法人成りで国民年金基金は脱退が必要か|手続きと納めた掛金の扱い
個人事業主時代に国民年金基金へ加入していた場合、法人成りして厚生年金保険に加入するとどうなるかを、国民年金基金連合会・全国国民年金基金の案内にもとづいて整理します。
国民年金基金連合会の制度国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者(自営業者・フリーランスなど)が老齢基礎年金に上乗せして加入できる年金制度です。法人成りして厚生年金保険に加入すると、この第1号被保険者の資格を失うため、国民年金基金の扱いがどうなるか気になるところです。
この記事では、資格を失う理由と届出の要否、すでに納めた掛金がどう扱われるかを、国民年金基金連合会と全国国民年金基金の案内にもとづいて整理します。国民年金基金には全国国民年金基金のほかに職能型の基金もあり、届出の細部は加入先によって異なるため、その点も明記します。
国民年金基金とはどんな制度か
国民年金基金は、自営業者などの国民年金第1号被保険者を対象に、老齢基礎年金に上乗せした年金を受け取るための公的な年金制度です。掛金は全額が社会保険料控除の対象になります。
国民年金基金には、都道府県ごとの地域型が2019年4月に統合された「全国国民年金基金」と、歯科医師・弁護士・司法書士など職種ごとに設けられた職能型の基金があります。以下で確認する届出書類は全国国民年金基金のものです。職能型の基金に加入している場合は、加入先の基金の案内を確認してください。
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厚生年金加入で加入員資格を喪失する
国民年金基金連合会の案内では、会社員になったときなど国民年金の第1号被保険者でなくなったとき(海外に転居したときを含む)は、国民年金基金の加入員資格を喪失し、脱退することになるとされています。
ここでいう「資格喪失」は、国民年金の第1号被保険者としての資格(これは厚生年金加入により自動的に外れます)とは別に、国民年金基金の加入員資格についての扱いです。国民年金そのものの扱いは国保・国民年金の脱退手続きで整理しています。基金側の資格喪失は、自動的に処理されるとは限らず、次の届出が必要です。
資格喪失の届出(全国国民年金基金の場合)
全国国民年金基金のFAQでは、国民年金の第1号被保険者でなくなった場合、「国民年金基金資格喪失届」を提出することになっています。届出には、資格を喪失したことが明らかにできる書類の添付が必要です。
法人成りの場合、法人で健康保険・厚生年金保険に加入した際に交付・通知されるこれらの書類のいずれかを使って、基金へ資格喪失届を提出する流れになります。提出先や書式は加入している基金(全国国民年金基金または各職能型基金)に確認してください。
納めた掛金はどうなるか
資格を喪失して脱退しても、それまでに納めた掛金が一時金として戻ってくるわけではありません。国民年金基金連合会の案内では、次のように説明されています。
また、全国国民年金基金のFAQでは、加入期間が15年未満の場合(60歳まで加入した場合を除く)は、加入していた基金に代わって国民年金基金連合会が年金の給付を行うとされています。掛金は掛け捨てにはならず、将来の年金として権利が残る仕組みです。
自分の都合での任意脱退はできるか
国民年金基金連合会の案内では、上記の資格喪失の事由以外に、自分の都合で任意に脱退したり、中途解約したりすることはできません。喪失事由には、60歳到達、国民年金の第1号被保険者でなくなったとき、保険料の免除を受けたとき、農業者年金への加入、本人の死亡などがあります。
従前の掛金で加入できる特例は法人成りに関係するか
「従前の掛金で加入できる特例」が案内されているのは、次の2つの場合だけです。
- 海外に転居して資格を喪失し、引き続き国民年金に任意加入して3か月以内に基金に加入するとき
- 職能型基金で、該当する事業・業務に従事しなくなって資格を喪失し、3か月以内に新しい基金に加入するとき
法人成りで厚生年金に加入して資格を喪失する場合は、この2つのどちらにも当たらないため、特例の対象としては案内されていません。再び基金に加入する場合の掛金や条件は、加入先の基金に確認してください(出典:国民年金基金連合会、全国国民年金基金。2026年10月5日確認)。
国民年金基金連合会への年金請求の流れ(中途脱退者)
国民年金基金連合会の「中途脱退事業」のページでは、対象を基金を60歳になる前に中途で脱退した方(15年以上基金に加入していた方を除く)としています。連合会は、基金から年金の現価相当額の移換を受け、加入員が受給年齢に達したときなどに、年金または遺族一時金を通算して支払います。
老齢年金の請求(裁定請求)は、連合会の公告(令和7年10月1日付)に次の取扱いが示されています。
- 裁定請求書には、加入員番号、氏名、性別、生年月日、住所、年金の受取方法、老齢基礎年金の繰り上げの有無、支給停止の有無を記入する。
- 添付書類は、生年月日に関する市区町村長の証明書または戸籍の抄本。連合会が住民基本台帳ネットワークの本人確認情報で生年月日を確認できる方は、住民票等の添付が不要。
- 請求書が連合会に届いてから年金証書を送るまでに、2か月の裁定事務を要する。
審査基準に合わない場合は、年金が支給されないことがあるとされています。この節は中途脱退者の年金請求の流れで、自分の都合による任意脱退ができるかどうかは前の節で説明した内容とは別の話です。請求の具体的な書式や受付窓口は連合会に問い合わせてください。
法人成りの場合に確認しておきたいこと
法人成りにともなう社会保険の切り替え(健康保険・厚生年金への加入、国民健康保険・国民年金の資格喪失)の全体像は法人成りの社会保険 全喪届・新規適用届を参照してください。国民年金基金は、この社会保険の切り替えとは別に、基金へ個別に資格喪失届を提出する必要がある点が実務上の注意点です。届出を忘れると、基金側で資格喪失の処理が行われず、案内や掛金の扱いが不明瞭になる可能性があります。
個人事業主のときに小規模企業共済にも加入している場合の扱いは、「法人成りで小規模企業共済はどうなるか」で確認できます。
国民年金基金とiDeCo・付加年金の違いなど、加入前の制度比較は個人事業主の年金を増やす方法|付加年金・国民年金基金・iDeCoで解説しています。
まとめ
- 国民年金基金は国民年金第1号被保険者向けの上乗せ年金制度。法人成りして厚生年金保険に加入すると、第1号被保険者でなくなるため加入員資格を喪失する。
- 全国国民年金基金の場合、資格喪失は自動処理ではなく「国民年金基金資格喪失届」の提出が必要(健康保険被保険者証等のコピー添付)。
- 脱退しても掛金は一時金として戻らないが、掛け捨てにはならず、将来、納付状況に応じて年金として支給される。加入期間15年未満(60歳まで加入した場合を除く)は国民年金基金連合会が給付を引き継ぐ。
- 国民年金基金には全国国民年金基金と職能型基金があり、届出の細部は加入先で異なるため、実際の手続きは加入している基金に確認する。
公式一次情報
- 国民年金基金連合会「手続きの流れを見る(重要なお知らせ)」(会社員になった場合の加入員資格の喪失、解約返戻金制度がないこと、将来の年金給付を掲載)
- 全国国民年金基金「加入中の届出」FAQ(国民年金基金資格喪失届の提出、添付書類、加入期間15年未満の場合の給付主体を掲載)
中途脱退者の扱いと老齢年金の裁定請求の取扱いは、国民年金基金連合会の「中途脱退事業」のページと年金給付に関する公告(令和7年10月1日付)で2026年10月9日に確認しました。
- 国民年金基金連合会「中途脱退事業」(60歳前の中途脱退者と15年以上加入者の除外、年金の通算支払い)
- 国民年金基金連合会「年金給付及び一時金給付に関する公告」(裁定請求書の記入事項、添付書類、標準処理期間2か月)
よくある質問
- 法人成りすると国民年金基金は自動的に脱退になりますか?
- 国民年金の第1号被保険者としての資格は厚生年金加入により失われますが、国民年金基金の加入員資格の喪失は自動処理ではありません。全国国民年金基金の場合、「国民年金基金資格喪失届」の提出が必要です。
- 資格喪失の届出にはどんな書類が必要ですか?
- 全国国民年金基金の場合、「健康保険被保険者証」「健康保険資格確認書」「資格情報のお知らせ(資格取得年月が明記されているもの)」「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書」のいずれか1点のコピーが必要です。
- 脱退すると納めた掛金は返ってきますか?
- 解約返戻金の制度はなく、一時金としては受け取れません。将来、納付した状況に応じて年金として支給されます。加入期間が15年未満(60歳まで加入した場合を除く)の場合は、国民年金基金連合会が給付を引き継ぎます。
- すべての国民年金基金で手続きは同じですか?
- 国民年金基金には地域型の全国国民年金基金と、歯科医師・弁護士・司法書士向けの職能型基金があります。本記事で確認した届出書類は全国国民年金基金のものです。職能型の基金に加入している場合は、加入先の基金に確認してください。


