会社の解散・廃業と労災保険の特別加入|脱退の承認と加入者でなくなる日
社長や一人親方が労災保険に特別加入しているとき、会社を解散したり事業をやめたりした後に、特別加入はどうなるのかを整理します。中小事業主等の脱退と、一人親方等の団体の脱退に分け、労災保険法34条と厚生労働省の「特別加入制度のしおり」で確認します。
労災保険の手続き労災保険の特別加入は、本来は労働者ではない社長や一人親方も、労災保険の給付を受けられるようにする制度です。会社を解散したり、個人事業を廃業したりしたあと、特別加入の手続きをどう閉じるのかは、解散や廃業の手続きの一覧にあまり出てきません。
この記事では、特別加入をやめるための「脱退」と、事業の廃止や団体の解散などで自動的に加入者でなくなる場合を分けて整理します。中小事業主等(会社の社長など)と一人親方等では手続きの窓口が違うため、どちらに当たるかを先に確かめてください。
特別加入の脱退の考え方
労災保険法34条1項は、中小事業主が、自分と、その事業に従事する家族従事者などを包括して労災保険の給付を受けられる者とすることを申請し、政府の承認があったときに、特別加入が成り立つと定めています。やめる場合も同じで、同条2項は、政府の承認を受けて、包括して保険給付を受けられる者としないこととすることができると定めています。
厚生労働省の「特別加入制度のしおり」は、特別加入者でなくなる場合を大きく3つに分けています。本人側の申請による脱退、事業の廃止や団体の解散などによって自動的に地位が消滅する場合、関係法令に違反したことによる承認の取消しです。解散・廃業で関係するのは、おもに最初の2つです。
中小事業主等の脱退と、加入者でなくなる日
中小事業主等(会社の社長などの事業主と、その事業に従事する家族従事者など)の特別加入は、労働保険事務組合に労働保険の事務を任せていることが前提になります。しおり(中小事業主等用)によると、脱退の手続きは次のとおりです。
- 脱退は労働局長の承認を受けて行います。
- 脱退の申請は、中小事業主と、その事業に従事する労働者以外の加入者全員をまとめて行います。一部の人だけを抜く形にはなりません。
- 労働保険事務組合を通じて、労働基準監督署長を経由し、労働局長に「特別加入脱退申請書(中小事業主等及び一人親方等)」を出します。
- 労働局長の承認は、脱退申請の日から30日以内で、申請者が脱退を希望する日になります。
一方、申請をしなくても、次のときは加入者としての地位が自動的になくなります(しおり中小事業主等用)。
| 場面 | 特別加入者でなくなる日 |
|---|---|
| 使用する労働者について成立している保険関係が消滅したとき | その消滅の日 |
| 事業を廃止または終了したとき | 廃止または終了の日の翌日 |
| 労働保険事務組合への事務処理の委託を解除したとき | その解除の日 |
しおりは、特別加入が「その使用する労働者について成立している保険関係を前提として認められるもの」だからだと説明しています。
一人親方等の脱退と、加入者でなくなる日
一人親方等は、特別加入団体を通じて加入します。しおり(一人親方その他の自営業者用)によると、脱退は個人ではなく団体が行います。
- 団体が労働局長の承認を受けて脱退します。申請は、その団体の構成員全員をまとめて行います。
- 団体は、監督署長を経由して労働局長に「特別加入脱退申請書(中小事業主等及び一人親方等)」を出します。
- 承認は、脱退申請の日から30日以内で、申請者が脱退を希望する日になります。
- 特定の人だけを抜く場合は、脱退ではなく変更届を出します。
自動的に地位がなくなる場面は次のとおりです(同しおり)。
| 場面 | 特別加入者でなくなる日 |
|---|---|
| 一人親方等が特別加入者としての要件を満たさなくなったとき | その日 |
| 特別加入団体の構成員でなくなったとき | その日 |
| 一人親方等の団体が解散したとき | 解散の日の翌日 |
解散・廃業で気をつけること
事業を廃止した日の翌日に地位がなくなる、という定めは、会社の解散の日と同じ日付を意味するとは限りません。株式会社は解散しても清算結了まで存続するとみなされ(会社法476条)、清算の間も事業を続けているか、すでに廃止したかで見方が変わり得ます。迷うときは、委託先の労働保険事務組合か労働基準監督署に確認してください。
会社の解散の手続き全体は法人の解散と清算の流れ、特別加入の仕組みは役員の労災保険と特別加入で確認できます。個人事業を廃業する一人親方は、廃業後に一人親方等としての要件を満たさなくなるかどうかを、加入している団体に確認してください。
脱退や地位の消滅のあとの保険料の精算や、労働保険の年度更新の扱いは、このしおりでは触れられていません。労働保険事務組合や労働局の案内を確認してください。
架空条件の当てはめ
次の表は説明用の架空条件です。実際の日付や可否は、労働局長の承認と、加入先の案内によります。
| 架空の状況 | 確認すること | 見方 |
|---|---|---|
| 社長1人の会社が、事務組合経由で特別加入している。年内に事業を終える | 事業の廃止の日 | 事業を廃止した日の翌日に地位が消滅する(しおり)。手続きは事務組合に確認する |
| 事業は続けるが、事務組合への委託をやめる | 委託解除の日 | 解除の日に地位が消滅する(しおり) |
| 一人親方が加入する団体が、3月末で解散する | 団体の解散日 | 解散の日の翌日に地位が消滅する。脱退の申請は団体が行う |
| 団体の構成員3人のうち1人だけがやめる | 脱退か変更届か | 特定の人のみの場合は変更届を出す(しおり) |
脱退を申請する場合の希望日は、申請の日から30日以内で選びます。
次に知りたいこと
まとめ
- 特別加入の脱退は、政府(労働局長)の承認を受けて行う(労災保険法34条2項、しおり)。
- 中小事業主等は、労働保険事務組合を通じて、加入者全員をまとめて脱退申請する。
- 承認は、申請の日から30日以内で、申請者が希望する日になる。
- 事業を廃止すると、その翌日に特別加入者でなくなる。事務組合への委託を解除した日にもなくなる。
- 一人親方等は、団体が脱退を申請する。団体が解散すると、その翌日に特別加入者でなくなる。
公式一次情報
- e-Gov法令検索 労働者災害補償保険法(34条の中小事業主等の特別加入の承認と、承認を受けてやめること。2026-11-05確認)
- e-Gov法令検索 会社法(476条の清算株式会社の能力。2026-11-05確認)
- 厚生労働省 特別加入制度のしおり(中小事業主等用)7 支給制限、8 特別加入者としての地位の消滅(脱退の手続きと地位の消滅の日。2026-11-05確認)
- 厚生労働省 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)8 支給制限、9 特別加入者としての地位の消滅(団体の脱退と地位の消滅の日。2026-11-05確認)
よくある質問
- 会社を解散したら、労災保険の特別加入は自動的になくなりますか?
- 事業を廃止または終了したときは、その翌日に特別加入者としての地位が消滅します。ただし、解散の日と事業を廃止した日は同じとは限りません。清算の間に事業を続けているかで見方が変わり得るため、事務組合か労働基準監督署に確認してください(出典:特別加入制度のしおり、会社法476条)。
- 特別加入をやめるには、どこに何を出しますか?
- 中小事業主等は、労働保険事務組合を通じて、監督署長を経由して労働局長に「特別加入脱退申請書(中小事業主等及び一人親方等)」を出し、承認を受けます。一人親方等は、加入している団体が同じ申請書を監督署長経由で出します(出典:特別加入制度のしおり)。
- 脱退の日は、いつにできますか?
- 労働局長の承認は、脱退申請の日から30日以内で、申請者が脱退を希望する日になります(出典:特別加入制度のしおり)。
- 一人親方の仲間のうち1人だけがやめるときも脱退申請ですか?
- 特定の人のみを脱退させる場合は、脱退申請ではなく変更届を出します。団体全体をやめる場合の脱退は、構成員全員をまとめて行います(出典:特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用))。

