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法人成り前の個人の滞納は法人が払う?第二次納税義務の要件

個人事業の国税を滞納したまま法人成りして事業を法人へ引き継ぐと、法人が滞納分を負担することがあるのか。国税徴収法38条の第二次納税義務の成立要件、負担の上限、除外される場合、納付通知書の流れを、条文と国税庁の通達で整理します。

法人成りの注意点
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

個人事業の国税を滞納している人が、親族や自分が支配する会社に事業を譲り、その会社が同じような事業を続けている場合、滞納処分をしても足りないときは、会社が「第二次納税義務」を負うことがあります。根拠は国税徴収法38条です。会社が払う上限は、譲り受けた財産の価額です。

法人は個人とは別の納税義務者なので、法人成りしただけで滞納が自動的に法人へ移るわけではありません。ただし、事業を譲った相手が特殊な関係にあると、38条により法人が責任を負う場合があります。

第二次納税義務とは

第二次納税義務は、本来の納税者が国税を払えないとき、一定の関係にある別の人に、納税者に代わって払う義務を負わせる制度です。国税徴収法32条1項により、税務署長は第二次納税義務者に、徴収する金額と納付の期限を書いた納付通知書で告知します。

38条は、そのうち事業を譲り受けた特殊関係者に関する規定です。滞納を避けるために事業を身内や自分の会社に移す、という動きを防ぐ趣旨で置かれています。

38条が成立する4つの条件

条文の要件を分けると、次の4つがすべてそろったときに成立します。

条件内容(国税徴収法38条)
1. 特殊関係者への事業譲渡滞納している納税者が、生計を一にする親族などの個人、または被支配会社に事業を譲渡した
2. 同一または類似の事業譲り受けた側が、同一または類似の事業を営んでいる
3. 事業に係る国税の滞納納税者がその事業に係る国税を滞納している
4. 徴収不足滞納処分をしてもなお、徴収すべき額に不足すると認められる

国税庁の通達は、「事業の譲渡」を、一定の事業目的のため組織化され有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡することとしています(徴収法基本通達38条関係9)。事業用の財産だけを渡した場合などは、この意味の事業譲渡に当たらない場合があります。

「類似の事業」は、譲り受けた事業について、重要な事業活動の施設や態様の変更を加えずに事業活動が行われている場合の、譲受け後の事業をいいます(同11)。同一または類似かどうかは、納付通知書を発する時の現況で判定されます(同12)。

特殊関係者とは誰か

38条の「特殊な関係のある個人または被支配会社」は、政令(国税徴収法施行令13条1項)で定められています。通達では、次のように説明しています。

  • 親族は、六親等内の血族と三親等内の姻族(同3)
  • 「生計を一にする」親族は、37条関係6と同じ考え方(同4)
  • 被支配会社は、納税者を判定の基礎となる株主または社員として選んだ場合に、法人税法67条2項の特定同族会社に当たる会社とその類似の法人(法38条本文)

該当するかどうかは、納税者が事業を譲渡した時の現況で判定されます(同1)。譲渡のあとで離婚や株式の譲渡があっても、判定は変わりません。

本人や親族が株主として支配している法人は、被支配会社に当たることがあります。法人成りで本人が出資して会社をつくり、個人事業をそのまま引き継ぐ形は、条件1と2に近い形になります。当たるかどうかは株主構成で決まるため、個別の判断が必要です。

負担しなくてよい場合と上限

38条には、2つの限定があります。

  • 譲渡が、滞納に係る国税の法定納期限より1年以上前にされている場合は、適用されません(38条ただし書き)。通達は、法定納期限の1年前の応当日以前に譲渡した場合は適用がないと説明しています(同15)
  • 会社が負う金額は、譲受財産の価額の限度です。譲受財産は、譲り受けた事業に属する積極財産で、事業の譲受け後に取得した財産は含まれません(同16)。価額は、事業譲渡を受けた時点の積極財産の価額で見ます(同17)

財産分与として行われた事業譲渡で、社会通念上相当と認められる場合は、38条を適用しないとされています(同9(5))。

納付通知書が届いたあとの流れ

第二次納税義務者に対する手続きは、国税徴収法32条に定められています。

  • 税務署長は納付通知書で、徴収する金額と納付の期限などを告知する(1項)
  • 期限までに完納しないときは、納付催告書で督促する。納付催告書は、納付の期限から50日以内に発する(2項)
  • 第二次納税義務者の財産の換価は、財産の価額が著しく減少するおそれがあるときを除き、本来の納税者の財産を換価したあとでなければ行えない(4項)
  • 第二次納税義務者から本来の納税者への求償権の行使は妨げられない(5項)

納期限を過ぎたあとの差押えまでの流れは国税を滞納すると差押えはいつから、払えない場合の猶予は納税の猶予・換価の猶予で整理しています。32条3項は、納付通知書による第二次納税義務についても、国税通則法の納税の猶予の規定を準用すると定めています。

法人成りの前にできること

  • 個人事業の国税に滞納がないか、納税証明書で確認する。納税証明書の種類は納税証明書その1〜4の使い分けを参照する
  • 滞納があれば、事業の引き継ぎの前に、税務署(徴収担当)へ納付の相談をする。猶予の要件に当てはまれば申請できる
  • 事業の引き継ぎの形(譲渡か、財産だけの移転か)と譲渡の時期が、38条の条件に当たるかを、税理士に確認する

法人成りの全体の手続きは法人成りの手続き全体のガイドにあります。

次に知りたいこと

公式一次情報

よくある質問

法人成りすると、個人事業の滞納した税金は法人に引き継がれますか?
自動的には引き継がれません。ただし、滞納している本人が、被支配会社などの特殊関係者に事業を譲渡し、その会社が同一または類似の事業を営んでいて、滞納処分をしても不足するときは、国税徴収法38条により会社が第二次納税義務を負います。
会社が負担する金額に上限はありますか?
あります。譲り受けた財産の価額の限度です。譲受財産は、譲り受けた事業に属する積極財産で、事業の譲受け後に取得した財産は含まれません。
1年以上前に事業を譲っていれば、第二次納税義務は生じませんか?
譲渡が滞納に係る国税の法定納期限より1年以上前にされている場合は、38条は適用されません。通達では、法定納期限の1年前の応当日以前に譲渡した場合と説明されています。
第二次納税義務の通知は、どのように届きますか?
税務署長が、徴収する金額と納付の期限などを書いた納付通知書で告知します。期限までに完納しないと、納付催告書で督促されます。
配偶者や親が経営する会社に事業を移した場合も対象ですか?
生計を一にする親族などの特殊関係者に事業を譲渡した場合は、38条の対象になり得ます。通達では、親族は六親等内の血族と三親等内の姻族とされています。
本記事について。税理士監修前の概説です。2026年10月25日時点の国税徴収法と国税庁の通達にもとづく一般的な案内で、個別の税務判断に代わるものではありません。実際の判断は、所轄の税務署(徴収担当)または税理士へご確認ください。