の計算に使う |
差引支払金額は39億5千万円で、課税対象となる対価の額は、営業権10億円と有形固定資産10億円を合わせた20億円です。土地の20億円は含めません。
課税対象の20億円に標準税率10%をそのままかけると、消費税は2億円になります。この税率の計算は、このページ用の単純な試算です。実際の取引では、資産ごとの税率区分や端数の処理を契約内容で確かめます。
非課税になる主な資産
国税庁のタックスアンサーが挙げる主な非課税取引のうち、事業譲渡で混ざりやすいのは次のものです。
- 土地の譲渡(借地権など土地の上に存する権利を含む)
- 有価証券等の譲渡(株券や社債のほか、金銭債権などの譲渡を含む)
建物、機械、車両、営業権のように、土地以外の事業用の資産は、国税庁の事例では課税対象に区分されています。個々の資産がどちらに当たるかは、取引ごとに確認してください。
土地があると課税売上割合が下がる
非課税取引と不課税取引は、どちらも消費税がかからない点では同じです。ただし、課税売上割合の計算では扱いが分かれます。
国税庁によると、課税売上割合は、分母を総売上高(課税取引、非課税取引、免税取引の合計額)、分子を課税売上高(課税取引と免税取引の合計額)とした割合です。非課税取引は、原則として分母だけに入ります。
仮に、事業譲渡をした課税期間に、通常の課税売上が10億円、事業譲渡の課税対象が20億円、譲渡した土地が20億円で、ほかの非課税売上はないとします。これは仕組みを見るための仮の数字です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 分子(課税売上高) | 10億円 + 20億円 = 30億円 |
| 分母(総売上高) | 30億円 + 土地20億円 = 50億円 |
| 課税売上割合 | 30億円 ÷ 50億円 = 60% |
土地の譲渡がなければ割合は100%になるところ、土地が混ざることで60%に下がります。割合が下がると、課税仕入れにかかった消費税を全額は控除できなくなる場合があります。控除の方法は課税売上割合の計算と個別対応方式の用途区分で確認できます。
たまたま土地を譲渡したときの準ずる割合
国税庁の質疑応答事例には、たまたま土地の譲渡があった場合に、課税売上割合に準ずる割合の承認を受けられる取扱いがあります。
承認が認められるのは、土地の譲渡が単発で、土地の譲渡がなかったとした場合に事業の実態に変動がないと認められるときです。割合は、次の2つのうち低いほうとされています。
- 土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合
- 土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合
事業の実態に変動がない場合とは、営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い割合の差が5%以内である場合です。
承認を受けるには「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出します。適用を受けたい課税期間の末日までに申請書を出し、その翌日以後1か月を経過する日までに承認を受けた場合は、申請書を提出した日の属する課税期間から適用されます。審査に時間がかかるため、事業譲渡の予定が決まったら早めに税務署へ確認してください。
譲り受けた側の納税義務の見方
譲り受ける会社が免税事業者の場合、納税義務の判定は、その会社自身の基準期間における課税売上高が1,000万円以下かどうかが出発点です。
国税庁のタックスアンサー(No.6501)が、基準期間が1,000万円以下でも納税義務が免除されない場合として挙げているのは、適格請求書発行事業者の登録、特定期間の課税売上高が1,000万円超、課税事業者選択届出書の提出などです。承継の特例として挙がっているのは、相続、合併、分割です。事業譲渡は、この3つには含まれていません。
合併や分割は被合併法人・分割法人の事業を包括的に承継するため、前の会社の売上が判定に入ります。この違いは合併があったときの消費税の納税義務で整理しています。
事業譲渡の後に高額な固定資産を買うと、3年間は免税や簡易課税に戻れない場合があります。詳しくは高額特定資産の3年縛りを確認してください。
まとめ
- 事業譲渡の対価は、課税資産と非課税資産に合理的に区分し、課税資産の分だけが課税対象。
- 国税庁の事例では、土地20億円は非課税、営業権10億円と有形固定資産10億円の合計20億円が課税対象。
- 土地の譲渡は、課税売上割合の分母に入るため、割合が下がることがある。
- 単発の土地譲渡で事業の実態に変動がなければ、課税売上割合に準ずる割合の承認を受けられる場合がある。
- 譲り受けた側の納税義務の承継の特例として、国税庁が挙げるのは相続、合併、分割。
次に確認したい論点は、会社分割の手続きと消費税の基準期間です。
事業を売ったあとに会社を畳む場合の消費税は、法人の解散と消費税で扱っています。
公式一次情報
- 国税庁 質疑応答事例 営業の譲渡をした場合の対価の額(対価の区分と20億円の事例。2026-10-25確認)
- 国税庁 質疑応答事例 たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認(要件と申請。2026-10-25確認)
- 国税庁 No.6201 非課税となる取引(土地・有価証券等。2026-10-25確認)
- 国税庁 No.6209 非課税と不課税の違い(課税売上割合の分母・分子。2026-10-25確認)
- 国税庁 No.6501 納税義務の免除(基準期間・承継の特例。2026-10-25確認)
よくある質問
- 事業譲渡の代金全額に消費税がかかりますか?
- かかりません。課税資産と非課税資産の対価を合理的に区分し、課税資産の分にだけ課税します(消費税法施行令45条3項、国税庁の質疑応答事例)。
- 事業に土地が含まれるとき、土地の分は消費税の計算でどうなりますか?
- 土地の譲渡は非課税なので、課税対象の対価には含めません。ただし課税売上割合の計算では、非課税取引として分母に入ります。
- 土地の譲渡で課税売上割合が大きく下がったときの救済はありますか?
- たまたま土地の譲渡があり、事業の実態に変動がないと認められる場合は、課税売上割合に準ずる割合の承認を受けられる取扱いがあります。承認申請書の提出と税務署長の承認が必要です。
- 事業を譲り受けると、売り手の納税義務も引き継ぎますか?
- 国税庁のタックスアンサーが承継の特例として挙げているのは、相続、合併、分割です。事業譲渡は、この3つには入っていません。個別の判定は税務署や税理士に確認してください。
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