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社員旅行・忘年会・慶弔見舞金は福利厚生費か|交際費・給与になる境目と役員だけの場合

法人が従業員向けの旅行・社内飲食・慶弔金を支出したとき、福利厚生費として処理できる条件と、交際費等や給与になる場合の違いを、国税庁の通達とタックスアンサーにもとづき整理します。

措置法通達61の4(1)-10
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

法人成りをして従業員や家族を雇うと、忘年会、社員旅行、結婚や出産のお祝い金といった支出が出てきます。これらは条件を満たせば福利厚生費として全額を経費にでき、満たさなければ交際費等や給与として扱われます。

このページでは、会社の経費の側(法人税)と、受け取る本人の給与課税の側(源泉所得税)を分けて、国税庁の定めを整理します。役員だけの会社で特に問題になる点も説明します。

福利厚生費と交際費等の分かれ目

租税特別措置法第61条の4は、法人の交際費等を原則として損金に算入しないと定めています。ただし同条第6項第1号は、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」を交際費等から除くとしています(出典:e-Gov法令検索)。

つまり、従業員のための行事でも、「通常要する費用」を超えると交際費等になります。税務大学校の論文(税大ジャーナル)は、福岡地裁平成29年4月25日の判決が、行事が社会通念上一般的に行われている範囲や福利厚生費として認められる程度を超える場合は交際費等にあたる、と示したと紹介しています。

金額の線引きは法令に数字では書かれていません。そのため、次の3つの場面ごとに、国税庁が示している具体的な基準を確認します。

忘年会・社内の飲食

国税庁の措置法通達61の4(1)-10は、創立記念日、国民祝日、新社屋の落成式などに際して、従業員等におおむね一律に社内で供与される通常の飲食費は、交際費等に含まれないとしています。

ここで押さえる点は3つです。

  • 対象は「おおむね一律」の提供です。特定の人だけを厚くもてなす支出は、この取扱いに当たりません。
  • 通達の文言は「社内において供与される通常の飲食」です。社外の飲食店で開く忘年会が、すべて同じ扱いになるとは通達からは読めません。金額や参加者の範囲を含め、社会通念で判断されます。
  • 役員・従業員またはその親族だけで行う飲食は「社内飲食費」と呼ばれ、国税庁のQ&Aによれば、一定金額以下の飲食費を交際費等から除く特例の対象になりません。取引先を呼ぶ会食とは、別の区分で記帳します。

取引先を招いた会食の50%控除や年800万円の枠は、法人の交際費の選び方で説明しています。

慶弔見舞金・お祝い金

同じ通達61の4(1)-10は、従業員等(元従業員を含む)やその親族の慶弔・禍福に際して、一定の基準に従って支給される金品の費用は、交際費等に含まれないとしています。

「一定の基準」は、通達に金額が書かれていません。次のような形で、会社として基準を残しておくと、誰にいくら出したかの根拠を説明できます。

残しておく書類書く内容の例
慶弔見舞金規程結婚、出産、弔事、病気見舞いなどの事由と、事由ごとの金額
支給の記録支給日、対象者、事由、規程のどの項目に当たるか

この通達が対象にしているのは従業員等とその親族です。得意先や仕入先など社外の人の慶弔に出す金品は、この通達の対象に書かれていないため、別に区分して記帳します。

従業員に就業規則や規程で定めた手当を支払うときの記載事項は、労働条件通知書の明示事項や就業規則の記載と合わせて確認してください。

社員旅行の4泊5日と50%

従業員の旅行の費用が、参加した人の給与として課税されるかどうかについて、国税庁タックスアンサー No.2603は次のように説明しています。社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行で、受ける経済的利益が少額の現物給与は強いて課税しない、という考え方(少額不追求)を超えないものは、旅行費用を参加者の給与にしなくてよいとされます。

そのうえで、次の2つをどちらも満たすときは、原則として給与としなくてよいと示されています。

  1. 期間が4泊5日以内:海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
  2. 参加人数が全体の50%以上:工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場の人数の50%以上が参加すること。

タックスアンサーの事例では、次のように判定されています。

旅行期間費用と会社負担参加割合判定
3泊4日15万円(会社負担7万円)100%原則として課税しなくてよい
4泊5日25万円(会社負担10万円)100%原則として課税しなくてよい
5泊6日30万円(会社負担15万円)50%期間が5泊6日以上のため課税される

旅行に参加しなかった人に、不参加の代わりに金銭を支給すると、参加者と不参加者の全員に、その金額に相当する給与の支給があったものとされます(タックスアンサー No.2603の注)。旅行か金銭かを選べる形にしてはいけません。

なお、会社の業務に直接必要な研修旅行の費用は、給与として課税されません。観光を主な目的とする団体旅行などは、業務に直接必要なものとはならないとされています(同じタックスアンサー)。

役員だけの会社・役員だけの旅行

一人または家族だけで運営する法人では、ここが最も注意する点です。タックスアンサー No.2603は、次の旅行を従業員レクリエーション旅行に当たらないとしています。

  • 役員だけで行う旅行
  • 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
  • 実質的に私的旅行と認められる旅行
  • 金銭との選択が可能な旅行

これらの旅行費用は、給与、交際費などとして適切に処理する必要があるとされています。従業員がいない会社の役員旅行を、福利厚生費として全額経費にすることは、この定めから読めません。

役員への給与は、定期同額給与などの要件があります。旅行費用を役員への給与として扱うと、損金に入るかどうかは別の問題になるため、役員報酬の決め方と法人の経費の基本を先に確認してください。

従業員向けの健康診断や通勤手当など、別に非課税の定めがあるものは法人成りの健康診断、通勤手当の非課税、食事補助の非課税限度額で説明しています。

支出の種類別の早見表

支出法人税での基本の扱い注意する点
従業員全員への社内の飲食(創立記念日など)交際費等に含まれない(通達61の4(1)-10)おおむね一律・通常の飲食であること
従業員・親族への慶弔見舞金交際費等に含まれない(同上)一定の基準に従って支給すること
従業員の社員旅行通常要する費用なら交際費等から除外(措置法61条の4第6項第1号)4泊5日以内・参加50%以上、金銭との選択不可
役員だけの旅行従業員レクリエーション旅行に当たらない給与等として処理する必要がある
取引先を含む会食・旅行交際費等交際費の枠の計算へ入れる

よくある質問

社員旅行の費用は全額を福利厚生費にできますか?

専ら従業員の慰安のために行われる旅行の「通常要する費用」は交際費等から除かれます。国税庁は、旅行期間が4泊5日以内、参加人数が全体の50%以上などの条件を満たす旅行は、原則として参加者の給与としなくてよいとしています。

旅行に行かなかった従業員へ現金を渡してもよいですか?

渡した場合は、参加者と不参加者の全員に、その金額に相当する給与の支給があったものとされます(国税庁タックスアンサー No.2603)。

結婚や出産のお祝い金は福利厚生費になりますか?

従業員等やその親族の慶弔・禍福に際して、一定の基準に従って支給される金品は、交際費等に含まれないとされています(措置法通達61の4(1)-10)。基準を規程などで定めておくと説明しやすくなります。

社長一人の会社で、社長だけの旅行を福利厚生費にできますか?

役員だけで行う旅行は、国税庁が従業員レクリエーション旅行に当たらないとしています。給与、交際費などとして適切に処理する必要があります。

取引先を含めた忘年会はどう処理しますか?

取引先に対する接待、供応にあたる部分は交際費等の側で扱います。社内だけの飲食と記帳を分けておくと、交際費の計算がしやすくなります。

まとめ

  • 従業員向けの行事の費用は、通常要する範囲なら交際費等から除かれ、福利厚生費にできる。
  • 社内の飲食はおおむね一律の通常のもの、慶弔金は一定の基準に従った支給であることが前提。
  • 社員旅行は、4泊5日以内・参加50%以上などを満たせば、原則として給与としなくてよい。不参加者への金銭支給は全員の給与になる。
  • 役員だけの旅行は、従業員レクリエーション旅行に当たらない。

公式一次情報

本記事について。税理士監修前の概説です。福利厚生費にできるかどうかは、行事の内容、金額、参加者の範囲など個別の状況で異なります。実際の判断は税理士にご相談ください。