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個人事業主の債務免除と所得税|免責許可・再生計画認可で借金が減ったとき(所得税法44条の2)

破産の免責許可や民事再生の再生計画認可などで借金が免除されると、免除された額は経済的な利益として所得になるのが原則です。所得税法44条の2は、一定の場合にその利益を所得に入れない特例を定めています。対象、事業所得の損失との調整、確定申告書への記載の要件を、条文にもとづき整理します。

所得税法44条の2
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

免責許可の決定、再生計画認可の決定、またはその他の理由で資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難なときに債務の免除を受けた場合、免除で得た経済的利益は、各種所得の総収入金額に入れません。ただし、その年の事業所得などの損失や繰越控除する純損失に相当する部分は、この特例の対象外で、確定申告書に適用を受ける旨を記載する必要があります。

事業の借入金の返済が難しくなり、免除や整理を考えている個人事業主向けに、所得税の扱いを整理します。破産や再生の手続そのものは、弁護士など専門家にご相談ください。

借金の免除は原則として収入になる

所得税法36条1項は、収入金額とすべき金額を、その年に収入すべき金額としています。金銭以外の物や権利、その他の経済的な利益で収入する場合は、その価額が収入金額になります。

借金の返済を免除されると、返す必要がなくなった分だけ経済的な利益を得たことになります。この利益に対して、何の特例も使わなければ、所得税の計算に入る可能性があります。44条の2は、返済が著しく困難な人の再出発を妨げないため、この利益を総収入金額に入れない扱いを定めたものです。

総収入金額に入れない場合(44条の2第1項)

居住者が、次のいずれかに当たる場合に債務の免除を受けたとき、免除による経済的な利益の価額は、各種所得の金額の計算上、総収入金額に入れません。

  • 破産法252条1項に規定する免責許可の決定があった場合
  • 再生計画認可の決定があった場合
  • そのほか、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合

3つ目の「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」に当たるかどうかは、個別の事情で判断されます。迷うときは、所轄の税務署か税理士に確認してください。

債務の種類は、事業用の借入金に限られていません。事業に関係しない債務も含まれますが、扱いが分かれるのは、次の調整の部分です。

損失・純損失との調整(第2項)

第1項の特例を使っても、免除を受けた経済的利益のうち、次の金額の合計に相当する部分は、特例の対象外になります。対象外の部分は、総収入金額に入ります。

免除を受けた債務特例の対象外になる金額
事業所得を生ずべき事業に係る債務免除を受けた日の属する年分の事業所得の損失の金額
不動産所得を生ずべき業務に係る債務その年分の不動産所得の損失の金額
山林所得・雑所得を生ずべき業務に係る債務その年分の山林所得・雑所得の損失の金額
純損失の繰越控除(所得税法70条)を受ける場合控除する純損失の金額

損失の金額は、免除を受けた経済的利益がないものとして計算します。純損失は、特例を適用しないものとして総所得金額などを計算した場合の控除額です。

つまり、免除益はまず、その年の事業の赤字や、前年以前から繰り越している損失と相殺される部分があり、それを超える部分が所得に入らない、という順番で考えます。

計算例

数字は説明のための仮定です。事業用の借入金のうち500万円の免除を、再生計画認可の決定にもとづいて受けた年に、事業所得の損失が200万円、前年から繰り越した純損失の控除額が100万円あった想定です。

項目金額
免除を受けた経済的利益の価額500万円
特例の対象外になる金額(事業所得の損失200万円+繰越純損失の控除100万円)300万円(総収入金額に入る)
総収入金額に入れない金額200万円

実際の金額は、他の所得の有無、純損失の繰越控除を受けられるかどうか、免除を受けた時期などで変わります。この例は、条文の順序を示すためのものです。

確定申告書の記載(第3項・第4項)

  • 記載が要件:第1項の特例は、確定申告書に、特例の適用を受ける旨、総収入金額に入れない金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り適用されます(第3項)。
  • やむを得ない事情があるとき:確定申告書の提出がない、または記載がない場合でも、税務署長がやむを得ない事情があると認めるときは、特例を適用できます(第4項)。

申告を誤ったときの直し方は、別のガイド(確定申告を間違えたとき)にまとめています。会社が役員から借りたお金の免除は、法人税の扱いになり、別のガイド(役員借入金の債務免除)で説明しています。

次に知りたいこと

公式一次情報

よくある質問

借金の免除を受けると、所得税がかかりますか?
借金の免除で得た経済的利益は、所得税法36条の「経済的な利益」に当たり、特例がなければ収入に入るのが原則です。ただし、免責許可の決定や再生計画認可の決定があった場合、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合は、総収入金額に入れない特例があります(44条の2)。
免除益は全額、所得に入らなくなりますか?
全額とは限りません。事業所得などの損失や繰越控除する純損失に相当する部分は、特例の対象外です(44条の2第2項)。
特例を使うのに、手続きは必要ですか?
確定申告書に、特例の適用を受ける旨や総収入金額に入れない金額などを記載する必要があります(第3項)。やむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、記載がなくても適用できる場合があります(第4項)。
事業に関係しない借金でも、この特例は使えますか?
条文の第1項は、債務の種類を事業用に限っていません。事業用かどうかで分かれるのは、第2項の損失との調整の部分です。
どの場合が「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」に当たりますか?
個別の事情で判断されます。所轄の税務署か税理士にご確認ください。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月26日時点の法令にもとづく一般的な案内で、個別の判断に代わるものではありません。破産や再生の手続は弁護士に、税の扱いは税理士または所轄の税務署へご確認ください。