従業員にお金を貸すときの利息|無利息で貸すと給与課税になる場合・ならない3つの例外
会社が従業員(使用人)に生活資金や住宅資金を無利息や低い利息で貸したとき、差額が給与として課税される条件と、課税されない3つの例外を、国税庁タックスアンサー No.2606 にもとづいて計算例つきで説明します。
所得税基本通達36-49従業員から「急な出費で前借りしたい」と頼まれて、会社が無利息でお金を貸す場面は少なくありません。無利息や低い利息で貸すと、本来受け取るべき利息との差額が、従業員への給与として課税されることがあります。
このページでは、利息を計算するときの利率、令和8年中に貸す場合の1.3%、課税されない3つの例外を、仮の計算例で説明します。代表者への貸付は役員貸付金の認定利息の記事で説明しています。
無利息で貸すと課税される仕組み
役員または使用人に無利息や低い利息で金銭を貸し付けると、次の例外に当たる場合を除き、国税庁が定める利率で計算した利息の額と、実際に支払う利息の額との差額が、給与として課税されます(国税庁タックスアンサー No.2606)。
給与として課税された金額は、通常の給与と同じように源泉徴収の対象になります。従業員が実際にお金を受け取っていなくても、利息を取らなかった分が経済的な利益として扱われるためです。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
記事で確かめた内容を、申告書の記入や帳簿の付け方まで一冊で追いたいとき向けです。
計算に使う利率(借入金の利率と年ごとの利率)
利息相当額を計算する利率は、会社が資金をどう用意したかで次のように分かれます(国税庁)。
- 会社が他から借り入れて貸す場合:その借入金の利率を使います。
- それ以外の場合:貸付けを行った日の属する年に応じた利率を使います。
年ごとの利率は、貸付けを行った年で決まります。国税庁が示している最近の利率は次のとおりです。
| 貸付けを行った年 | 利率 |
|---|---|
| 平成30年から令和2年 | 1.6% |
| 令和3年 | 1.0% |
| 令和4年から令和7年 | 0.9% |
| 令和8年 | 1.3% |
令和8年中に貸し付けた分は1.3%で、令和7年までの0.9%から上がっています。利率は貸付けを行った年のものを使うため、令和7年に貸したお金は、令和8年に残高があっても0.9%のままです。
課税されない3つの例外
無利息や低い利息で貸しても、次の(1)から(3)のいずれかに当たれば、給与として課税しなくてよいとされています(国税庁)。
- (1)臨時の生活資金:災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要になった役員または使用人に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で貸す場合。
- (2)合理的な貸付利率を決めている場合:会社の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる貸付利率を定め、その利率で貸す場合。
- (3)差額が年5,000円以下:(1)と(2)以外の貸付けで、国税庁の利率で計算した利息と実際に支払う利息との差額が、1年間で5,000円以下の場合。
なお、使用人への住宅資金の貸付けを平成22年12月31日までに行った場合は、年1%の利率を基準とする特例があります(国税庁)。令和8年に新しく貸す場合は対象外です。
計算例:いくらまでなら課税されないか
次は、令和8年中に会社が自己資金で従業員に貸し、1年間貸したままにする仮の例です。利率は国税庁の1.3%を使い、(1)と(2)には当たらないものとします。
| 貸付額 | 受け取る利息 | 1.3%の利息 | 差額 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 0円 | 3,900円 | 3,900円 | 5,000円以下のため課税されない |
| 100万円 | 0円 | 13,000円 | 13,000円 | 5,000円を超えるため、13,000円が給与として課税される |
| 100万円 | 5,000円(年0.5%) | 13,000円 | 8,000円 | 5,000円を超えるため、8,000円が給与として課税される |
無利息で課税されないのは、年の利息相当額が5,000円以下に収まる貸付額までです。1.3%の場合は、5,000円 ÷ 1.3% でおよそ38万円が目安になります。ただし、返済で残高が減る場合や、貸付期間が1年に満たない場合は、利息の額も変わります。
差額が5,000円を超えたときは、超えた分だけでなく、差額の全額が課税対象になります。表の2行目は、13,000円の全額です。
貸す前に決めておくこと
給与課税を避けたいときは、貸す前に次の点を決めて書面に残しておくと、後から説明しやすくなります。
- 貸付額、返済期間、返済方法(給与からの天引きなど)
- 利息を取るか、取らないか。取る場合の利率の根拠
- 臨時の生活資金として貸す場合は、災害や病気など貸す理由
- 会社が銀行などから借りて貸す場合は、その借入金の利率
給与から天引きして返済させる場合は、天引きの手続きに労働関係の決まりもあります。実際の設計は社会保険労務士や税理士にご相談ください。
ほかの現物給付の扱いは、従業員に社宅を貸すときの家賃や食事補助の非課税限度額で説明しています。
よくある質問
- 従業員に無利息でお金を貸すと、必ず給与として課税されますか?
必ずではありません。災害や病気などの臨時の生活資金として貸す場合、合理的な貸付利率を決めて貸す場合、利息の差額が1年間で5,000円以下の場合は、給与として課税しなくてよいとされています(国税庁タックスアンサー No.2606)。
- 令和8年に貸した場合の利率はいくらですか?
会社が他から借り入れて貸したのでなければ、令和8年中に貸し付けたものは1.3%です。令和4年から令和7年中に貸し付けたものは0.9%です。
- 差額が5,000円を超えたら、超えた分だけが課税されますか?
超えた分だけではなく、国税庁の利率で計算した利息と実際に支払う利息との差額の全額が、給与として課税されます。
- 会社が銀行から借りたお金を従業員に貸す場合の利率は?
その借入金の利率で利息相当額を計算します。年ごとの利率(令和8年は1.3%)は、会社が他から借り入れて貸したのでない場合に使います。
- 役員に貸す場合も同じ計算ですか?
国税庁の説明は「役員または使用人」に貸し付けた金銭を対象にしており、利率の考え方は同じです。代表者への貸付については、別の記事で説明しています。
まとめ
- 従業員に無利息や低い利息で貸すと、国税庁の利率で計算した利息との差額が給与として課税される。
- 利率は、会社が借りて貸すならその借入金の利率、それ以外は貸付けを行った年の利率(令和8年は1.3%)。
- 臨時の生活資金、合理的な貸付利率、差額が年5,000円以下のいずれかなら課税されない。
- 差額が5,000円を超えると、差額の全額が課税される。
従業員を雇うときの手続き全般は個人事業から法人への従業員の引き継ぎも参考にしてください。
公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.2606「金銭を貸し付けたとき」(利息相当額の利率、令和8年中の1.3%、課税されない3つの例外)

