事務所・店舗兼用の自宅を売るときの3,000万円特別控除|居住用部分に限る要件と申告
自宅の一部を事務所や店舗にしている個人事業主が自宅を売るとき、3,000万円の特別控除が使えるのは居住用の部分だけです。国税庁の案内と政令の条文で、対象になる部分、主な要件、申告に必要な書類を整理します。
国税庁・租税特別措置法にもとづくマイホームを売ったときは、売却益から最高3,000万円を控除できる特例があります。自宅の1階を店舗や事務所にしている場合も使えますが、控除の対象は居住の用に供している部分に限られます。
この記事は、事業と住まいを兼ねた自宅を売る個人事業主向けです。購入側の住宅ローン控除は事務所・店舗併用住宅の住宅ローン控除で説明しています。
3,000万円特別控除とは
国税庁は、マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があると案内しています。正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」で、根拠は租税特別措置法第35条です。
売った資産に譲渡所得がなければ、控除する額もありません。控除額は、3,000万円と、居住用財産の譲渡に係る部分の譲渡所得の金額のうち、少ない方です。
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兼用の自宅は居住用部分だけが対象
租税特別措置法施行令第23条第1項は、同施行令第20条の3第2項を準用しています。その条文は、売る家屋について「当該家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限る」と定めています。事務所や店舗として使っている部分は、3,000万円特別控除の対象になりません。
国税庁の質疑応答事例には、店舗併用住宅を売って保証債務を履行した場合に、所得計算の原則である按分で計算するという回答があります。この事例は、住宅用部分に租税特別措置法第35条を適用することを前提にした照会です。
- 居住用部分:3,000万円特別控除の対象になる
- 事業用部分:3,000万円特別控除の対象外で、別に譲渡所得を計算する
居住用と事業用の割合の出し方は、建物の使い方によって変わります。申告の前に、税務署または税理士に確認してください。
架空条件の当てはめ
次は、仕組みを確認するための架空の条件です。実際の割合や金額は、物件ごとに異なります。
| 項目 | 架空条件 |
|---|---|
| 建物 | 1階が店舗、2階が住居で、居住用と事業用が半分ずつ |
| 譲渡所得の金額(全体) | 4,000万円 |
全体を按分すると、居住用部分の譲渡所得は2,000万円、事業用部分は2,000万円です。居住用部分の2,000万円は3,000万円より少ないので、控除額は2,000万円になります。事業用部分の2,000万円は控除できません。
居住用部分の譲渡所得が3,000万円を超えるなら、控除額は上限の3,000万円です。居住用部分に対応する分が大きいほど、控除できる金額も大きくなります。
主な要件
国税庁が示す、特例を受けるための主な要件は次のとおりです。
- 売った資産が、現に住んでいる家屋か、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家屋であること
- 家屋とともに売った敷地や借地権であること
- 売った年の前年と前々年に、この特例などを受けていないこと
- 売った年、その前年、前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人に売ったものでないこと
- 2つ以上マイホームがあるときは、主として住まいに使っていた家屋だけが対象であること
特例を受けることだけが目的で入居した家屋や、別荘のように趣味、娯楽、保養が主な目的の家屋は対象外です。
申告に必要なこと
この特例を受けるには、一定の書類を添えて確定申告をする必要があります。確定申告書には「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」を添えて、所轄の税務署に提出します。
売却益が3,000万円以内に収まって税額がゼロになる場合も、この特例を使うには確定申告が必要です。申告をしないと特例は適用されません。
売却した年の前後で住宅ローン控除を使う場合は、控除が止まる期間があります。入居した年、その前年、前々年に、この特例を受けたときは、住宅ローン控除を受けられません。
入居した年の翌年から3年目までに別の資産を売って特例を受ける場合にも制限があります。詳しくは国税庁のページを確認してください。
次に知りたいこと
事務所・店舗併用住宅の住宅ローン控除:購入側の借入金の按分と、売却の特例との関係
自宅を経費にする家事按分:自宅の事業部分を経費にする考え方
個人事業主が事業用の車・機械を売ったときの税金:事業用の資産を売ったときの譲渡所得
まとめ
- マイホームを売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる。所有期間は問わない。
- 事務所や店舗を兼ねた自宅は、居住の用に供している部分だけが対象になる。
- 控除額は、3,000万円と居住用部分の譲渡所得の金額のうち、少ない方になる。
- 特例は確定申告で受ける。譲渡所得の内訳書を添えて、所轄の税務署に出す。
公式一次情報
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(最高3,000万円の控除、適用の要件、適用除外、申告に必要な書類、住宅ローン控除との関係。2026-10-26確認)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法施行令」第20条の3第2項・第23条第1項(居住の用以外の用に供している部分があるときは居住の用に供している部分に限ること。2026-10-26確認)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」第35条(居住用財産の譲渡所得の特別控除。控除額は3,000万円と該当部分の金額のうち低い方。2026-10-26確認)
- 国税庁 質疑応答事例「店舗併用住宅を譲渡して保証債務を履行した場合の譲渡所得の金額の計算」(保証債務履行の事例で、住宅用部分に第35条を適用する前提の照会と、按分による計算。2026-10-26確認)
よくある質問
- 1階を店舗にしている自宅を売るとき、3,000万円特別控除は使えますか?
- 居住の用に供している部分については使えます。店舗や事務所に使っている部分は対象になりません(租税特別措置法施行令第20条の3第2項、第23条第1項)。
- 控除額は必ず3,000万円ですか?
- いいえ。3,000万円と、居住用財産の譲渡に係る部分の譲渡所得の金額のうち、少ない方です。居住用部分の譲渡所得が3,000万円に満たなければ、その金額が控除額になります(租税特別措置法第35条)。
- この特例には所有期間の条件はありますか?
- 所有期間の長短は問われません(国税庁)。
- 売却益が3,000万円以内なら、申告しなくてよいですか?
- 特例を受けるには確定申告が必要です。譲渡所得の内訳書を添えて、所轄の税務署に提出します(国税庁)。
- 親族に売った場合も使えますか?
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人に売ったものは対象外です(国税庁)。

