従業員の資格取得費用・研修費を会社が出すと給与になる?
従業員の職務に直接必要な知識や資格を身につけさせるための研修費・受講料は、適正な金額に限り、会社が負担しても給与として課税されません。職務と関係のない講座や、退職後の転職に役立つ資格の費用は対象外です。国税庁タックスアンサー2601と質疑応答事例で整理します。
国税庁の取扱い従業員に資格を取らせたり、外部の講習会に参加させたりするときは、受講料を会社が払うのが一般的です。ところが本来は本人が負担する費用を会社が代わりに払うと、その分が従業員の給与として課税される場合があります。
国税庁のタックスアンサー2601では、役員や使用人の職務に直接必要な技術や知識を習得させ、または免許や資格を取得させるための研修会・講習会などの出席費用や大学等の聴講費用として適正なものに限り、給与として課税しなくてよいとされています。根拠は所得税基本通達36-29の2です。
社員旅行や忘年会などの行事は「社員旅行・忘年会・慶弔見舞金は福利厚生費か」、食事の補助は「食事補助の非課税限度額」、学費の補助は「従業員・役員の学資金の課税」、人間ドックの費用は「人間ドックの費用を会社が出すと給与になる?」、発明や社内提案の報奨金は「発明・社内提案の報奨金は何の所得か」で整理しています。
課税されない費用の条件
タックスアンサー2601が挙げる条件は、次の3点にまとめられます。
- 役員または使用人としての職務に直接必要な技術・知識の習得、または免許・資格の取得を目的としていること
- 研修会、講習会などへの出席費用、または大学等の聴講費用に充てるための費用であること
- その費用として適正な金額であること
通達の考え方は、本来は本人が負担すべき費用を会社が負担すると、その分が給与として支払われたものとして課税される、というものです。会社が自分の業務を進めるうえで必要だと判断して出す費用は、その例外として扱われます。
質疑応答事例:接遇・マナーの講座は課税されない
国税庁の質疑応答事例「講習会の出席費用の負担」では、少年院出院者等を雇用する会社が、接遇・マナー・社会教養に関する講座を従業員に受講させ、受講料を会社が負担したケースが取り上げられています。
回答は「給与等として課税しなくて差し支えありません」です。会社が自己の業務遂行上の必要に基づき、使用人としての職務に直接必要な知識を習得させるための出席費用等として支給する金品は、適正なものに限り課税されない、と説明されています。
資格試験だけでなく、職務に直接必要な知識を学ぶ講座も対象になりうる点が読み取れます。ただしこの事例は、照会に書かれた事実関係を前提にした回答です。実際の講座が職務に直接必要かどうかは、内容ごとに確認が必要です。
退職後の転職に役立つ資格の助成は課税される
質疑応答事例「定年前退職者等に支給する転進助成金」では、退職後に再就職や自営をしようとする社員が、転進後の職業に役立つ資格や技能を習得するために受けた社外講座・試験の費用を、30万円を限度に助成する制度が取り上げられています。
この助成金は、使用者の業務遂行上の必要に基づき使用人としての職務に直接必要な資格・技術の習得を目的としたものではないため、非課税にならないとされています。所得の区分は、退職前に支給が確定するものが給与所得、退職後に支給が確定するものが雑所得とされています。
払う前の判定表
| 費用の内容 | 給与としての課税 |
|---|---|
| 職務に直接必要な資格を取るための講習会の受講料を、会社が負担する | 適正な金額なら課税されない |
| 職務に直接必要な知識を学ぶ社外講座(接遇・マナーなど)の受講料を、会社が負担する | 事例の事実関係では課税されない |
| 大学等の聴講費用のうち、職務に直接必要なものを会社が負担する | 適正な金額なら課税されない |
| 退職後の再就職や自営に役立つ資格の受講・受験費用を助成する | 非課税にならない |
この表は源泉所得税の取扱いの整理です。会社側の経費の区分や、費用が適正な金額かどうかは個別の事情で変わるため、顧問税理士にご相談ください。
まとめ
- 職務に直接必要な技術・知識の習得や資格取得のための研修費・受講料は、適正なものに限り給与として課税されない(所基通36-29の2)
- 接遇・マナーの講座の受講料を会社が負担した事例でも、課税しなくて差し支えないとされている
- 退職後の転職や自営に役立つ資格の助成金は、職務に直接必要なものではないため非課税にならない
- 判断の軸は講座の名前ではなく、会社が負担する理由と、いまの職務との結びつき
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき(令和8年4月1日現在法令等。非課税となる費用の範囲。2026-10-12確認)
- 国税庁 質疑応答事例 講習会の出席費用の負担(令和7年8月1日現在。接遇・マナー・社会教養の講座の受講料。2026-10-12確認)
- 国税庁 質疑応答事例 定年前退職者等に支給する転進助成金(令和7年8月1日現在。退職後の職業に役立つ資格の助成。2026-10-12確認)
よくある質問
- 従業員の資格取得の受講料を会社が払うと、必ず課税されないのですか?
- 必ずではありません。職務に直接必要な技術・知識の習得や資格取得のための費用として、適正なものに限り課税されません。目的や金額が職務との関係を超えると、給与として課税される場合があります。
- 根拠になる通達は何ですか?
- 所得税基本通達36-29の2です。タックスアンサー2601と、質疑応答事例の「講習会の出席費用の負担」で、この通達を根拠に説明されています。
- 接遇やマナーの講座でも非課税になりますか?
- 国税庁の質疑応答事例では、少年院出院者等を雇用する会社が従業員に受講させた接遇・マナー・社会教養の講座の受講料を、課税しなくて差し支えないと回答しています。事実関係を前提とした回答なので、自社の場合は講座の内容と職務の関係を確認してください。
- 退職を予定している社員の再就職のための資格費用を助成すると?
- 国税庁の質疑応答事例では、退職後の職業に役立つ資格の助成は、職務に直接必要な資格・技術の習得を目的としていないため非課税にならないとされています。退職前に支給が確定すれば給与所得、退職後に確定すれば雑所得に当たります。
- 役員の研修費用も同じ扱いですか?
- タックスアンサー2601は、役員または使用人を対象に、その職務に直接必要な技術・知識の習得や資格の取得のための費用を挙げています。