マイクロ法人の役員報酬で増える老齢厚生年金の額(報酬比例部分の計算と早見表)
役員報酬月8.8万円・30万円・50万円で厚生年金に10・20・30年加入した場合の、老齢厚生年金(報酬比例部分)の増加額を日本年金機構の計算式で試算します。
令和8年度の公式数値マイクロ法人で役員報酬を受け取ると、代表者は厚生年金保険に加入し、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。上乗せの中心は報酬比例部分で、その額は役員報酬の等級(標準報酬月額)と加入月数でほぼ決まります。この記事では、日本年金機構の計算式と令和8年度の保険料額表から、報酬の水準別・加入年数別の増加額と、払う保険料との関係を整理します。
報酬比例部分の計算式
65歳から受け取る老齢厚生年金の年金額は、報酬比例部分+経過的加算+加給年金額です(出典:日本年金機構)。老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして受け取るものです。
平均標準報酬額は、加入期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入期間の月数で割った額です。過去の標準報酬月額・標準賞与額には、賃金や物価の水準で再評価するための「再評価率」が掛けられます(出典:日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」「年金用語集 報酬比例部分」)。
役員報酬別・加入年数別の増加額の早見表
役員報酬を毎月同じ額にし(定期同額)、賞与を出さない場合、平均標準報酬額はその報酬の標準報酬月額と同じになります。令和8年度の保険料額表では、報酬月額93,000円未満は1等級の88,000円、290,000円以上310,000円未満は19等級の300,000円、485,000円以上515,000円未満は27等級の500,000円です。再評価率を1とみなして計算すると、次のとおりです。
| 標準報酬月額(等級) | 加入10年(120月) | 加入20年(240月) | 加入30年(360月) |
|---|---|---|---|
| 88,000円(1等級・最低) | 年約57,879円 | 年約115,759円 | 年約173,638円 |
| 300,000円(19等級) | 年約197,316円 | 年約394,632円 | 年約591,948円 |
| 500,000円(27等級) | 年約328,860円 | 年約657,720円 | 年約986,580円 |
いずれも65歳から毎年受け取る報酬比例部分の目安で、経過的加算と加給年金額は含みません。加入1年ごとに増える年金額は、88,000円なら年約5,788円、300,000円なら年約19,732円、500,000円なら年約32,886円です。
払う保険料と年金の増え方の関係
厚生年金保険料率は18.300%で、マイクロ法人では会社負担分と本人負担分(折半額)の両方を実質的に自分の法人から払います。令和8年度の保険料額表による保険料(全額)は次のとおりです。
| 標準報酬月額 | 保険料 月額(全額) | うち本人負担(折半額) | 保険料 年額(全額) | 加入1年で増える年金額 |
|---|---|---|---|---|
| 88,000円 | 16,104円 | 8,052円 | 193,248円 | 年約5,788円 |
| 300,000円 | 54,900円 | 27,450円 | 658,800円 | 年約19,732円 |
| 500,000円 | 91,500円 | 45,750円 | 1,098,000円 | 年約32,886円 |
報酬を上げると保険料も年金も同じ割合で増えるので、「役員報酬をいくらにすれば年金が得か」は等級では決まりません。報酬の水準は、法人税・所得税・健康保険料を含めた手取りで比べます。比べ方は役員報酬の決め方とマイクロ法人の社会保険料で整理しています。
国民年金だけの場合との違い
個人事業主のまま国民年金だけに加入している場合、老後の年金は老齢基礎年金だけです。法人で厚生年金に加入すると、老齢基礎年金に報酬比例部分と経過的加算が上乗せされます。上の早見表の額が、国民年金だけの場合との差の中心です。
また、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある方は、65歳到達時点などで生計を維持している配偶者または子がいると、届出により加給年金額が加算されます(出典:日本年金機構)。20年に届くかどうかも、加入年数を考えるときの目安になります。個人事業のまま年金を増やす付加年金・国民年金基金・iDeCoの違いは、個人事業主が年金を増やす方法で比べています。
試算の前提と注意点
- 再評価率を1とみなし、賞与なし・毎月同額の報酬で計算した目安です。実際の年金額は、加入月ごとの標準報酬月額と再評価率で決まります。
- 平成15年3月以前に会社員として加入していた期間がある場合、その期間は別の乗率で計算して合算します。
- 在職中(役員として厚生年金に加入しながら年金を受け取る場合)は、給料と年金の合計額に応じて年金の支給が停止される場合があります。70歳以上でも、厚生年金の適用事業所に勤めていれば対象です(出典:日本年金機構)。支給停止額の計算例は役員報酬と在職老齢年金で扱っています。
よくある質問
- 役員報酬を最低等級(月8.8万円)にすると、老齢厚生年金はいくら増えますか?
- 標準報酬月額88,000円で賞与なしの場合、報酬比例部分は加入10年で年約5.8万円、20年で年約11.6万円、30年で年約17.4万円が目安です(再評価率を1とみなした計算)。
- 役員報酬を上げるほど年金は得になりますか?
- 保険料(全額)も年金の増え方も報酬に比例するため、1年分の保険料が増える年金の約33.4年分に当たる関係は等級によらず同じです。報酬の水準は税・健康保険料を含めた手取りで比べます。
- 65歳以降も役員を続けると年金は減りますか?
- 厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、給料と年金の合計額に応じて支給が停止される場合があります。70歳以上でも適用事業所に勤めていれば対象です。
公式情報
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」(老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式、平均標準報酬額の定義)
- 日本年金機構「年金用語集 報酬比例部分」(再評価率)
- 日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(年金額の構成、在職者の老齢厚生年金、加給年金)
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表(令和8年度版)」(保険料率18.300%、標準報酬月額の等級と保険料)