個人事業主とマイクロ法人の二刀流とは|全部を法人化しない理由
個人事業を続けながら別の事業だけマイクロ法人にする「二刀流」の仕組みと、全部を法人化しない理由を整理します。
令和8年度・東京・公式一次ソース準拠マイクロ法人というと「個人事業主をやめて全部法人にする」選択を思い浮かべがちですが、実際には個人事業を続けながら、別の事業だけを小さな法人にするという組み合わせ方もあります。これを本サイトでは「二刀流」と呼びます。仕組みと、なぜ全部を法人化しないのかを整理します。
二刀流とは
二刀流とは、既存の個人事業をそのまま続けながら、別の事業だけをマイクロ法人として立ち上げる構造です。全部を法人に一本化する「完全法人成り」とは異なり、個人事業と法人の2つの収入源を同時に持ちます。
会社員が本業を続けながら副業を法人化するケースも、広い意味では同じ構造です。個人(または本業)の基盤を残したまま、法人という別の器を追加するイメージです。
なぜ全部を法人化しないのか
マイクロ法人で社会保険料を抑える仕組み自体は、マイクロ法人と社会保険の解説で詳しく扱っています。ここでの論点は一歩手前、「その効果があるなら、なぜ個人事業を全部畳んで法人一本にしないのか」です。理由はいくつかあります。
- 青色申告特別控除(最大65万円)を活かせる:個人事業側を残せば、この控除を使い続けられます。全部を法人にすると、この控除自体がなくなります。
- 既存事業の実績・屋号を維持できる:個人事業として積み上げてきた取引先・実績・屋号をそのまま使い続けられます。
- 法人の固定費を新規事業の分だけに抑えられる:法人住民税の均等割(最低7万円程度)や税理士費用などの固定費は、法人にした事業の規模にかかわらず発生します。全事業を法人化するより、新規事業だけを法人にする方が固定費負担は軽くなりがちです。
- 新規事業をリスク分離して試せる:新しく始める事業を法人という別の器で切り出すことで、既存の個人事業と会計・責任を分けて管理できます。
課税の仕組み:合算課税と社会保険の一本化
二刀流でとくに押さえておきたいのが、税金と社会保険で扱いが分かれる点です。
- 所得税・住民税:個人事業の所得と、法人から受け取る役員報酬(給与所得)は合算して総合課税されます。個人事業側の利益を減らして法人側に移しても、個人の税負担がゼロになるわけではありません。
- 社会保険:法人で被保険者資格を取得して健康保険・厚生年金へ加入する前提では、国民健康保険・国民年金から切り替わります。保険料は法人側の役員報酬を標準報酬月額の等級へ当てはめて計算します。
注意点
個人事業と法人を分ける際は、事業の実態が伴っていることが前提です。同一の事業をただ形だけ分割するような設計は、税務上・社会保険上の否認リスクが指摘されています(詳しい注意点はマイクロ法人と社会保険の解説のデメリット・注意点も参照してください)。
また、役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内に決める「定期同額給与」のルールに従う必要があります。決め方は役員報酬の決め方で解説しています。
まとめ
二刀流は、個人事業を続けながら別の事業だけをマイクロ法人にする組み合わせです。青色申告特別控除の温存・既存事業の実績維持・固定費の抑制・新規事業のリスク分離が、全部を法人化しない理由になります。
税金は個人事業所得と役員報酬を合算し、法人で社会保険資格を取得する前提では役員報酬の標準報酬月額で保険料を計算します。本人手取りと会社所有・出口課税前の資金を分けて確認してください。
公式一次情報
二刀流の手取りを試算する
個人事業に残す利益と法人に移す事業の利益を入れると、個人一本の本人手取りと、二刀流の本人手取り+会社所有・出口課税前の内部留保を分けて計算します。