不動産管理会社方式(管理委託・サブリース)と建物の法人移転の違い|仕組みと同族会社の否認規定
賃貸不動産を持つ個人が、自分の会社を使う方法は大きく3つあります。建物は個人のまま管理だけ会社に任せる「管理委託」、会社が借り上げて転貸する「サブリース」、建物そのものを会社へ移す「建物の法人移転」です。仕組みの違いと、同族会社への支払いで注意する規定を、法令の条文で確認できる範囲でまとめました。
e-Gov法令検索(賃貸住宅管理業法・法人税法・所得税法)にもとづく3つの方式で最も違うのは、建物の所有者と、入居者に対する賃貸人がだれかという点です。管理委託は個人が賃貸人のまま、サブリースは会社が転貸人になり、建物の移転は会社が所有者かつ賃貸人になります。
このページは、仕組みの違いを整理するものです。管理料や賃料の金額の目安は載せていません。
法令に料率の定めを確認できなかったためです。建物の移転にかかる税は「賃貸不動産の法人化」で試算できます。
比較表:3つの方式の違い
| 項目 | 管理委託 | サブリース | 建物の法人移転 |
|---|---|---|---|
| 建物の所有者 | 個人のまま | 個人のまま | 会社 |
| 入居者に対する賃貸人 | 個人 | 会社(個人から借りて転貸) | 会社 |
| 個人と会社の間の契約 | 管理を委託する契約 | 建物を借り上げる賃貸借契約 | 建物の売買や贈与などの所有権移転 |
| 法律上の位置づけ | 賃貸人から委託を受けて維持保全などを行う事業は「賃貸住宅管理業」(賃貸住宅管理業法第2条第2項) | 転貸を目的とする賃貸借は「特定賃貸借契約」、借りる側は「特定転貸事業者」(同条第4項・第5項) | この法律の対象外。移転にかかる税は別の論点 |
| 詳しい解説 | このページ | このページ | 賃貸不動産の法人化 |
管理委託:賃貸人は個人のまま
賃貸住宅管理業法は、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、維持保全(点検・清掃・必要な修繕)と、家賃・敷金などの金銭の管理を行う事業を「賃貸住宅管理業」と定めています(第2条第2項)。管理委託では、建物も賃貸人の立場も個人に残り、会社は委託された業務の対価を受け取ります。
個人側は、管理料を不動産所得の必要経費として扱えるかが論点になります。必要経費の範囲は所得税法第37条が定めています。会社側は、受け取る管理料が会社の益金になります(法人税法第22条第2項)。
サブリース:会社が借りて転貸する
転貸を目的に借りる賃貸借は、賃貸住宅管理業法で「特定賃貸借契約」にあたります。借りて転貸する側は「特定転貸事業者」です(第2条第4項・第5項)。特定転貸事業者には、契約前に内容を書面で説明する義務(第30条)と、重要な事実を告げない勧誘などの禁止(第29条)が課されています。
注意したいのは、第2条第4項のかっこ書きです。賃借人が賃貸人と人的関係・資本関係などで密接な関係にある者として国土交通省令で定める者のときは、特定賃貸借契約から除かれます。自分が経営する会社を借り上げ先にする場合に、この除外に当たるかどうかは、省令の定めで確認してください。
同族会社への支払いと否認規定
管理料や賃料を自分の会社に払う形では、金額の決め方が問題になります。法人税法第132条は、税務署長が同族会社の行為または計算で、そのまま認めると法人税の負担を不当に減少させる結果になると認められるものは、行為または計算にかかわらず、認めるところにより課税標準などを計算できるとしています。
個人側にも同じ趣旨の定めがあります。所得税法第157条は、同族会社の行為または計算で、株主などである居住者の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められるものがあるときの否認を定めています。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(第2条の定義、第29条・第30条)
- e-Gov法令検索「法人税法」(第22条・第132条)
- e-Gov法令検索「所得税法」(第37条・第157条)
確認日は2026年10月12日です。
よくある質問
- 管理委託とサブリースの一番の違いは何ですか?
- 入居者に対する賃貸人がだれかです。管理委託では個人が賃貸人のままで、サブリースでは個人から借りた会社が転貸人になります。
- サブリースの契約には、法律上どんな決まりがありますか?
- 転貸を目的とする賃貸借は特定賃貸借契約にあたり、借りる側の特定転貸事業者は契約前に書面で説明する義務があります(賃貸住宅管理業法第30条)。ただし、賃貸人と密接な関係にある者として省令で定める者が借りる場合は、この契約から除かれます(第2条第4項)。
- 自分の会社に払う管理料は、いくらまで認められますか?
- 条文に金額の基準はありません。法人税法第132条・所得税法第157条は、税の負担を不当に減少させる結果になるかどうかを問います。金額の妥当性は契約と実態で判断されるため、税理士に確認してください。
- 建物の所有を会社へ移す場合は、このページの内容と何が違いますか?
- 管理委託とサブリースは建物が個人のままですが、移転では所有者が会社になります。移転にかかる税は「賃貸不動産の法人化」で説明しています。