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中小企業投資促進税制と経営強化税制の違い

会社が機械や設備を買った年に、法人税を軽くできる2つの制度を比べます。中小企業投資促進税制は特別償却30%または税額控除7%、経営強化税制は経営力向上計画の認定を受けたうえで即時償却または税額控除7%・10%です。国税庁のタックスアンサーにもとづいて、対象の設備・会社・手続きの違いを整理します。

法人税の特例
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

機械や器具を買うと、ふつうは耐用年数にわたって少しずつ経費にします。中小企業向けには、買った年に多めに経費にする「特別償却」や、法人税額そのものから差し引く「税額控除」を選べる特例があります。代表が、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の2つです。

2つの制度は、どちらも「新品の設備を買って事業に使った事業年度」に使えますが、経営強化税制だけは、先に経営力向上計画の認定を受けて、その計画に載せた設備が対象になります。この記事は、国税庁の令和8年4月1日現在の法令等の案内(タックスアンサー5433・5434)で、数字と条件を並べます。

少額の備品をまとめて経費にする話は「中小企業者の少額減価償却資産の特例」、減価償却の基本は「減価償却の基本」を参照してください。

2つの制度の比較表

どちらも、青色申告書を提出する中小企業者などが、令和9年3月31日までの期間に新品の設備を取得して指定事業の用に供した場合に、その事業年度で使えます。違いは次のとおりです。

項目中小企業投資促進税制中小企業経営強化税制
特別償却基準取得価額の30%取得価額から普通償却限度額を引いた額(即時償却)。建物は15%(特定建物等は25%)
税額控除基準取得価額の7%(資本金3,000万円以下の法人などに限る)7%(資本金3,000万円以下の法人などは10%)。建物は1%(特定建物等は2%)
認定の要否不要経営力向上計画の認定が必要(計画に記載した設備のみ)
繰越し税額控除の限度超過額を1年税額控除の限度超過額を1年
主な対象設備機械装置・測定工具・検査工具・ソフトウエア・貨物運送用の車両・内航船舶機械装置・工具器具備品・建物附属設備・ソフトウエア・建物(生産等設備を構成するもの)

表の「基準取得価額」は、投資促進税制では船舶は取得価額の75%、そのほかの資産は取得価額そのものです。

中小企業投資促進税制の対象設備と会社

投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者(基本は資本金1億円以下の法人)が、次の新品の設備を取得して指定事業の用に供したときに使えます。税額控除を選べるのは、このうち資本金が3,000万円を超えない法人などです。資本金が3,000万円を超える法人は、特別償却だけになります。

  • 機械および装置:1台または1基の取得価額が160万円以上
  • 測定工具および検査工具:1台または1基の取得価額が120万円以上。1台40万円以上(令和8年3月31日以前の取得は30万円以上)のものの事業年度の合計が120万円以上の場合も含みます
  • 特定のソフトウエア:一のソフトウエアの取得価額が70万円以上(事業年度の合計が70万円以上になる場合も含む)
  • 貨物運送用の車両:車両総重量3.5トン以上の一定の普通自動車
  • 内航海運業の船舶

指定事業は、製造業・建設業・卸売業・小売業・飲食店業・不動産業・医療・福祉など広く、娯楽業(映画業を除く)と性風俗関連特殊営業は対象外です。事務用の机や乗用車のように、機械装置などの区分に入らないものは、この制度の対象になりません。

経営強化税制の対象設備と認定の順番

経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定(特定認定)を受けた中小企業者などが、その経営力向上計画に記載した新品の設備を取得して使ったときに限り、即時償却または税額控除を選べます。対象になる設備の最低金額は、設備の区分ごとに決まっています。

  • 機械および装置:1台または1基の取得価額が160万円以上
  • 工具、器具および備品:1台または1基の取得価額が40万円以上(令和8年3月31日以前の取得または製作は30万円以上)
  • 建物附属設備:一の取得価額が60万円以上。建物およびその附属設備は、一の取得価額が1,000万円以上
  • 特定のソフトウエア:一の取得価額が70万円以上

対象は、収益を得るための活動に直接使う「生産等設備」を構成する資産で、本店や寄宿舎の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設は含まれません。コインランドリー業(主要事業でなく、管理を他に委託するもの)と暗号資産マイニング業の用に供するものも除かれます。

認定の手続きの順番は「個人事業のときの経営力向上計画は法人成りでどうなるか」で整理しています。計画に載っていない設備には使えないため、購入の前に計画を出す流れで考えてください。

計算例:機械を300万円で買ったとき

資本金1,000万円の会社が、新品の機械装置(取得価額300万円)を買って事業に使い、税額控除を選ぶ場合の例です。数字はすべて仮の例で、実際の控除額は設備の区分や他の制度の適用で変わります。

項目投資促進税制経営強化税制
税額控除限度額300万円 × 7% = 21万円300万円 × 10% = 30万円
特別償却限度額300万円 × 30% = 90万円300万円から普通償却限度額を引いた額

調整前法人税額が100万円の事業年度なら、税額控除の上限は100万円の20%で20万円です。経営強化税制を選んだ場合、限度額30万円のうち20万円を控除し、控除しきれなかった10万円を翌事業年度に繰り越します。

税額控除の上限は、投資促進税制と経営強化税制の税額控除の合計で、その事業年度の調整前法人税額の20%です。法人税が少ない会社は、税額控除より特別償却のほうが使い切りやすい場合があります。どちらが有利かは決算の見込みで変わるため、顧問税理士に確認してください。

申告の手続きと併用できないもの

どちらの制度も、確定申告書等に計算の明細書などを添付した場合に適用されます。特別償却は償却限度額の計算に関する明細書、税額控除は控除額を申告書に記載したうえで計算の明細書を添付します。経営強化税制は、さらに経営力向上計画の認定申請書の写しと認定書の写しが必要です。

  • 特別償却準備金:特別償却に代えて、限度額以下の金額を特別償却準備金として積み立てて損金にする方法も認められています
  • 重複適用の禁止:一の資産で特別償却と税額控除を重ねることはできません。圧縮記帳や他の制度の特別償却・税額控除との重複もできません
  • 他の税額控除との関係:賃上げ促進税制など、ほかの特別税額控除を同じ年に使う場合は、国税庁のタックスアンサー5450を参照してください
  • 適用できない事業年度:解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度と清算中の事業年度は使えません

賃上げ促進税制は「中小企業向け賃上げ促進税制の要件と計算」、青色申告の承認申請は「法人の青色申告の承認申請」を参照してください。

まとめ

  • 投資促進税制は認定なしで、特別償却30%または税額控除7%を選べる
  • 経営強化税制は、経営力向上計画の認定が前提で、即時償却または税額控除7%・10%を選べる
  • どちらも青色申告・新品・指定事業が条件で、令和9年3月31日までの期間が対象
  • 税額控除の上限は、2制度の合計で調整前法人税額の20%。投資促進税制の税額控除は資本金3,000万円以下の法人などが対象
  • 確定申告書への明細書の添付が必要で、一の資産に特別償却と税額控除は重ねられない

公式一次情報

よくある質問

中小企業投資促進税制と経営強化税制の一番の違いは何ですか?
経営力向上計画の認定が要るかどうかです。投資促進税制は認定なしで使え、特別償却は取得価額の30%、税額控除は7%です。経営強化税制は認定を受けた計画に載せた設備が対象で、即時償却または税額控除7%・10%を選べます。
資本金が5,000万円の会社は税額控除を使えますか?
投資促進税制では使えません。税額控除を選べるのは資本金等が3,000万円以下の法人などで、資本金が3,000万円を超える中小企業者は特別償却だけです。経営強化税制は、7%の税額控除を選べます。
経営強化税制の税額控除が10%になるのはどんな会社ですか?
資本金または出資金が3,000万円以下の法人、または農業協同組合等もしくは商店街振興組合です。それ以外の中小企業者は7%です。
中古の機械や乗用車は対象になりますか?
どちらの制度も新品が条件です。経営強化税制では、乗用自動車や事務用器具備品は生産等設備に当たらず対象外です。
税額控除しきれなかった分はどうなりますか?
税額控除の合計が調整前法人税額の20%を超えた分は、1年間繰り越せます。繰越しを受けるには、繰越税額控除限度超過額の明細書を確定申告書に添付します。
本記事について。税理士監修前の概説です。対象設備に当たるか、資本金や中小企業者の判定、認定の要否は個別の事情で変わります。購入前に、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。