株式会社の役員任期・重任登記を放置するとどうなるか|過料とみなし解散
会社法が定める取締役の任期と、任期満了時に必要な重任登記、放置した場合の過料・みなし解散のリスクを整理します。
法人化(法人成り)株式会社の取締役には会社法上の任期があり、任期満了後も同じ人が続けて務める場合でも「重任登記」という変更登記が必要です。合同会社と違って株式会社には任期の定めがあるため、法人化で株式会社を選ぶと、この登記を忘れないよう管理する仕組みが必要になります。
本記事では、任期の長さ、重任登記の期限、放置した場合の過料、さらに長期間登記をしないと生じる「みなし解散」のリスクまで、会社法の条文と法務省の公式情報で整理します。
取締役の任期は原則2年、非公開会社は定款で最長10年まで伸長可
会社法332条1項は、取締役の任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定めています。
ただし同条2項により、非公開会社(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く、株式の譲渡制限がある会社)は、定款によって任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。中小企業の多くはこの非公開会社にあたり、定款で任期を10年に伸ばしているケースが実務上多く見られます。
合同会社(持分会社)には会社法上の役員任期の定めがなく、この論点自体が生じません。会社形態ごとの違いは合同会社と株式会社の違いで比較しています。
任期満了で同じ人が続ける場合も「重任登記」が必要
取締役の任期が満了し、株主総会で同じ人物が再び選任された場合、実務上は「重任」と呼びます。重任であっても取締役の就任という登記事項に変更が生じるため、法務局への変更登記(重任登記)が必要です。任期を10年に伸ばしていれば、この手続きの頻度自体は下がりますが、なくなるわけではありません。
会社法915条1項は、株式会社の登記事項に変更が生じたときは、その変更が生じた時から2週間以内に変更登記を申請しなければならないと定めています。重任登記もこの原則どおり、任期満了・再選任から2週間以内が期限です。
変更登記を怠ると100万円以下の過料
会社法976条1号は、915条などの規定による登記を怠ったときを100万円以下の過料に処すべき行為として挙げています。過料は刑事罰ではなく行政上の秩序罰で、会社ではなく代表取締役など登記申請義務者である役員個人に科されます。
任期を定款で10年に伸ばしていても、伸ばし忘れたまま設立時の定款(任期2年)を使い続けている会社では、2年ごとに重任登記が必要なことに気づかず期限を過ぎてしまう例があります。設立時に決める事項の全体像は法人化の手続きで解説しています。
12年間登記がないと「休眠会社」としてみなし解散の対象に
重任登記などを長期間怠り、登記の変更が一切ないまま時間が経つと、より重い帰結が生じます。会社法472条1項は、最後の登記から12年を経過した株式会社(休眠会社)について、法務大臣が2ヶ月以内に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告し、その期間内に届出も登記もされないときは、期間満了の時に解散したものとみなすと定めています。
法務省はこの制度にもとづく整理作業を毎年実施しており、令和7年度は10月10日に官報公告を行い、届出・登記の期限を12月10日、期限までに対応がなければ12月11日付で解散したものとみなす扱いとしています。取締役の任期が最長10年であることを踏まえると、任期どおりに重任登記をしていれば12年を超えて登記がない状態にはならない設計になっています。
- みなし解散後3年以内であれば、株主総会の特別決議により会社を継続させる手続きができる。
- 3年を過ぎると清算手続きに移行し、通常の解散と同様の扱いになる。
- 公告は法務局の掲示・官報で行われるため、本店所在地の変更を届け出ていないと通知が届かないことがある。
まとめ
- 株式会社の取締役の任期は原則2年(会社法332条1項)。非公開会社は定款で最長10年まで伸長できる(同条2項)。
- 任期満了で同じ人が再選任される「重任」でも変更登記が必要で、期限は変更が生じてから2週間以内(会社法915条1項)。
- 登記を怠ると、会社法976条1号により役員個人に100万円以下の過料が科される可能性がある。
- 最後の登記から12年を経過すると休眠会社として扱われ、法務大臣の官報公告後2ヶ月以内に届出・登記がなければみなし解散となる(会社法472条1項)。
- みなし解散から3年以内なら会社を継続させる手続きができる。
合同会社にはこの役員任期・重任登記の論点がありません。会社形態の比較は合同会社と株式会社の違い、設立後の手続き全体は法人化の手続きで確認できます。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法第332条(取締役の任期)」(原則2年、非公開会社は定款で最長10年まで伸長可)
- e-Gov法令検索「会社法第915条(変更の登記)」(登記事項の変更から2週間以内に変更登記を申請)
- e-Gov法令検索「会社法第976条(過料に処すべき行為)」(登記懈怠は100万円以下の過料)
- e-Gov法令検索「会社法第472条(休眠会社のみなし解散)」(最後の登記から12年経過、官報公告後2ヶ月以内に届出等がなければ解散とみなす)
- 法務省「令和7年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」(令和7年度の公告日10月10日・届出期限12月10日・みなし解散日12月11日の実施例)
よくある質問
- 任期満了で同じ役員がそのまま続ける場合も登記は必要ですか?
- 必要です。同じ人物が再選任される「重任」であっても取締役の就任という登記事項に変更が生じるため、変更が生じてから2週間以内に重任登記を申請する必要があります(出典:e-Gov法令検索・会社法915条1項)。
- 取締役の任期は必ず2年ですか?
- 原則は2年ですが、非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)は定款によって最長10年まで伸長できます(出典:e-Gov法令検索・会社法332条2項)。
- 重任登記を忘れるとどうなりますか?
- 会社法976条1号により、登記申請義務者である役員個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。さらに12年間登記が一切ないと、休眠会社としてみなし解散の対象になります(出典:e-Gov法令検索・会社法976条・472条)。
- みなし解散になったら会社は終わりですか?
- みなし解散から3年以内であれば、株主総会の特別決議により会社を継続させる手続きができます(出典:法務省「令和7年度の休眠会社等の整理作業について」)。