法人税の経費の計上時期|債務確定の3要件と未払金
法人税では、請求書が届いていなくても、事業年度の終了日までに債務が確定していれば経費(損金)にできます。経費にできる3つの条件(通達2-2-12)と、例外として認められる損害賠償金・短期の前払費用を整理します。
法人税の基本決算日までに修繕が終わったのに、請求書が決算後に届いた。この費用を今期の経費にできるのか、来期に回るのかは、法人税の決まりで判断します。
この記事では、国税庁のタックスアンサーNo.5387と法人税基本通達2-2-12から2-2-14をもとに、費用の損金算入の時期を整理します。売上側の時期は法人税の売上計上時期で扱っています。
償却費以外の費用は債務確定が条件
法人税法22条3項2号は、販売費・一般管理費その他の費用について、償却費以外の費用は、事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除くと定めています。
支払ったかどうかではなく、債務が確定しているかが基準です。そのため、決算日までに代金を払っていなくても、確定していれば未払金として損金にできます。減価償却費は別の扱いで、この債務確定の要件の対象外です。
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債務確定の3要件(通達2-2-12)
国税庁の通達2-2-12は、債務が確定しているとは、別に定めるものを除き、次の3つの要件すべてに該当することとしています。
| 要件 | 事業年度終了の日までに必要なこと |
|---|---|
| 1 債務の成立 | その費用に係る債務が成立していること |
| 2 給付の原因となる事実 | その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること |
| 3 金額の算定 | 金額を合理的に算定することができること |
タックスアンサーNo.5387は修繕費を例に、建物などの修繕を発注し、業者によって修繕が完了し、金額の見積りが客観的にできる状況なら、3要件を満たして未払金などとして計上できるとしています。
契約を結んだだけで修繕が始まっていない場合は、要件2の給付の原因となる事実が発生していないため、この考え方では今期の損金に入れることができません。
損害賠償金と短期の前払費用の特例
通達には、債務確定の原則に対する次の取扱いがあります。
| 通達 | 内容 |
|---|---|
| 2-2-13 損害賠償金 | 業務に関連して他の者に与えた損害の賠償で、決算日までに賠償額が確定していなくても、同日までに相手方に申し出た金額(保険金などで補塡されることが明らかな部分を除く)を未払金に計上したときは認められる |
| 2-2-14 短期の前払費用 | 支払った日から1年以内に提供を受ける役務の前払費用を、継続して支払った日の属する事業年度の損金にしているときは認められる |
短期の前払費用は、本来は決算日にまだ提供を受けていない役務の分を損金にできないところの例外です。詳しい要件は短期前払費用の特例で解説しています。
架空条件の当てはめ
次の表は説明用の架空条件です。3月決算の法人が、事務所の修繕を業者に頼んだ場合を想定します。
| 架空の状況 | 3要件の見方 | 見方 |
|---|---|---|
| 3月20日に修繕が完了。請求書は4月に届いたが、金額は見積書どおり | 債務は成立し、給付の原因となる事実が発生し、金額も算定できる | 今期の未払金として計上できる |
| 3月25日に修繕を発注。工事は4月に始まる | 給付の原因となる事実が決算日までに発生していない | 今期の損金にはできない |
実際には契約内容や工事の進み方で結論が変わります。決算の直前に金額が動いた費用は、完了日がわかる書類をそろえたうえで、顧問税理士や税務署に確認してください。
次に知りたいこと
法人税の売上計上時期(出荷日・検収日の決め方)
短期前払費用の特例(1年以内の家賃・保険料などの扱い)
法人の決算整理仕訳の一覧(未払費用・前払費用の仕訳)
まとめ
- 償却費以外の費用は、事業年度終了の日までに債務が確定したものが損金になる(法人税法22条3項2号)。
- 債務確定は、債務の成立・給付の原因となる事実の発生・金額の合理的な算定の3つがすべてそろうこと(通達2-2-12)。
- 損害賠償金は、決算日までに申し出た金額を未払金にしたときは認められる(通達2-2-13)。
- 1年以内の前払費用は、継続を条件に支払った日の事業年度の損金にできる(通達2-2-14)。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」(3要件と修繕費の例。2026-10-24確認)
- 国税庁 法人税基本通達「第2款 販売費及び一般管理費等」(2-2-12 債務の確定の判定、2-2-13 損害賠償金、2-2-14 短期の前払費用。2026-10-24確認)
- e-Gov法令検索 法人税法(22条3項:損金の額に算入すべき金額。2026-10-24確認)
よくある質問
- 請求書が決算後に届いた費用は、今期の経費にできませんか?
- 請求書の到着日では決まりません。事業年度終了の日までに債務の成立、給付の原因となる事実の発生、金額の合理的な算定の3つがそろっていれば、未払金として計上できます(通達2-2-12)。
- 減価償却費にも債務確定の3要件は必要ですか?
- 必要ありません。法人税法22条3項2号の括弧書きで、債務確定の要件から除かれるのは償却費以外の費用です。
- 損害賠償額が決算日までに決まらないときはどうなりますか?
- 決算日までに相手方に申し出た金額を未払金に計上したときは認められます。保険金などで補塡されることが明らかな部分は除きます(通達2-2-13)。
- 決算日の直前に発注しただけの工事は、今期の経費になりますか?
- 工事が始まっておらず、給付の原因となる事実が決算日までに発生していなければ、3要件を満たさず、今期の損金にはできません(通達2-2-12)。

