代表取締役が亡くなったときの会社の手続き|登記と社会保険の期限
株式会社の代表取締役が亡くなったとき、会社が行う退任の登記、代表者が欠けた場合の対応、社会保険の資格喪失届、合同会社の代表社員の扱いを、条文と法務局・日本年金機構の案内で整理します。
法人の運営結論:株式会社の役員は死亡で退任し、会社は退任の登記を2週間以内に、社会保険の資格喪失届を5日以内に出します。取締役が亡くなったとき、会社と役員の関係は委任の規定に従うため、委任は受任者の死亡で終わります(会社法330条、民法653条)。
代表取締役が亡くなると、会社を代表する人がいなくなる場合があります。そのときの裁判所による選任、登記の添付書類、社会保険の資格喪失の日付を、手続きの順にまとめます。
合同会社の代表社員が亡くなった場合は、株式会社と仕組みが異なります。定款の定めで結論が変わるため、最後の節で分けて説明します。
役員は死亡で退任する(根拠条文)
会社法330条は、株式会社と役員の関係は委任に関する規定に従うと定めています。民法653条1号は、委任者または受任者の死亡を委任の終了事由としています。役員が亡くなると、その時点で役員の地位は終わります。
会社法349条1項は、取締役は株式会社を代表するとしつつ、他に代表取締役その他会社を代表する者を定めたときはこの限りでないと定めています。代表取締役が亡くなった場合、他の代表取締役がいれば、その人が引き続き代表します。
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代表取締役が欠けたとき:一時代表取締役
会社法351条1項は、代表取締役が欠けたとき、任期の満了または辞任により退任した代表取締役が、後任が就任するまで権利義務を持つと定めています。この「権利義務の継続」は、任期満了と辞任の場合だけです。死亡は含まれません。
同条2項は、必要があるとき、裁判所が利害関係人の申立てにより一時代表取締役の職務を行うべき者を選任できるとしています。取締役が欠けた場合の一時取締役の選任は、会社法346条2項に同じ形の定めがあります。
退任の登記:期限と添付書類
会社法915条1項は、登記事項に変更が生じたとき、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をするよう定めています。法務局の案内も、役員変更は登記の事由が発生したときから2週間以内としています。
法務局の株式会社変更登記申請書の記載例(取締役の変更)では、役員の死亡による退任と、後任の就任の登記を合わせて1件で申請できるとしています。
| 項目 | 法務局の記載例の内容 |
|---|---|
| 期限 | 登記の事由が発生したときから2週間以内 |
| 死亡を示す書類 | 死亡届(記載例は親族が会社へ出す届出書の書式)または法定相続情報一覧図の写し |
| 後任の就任を同時に申請する場合 | 1件の申請にまとめられる(死亡と就任) |
後任の選任に関する議事録、就任承諾書、印鑑証明書などの添付書類は、会社の機関設計によって変わります。申請する法務局の記載例で確認してください。
社会保険の資格喪失届:5日以内
法人の代表者も、報酬を受けて厚生年金・健康保険に入っていれば被保険者です。日本年金機構の案内では、従業員が死亡したとき、事業主が「被保険者資格喪失届」を提出します。
提出時期は事実発生から5日以内で、資格喪失年月日は死亡日の翌日です。資格喪失年月日は、被保険者でなくなる日を指します。
代表者1人だけの会社など、全員が被保険者でなくなる場合の事業所の扱いは、会社の状況によって変わります。事業が続く場合を含め、管轄の年金事務所へ確認してください。
合同会社の代表社員が亡くなったとき
合同会社は、役員ではなく社員が会社を運営します。会社法607条1項3号は、社員が死亡によって退社すると定めています。
会社法608条は、社員が死亡した場合に、相続人が持分を承継する旨を定款で定めることができるとしています。定款にこの定めがあれば相続人が持分を承継でき、無ければ、社員の死亡は退社として扱われます。定款の記載を確認することが、最初の一手です。
608条の定款の定めがある場合、相続人が複数いるときは、権利を行使する人を1人定めます。ただし、会社が同意すれば定めなくても権利を行使できます(同条5項)。
社員が1人だけの合同会社では、その社員が亡くなって社員が欠けると、解散の事由になります(会社法641条4号)。定款に相続人の承継の定めがあるかどうかが、会社が続くかを左右します。
手続きの順番と確認項目
- 定款と登記事項証明書で、他に代表取締役・取締役がいるかを確認する。
- 死亡日の翌日を資格喪失日として、5日以内に社会保険の資格喪失届を出す。
- 後任の選任を行い、死亡による退任と就任の登記を、2週間以内に法務局へ申請する。
- 代表者が欠けて会社が動けないときは、一時代表取締役の選任の申立てを検討する(司法書士・弁護士へ相談)。
まとめ
- 株式会社の役員は死亡で退任する。委任は受任者の死亡で終わる(会社法330条、民法653条)。
- 権利義務の継続は任期満了と辞任だけで、死亡は対象外。代表取締役が欠けたときは裁判所が一時代表取締役を選任できる。
- 退任の登記は2週間以内。死亡を示す書類は死亡届または法定相続情報一覧図の写し(法務局の記載例)。
- 社会保険の資格喪失届は5日以内で、喪失日は死亡日の翌日。
- 合同会社の社員は死亡で退社し、相続人の持分承継は定款の定めがある場合に限られる。
次に知りたいこと
公式一次情報
- 会社法(e-Gov法令検索)(330条、346条、349条、351条、607条、608条、915条。2026-10-24確認)
- 民法(e-Gov法令検索)(653条の委任の終了事由。2026-10-24確認)
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」(役員変更の登記期間。2026-10-24確認)
- 法務局 株式会社変更登記申請書の記載例(取締役の変更)(死亡と就任を1件で申請できること、死亡を示す書類。2026-10-24確認)
- 日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき」(資格喪失届の提出時期5日以内、死亡日の翌日。2026-10-24確認)
よくある質問
- 代表取締役が亡くなったら、役員の地位は自動で終わりますか?
- 終わります。会社法330条により会社と役員の関係は委任の規定に従い、民法653条1号は受任者の死亡を委任の終了事由としています。登記の手続きは別に必要です。
- 退任の登記はいつまでに申請しますか?
- 登記の事由が発生したときから2週間以内に、本店の所在地の法務局へ申請します(会社法915条1項)。
- 死亡を示す書類は何を付けますか?
- 法務局の株式会社変更登記申請書の記載例では、死亡の場合に、死亡届または法定相続情報一覧図の写しとされています。会社の状況で追加の書類が要る場合があります。
- 社会保険の資格喪失届は誰がいつ出しますか?
- 事業主が、事実発生から5日以内に日本年金機構へ提出します。資格喪失年月日は死亡日の翌日です。
- 合同会社の代表社員が亡くなったら、相続人が会社を継げますか?
- 社員は死亡で退社します(会社法607条1項3号)。相続人が持分を承継できるのは、定款でその旨を定めている場合です(会社法608条1項)。

