法人成りで個人事業の機械を引き継ぐと設備投資の特別償却・税額控除は使えるか
中小企業投資促進税制と経営強化税制は、まだ事業に使われていない設備を取得することが条件です。個人事業で使っていた機械を法人が引き継ぐ場合の考え方を、条文の文言で整理します。
租税特別措置法42条の6・42条の12の4法人成りのとき、個人事業で使っていた機械を法人に移す方法は現物出資・売買・賃貸の3つです。ただし、中小企業の設備投資の特別償却や税額控除は、条文が「その製作の後事業の用に供されたことのないもの」を取得した場合に限っています。
個人事業の機械を移す3つの方法と税金は個人事業から法人への資産引継ぎで説明しています。この記事では、引き継いだ機械が設備投資の税制の対象になるかどうかに絞ります。
条文が求める「事業の用に供されたことのない」設備
租税特別措置法42条の6(中小企業投資促進税制)は、青色申告書を提出する中小企業者等が、特定機械装置等でその製作の後事業の用に供されたことのないものを取得し、または製作して、指定事業の用に供した場合を対象にしています。
42条の12の4(中小企業経営強化税制)も、特定経営力向上設備等で「その製作若しくは建設の後事業の用に供されたことのないもの」を取得するか、製作・建設して事業の用に供した場合を対象にしています。経営強化税制には、さらに経営力向上計画に設備が記載されている必要があります。
2つの制度の違いと計算は中小企業投資促進税制と経営強化税制の違いにまとめています。
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個人から法人に切り替える手続きと、設立後の税金・経理を一冊で確かめたいとき向けです。
個人事業で使っていた機械を引き継ぐ場合
個人事業で使っていた機械は、すでに事業の用に供された設備です。条文は「事業の用に供されたことのない」とだけ書き、誰の事業に使われたかを区別していません。そのため、現物出資・売買・賃貸のどの方法で引き継いでも、法人にとっては新品の取得に当たらないと読むのが自然です。
| 引き継ぎ方 | 法人側の扱い | 設備投資の特別償却・税額控除 |
|---|---|---|
| 現物出資 | 機械を出資として受け入れる | 使用済みの設備の取得のため、対象と考えにくい |
| 売買 | 個人から機械を買い取る | 使用済みの設備の取得のため、対象と考えにくい |
| 賃貸 | 個人から機械を借りる | 法人は取得していないため、対象にならない |
引き継ぎ方による所得税・消費税の違いは個人事業から法人への資産引継ぎに書いています。設備投資の税制で控除を受けられるかは、これらとは別に、法人が取得する設備が未使用かどうかで決まります。
個別の設備が対象になるかどうかは、設備の種類や取得の経緯で変わります。判断は税務署か税理士に確認してください。
法人が新しく買う設備の場合
法人が設立後に、メーカーや販売店から新品の機械を買って事業の用に供すれば、「事業の用に供されたことのない」設備を取得したことになります。個人事業の機械を引き継ぐ代わりに、新しい設備を法人で買う選び方です。
対象になるには、設備の種類や規模などほかの要件も満たす必要があります。条文は、適用を受ける法人が青色申告書を提出するものに限っています。法人の青色申告は承認が要るため、法人の青色申告承認申請書の提出期限も確認します。
設立事業年度でも使えるか
賃上げ促進税制(42条の12の5)の条文は、設立事業年度を適用から除いています。これに対して、42条の6の括弧書きが除いているのは、解散の日を含む事業年度と清算中の各事業年度で、設立事業年度は除かれていません。
設立した最初の事業年度に新品の設備を取得して事業の用に供した場合も、条文の文言のうえでは設立事業年度という理由で外れることはありません。賃上げ促進税制との違いは中小企業向け賃上げ促進税制の要件と計算で確認できます。
法人成りの前に確認する順番
- 引き継ぐ予定の機械が、すでに個人事業で使っているものか
- 税額控除や特別償却を受けたい設備を、法人名義で新しく買う計画にできるか
- その設備を事業の用に供する日が、法人の設立後の事業年度に入るか
- 法人の青色申告の承認を、期限内に受けられるか
- 経営強化税制を使うなら、経営力向上計画を設備の取得前に認定してもらえるか
経営力向上計画の流れは個人事業のときの経営力向上計画は法人成りでどうなるかで整理しています。
次に知りたいこと
公式一次情報
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(第42条の6第1項、第42条の12の4第1項、第42条の12の5第1項)
まとめ
中小企業投資促進税制と経営強化税制は、製作の後に事業の用に供されたことのない設備の取得が条件です。個人事業で使っていた機械は、現物出資・売買・賃貸のどれで引き継いでも、対象と考えにくいというのが条文の読み方です。
税額控除や特別償却を受けたい設備は、法人の設立後に新品で取得して事業の用に供する計画にします。実際の適用は、税務署か税理士に確認してください。

