法人契約の養老保険の保険料|受取人別の経理処理
法人が契約者となる養老保険は、死亡保険金と満期の保険金を誰が受け取るかで、保険料が資産・損金・給与のどれになるかが決まります。国税庁の取扱いを3パターンに整理します。
法人税基本通達9-3-4養老保険とは、満期になったときか、被保険者が亡くなったときに保険金が支払われる生命保険です(国税庁の説明)。法人が契約者となり、役員や従業員を被保険者にして保険料を払うと、その保険料が全額経費になるとは限りません。
経理の扱いを決めるのは、死亡保険金の受取人と満期などで支払われる生存保険金の受取人の2つです。受取人の組み合わせごとの扱いと、役員だけを被保険者にしたときの注意点を整理します。
受取人の組み合わせ3パターンの経理処理
法人が自己を契約者とし、役員または使用人(これらの親族を含みます)を被保険者とする養老保険の保険料は、死亡保険金と生存保険金の受取人の組み合わせで3通りに分かれます(法人税基本通達9-3-4。特約の保険料は除きます)。
| 死亡保険金の受取人 | 生存保険金の受取人 | 支払った保険料の扱い |
|---|---|---|
| 法人 | 法人 | 契約が終わる時まで全額を資産に計上(損金にならない) |
| 被保険者の遺族 | 被保険者の遺族 | 役員・使用人への給与 |
| 被保険者の遺族 | 法人 | 2分の1を資産に計上し、残り2分の1は期間の経過に応じて損金(役員等だけが被保険者のときは例外あり) |
「契約が終わる時」とは、保険事故(死亡や満期)が起きたとき、または契約の解除や失効があったときです。資産に計上した保険料は、その時まで損金になりません(出典:国税庁 No.5363)。
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死亡は遺族・満期は法人のとき(保険料の2分の1が資産、残りが損金)
3つ目の組み合わせは、保険料の半分だけが損金になる点が特徴です。
例えば、年間の保険料が120万円の契約なら、60万円を資産に計上し、残りの60万円をその事業年度の損金に算入します。金額は説明のための仮の数字です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間の支払保険料 | 120万円 |
| 資産に計上する額(2分の1) | 60万円 |
| 損金に算入する額(残り) | 60万円 |
損金に入る60万円は「期間の経過に応じて」算入する扱いです。1年分を払ったときは、その1年分の保険料に対応する部分が当期の損金になります。
役員・特定の使用人だけを被保険者にしたとき
前の表の3つ目の組み合わせには、ただし書きの例外があります。役員または部課長その他特定の使用人(これらの親族を含みます)だけを被保険者としている場合、損金になるはずだった残り2分の1は、その役員または使用人への給与になります(出典:法人税基本通達9-3-4(3)ただし書、国税庁 No.5363)。
- 給与とされた保険料は、その役員または使用人の生命保険料控除の対象になります。
- 役員に対する給与とされる保険料を法人が経常的に負担する場合は、毎月おおむね一定の経済的利益を受けるため、定期同額給与として扱われます。
- 死亡保険金も満期の保険金も遺族や本人が受け取る組み合わせ(表の2つ目)は、全額が給与です。
1人社長の会社のように、被保険者が役員だけになる法人では、このただし書きに当たるかを最初に確認します。給与になると、役員報酬の決め方(定期同額給与)や源泉徴収の扱いにも影響します。従業員の福利厚生としての費用の考え方は福利厚生費の範囲で解説しています。
契約中に起きる変更(特約・契約者配当・払済保険)
契約の途中や終了時に出てくる論点のうち、通達に定めがあるものを挙げます。
- 特約の保険料:養老保険に付けた特約の保険料は、本体の3パターンの表とは別に、特約の内容に応じて養老保険・定期保険・第三分野保険の取扱いで判定します(法人税基本通達9-3-6の2)。
- 契約者配当:受け取った契約者配当は通知を受けた日の属する事業年度の益金になります。ただし、保険料の全額を資産計上している契約(受取人がどちらも法人)では、配当の額を資産に計上している保険料から控除できます(9-3-8)。
- 払済保険への変更:払済保険に変更したときは、原則として、変更時の解約返戻金相当額と資産計上額との差額を、その事業年度の益金または損金にします(9-3-7の2)。
満期や解約のときの具体的な仕訳、解約返戻金を役員退職金の財源にするときの金額と時期は、契約内容によって変わります。定期保険や逓増定期保険との違いは法人契約の生命保険の経理処理で扱っています。
よくある質問
- 法人契約の養老保険の保険料は経費になりますか?
どちらの保険金も法人が受け取る契約は全額が資産計上で、損金になりません。死亡保険金を遺族が、満期の保険金を法人が受け取る契約は、2分の1が損金です(役員等のみが被保険者の例外あり、出典:国税庁 No.5363)。
- 役員だけを被保険者にしても2分の1は損金になりますか?
なりません。死亡保険金の受取人が遺族、生存保険金の受取人が法人の契約でも、役員や特定の使用人だけが被保険者のときは、損金のはずの残りが給与になります(出典:国税庁 No.5363)。
- 給与になった保険料は、本人の税金にどう影響しますか?
給与とされた保険料は、その役員または使用人の生命保険料控除の対象になります。経常的に負担する役員分は定期同額給与として扱われます(出典:国税庁 No.5363)。
- 令和元年7月8日の前後で扱いは違いますか?
国税庁は、養老保険の取扱いをNo.5363(令和元年7月8日以後契約分)とNo.5360(前契約分)に分けて掲載していますが、本記事で扱った受取人別の3パターンの内容は両ページで同じです。特約の扱いは前後で記載が異なるため、特約付きの契約は契約日の確認が必要です。
まとめ
- 養老保険の保険料の扱いは、死亡保険金と生存保険金の受取人で決まる。
- どちらも法人が受取人なら全額を資産に計上し、どちらも本人や遺族なら給与。
- 死亡は遺族・満期は法人なら、2分の1が資産、残りが損金。ただし役員等だけが被保険者のときは残りも給与。
- 特約・契約者配当・払済保険への変更は、通達で別に扱いが定められている。
次に知りたいこと
公式一次情報
- 国税庁「No.5363 養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」(受取人別の3パターン、給与の場合の生命保険料控除・定期同額給与)
- 国税庁「No.5360 養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」(前契約分の取扱い)
- 国税庁 法人税基本通達 第3節 保険料等(9-3-4、9-3-6の2、9-3-7の2、9-3-8)

