酒類販売業免許の法人成り|新規申請と取消申請を同時に出す
個人で酒屋や酒類の通信販売をしている人が法人成りするときの免許の扱いを整理します。新規免許と既存免許の取消申請を同時に出すこと、法人成りとして扱われる4つの条件、休業場の判定、登録免許税、酒類販売管理者の選任を国税庁の資料で確認します。
酒類販売業免許酒類の販売業免許は、個人が持っているものを法人へ名義変更する手続きは、国税庁の資料に示されていません。国税庁は、法人成りのときに法人が新規免許を申請し、あわせて個人の免許の取消申請を同時に出す扱いを定めています。
| 確認すること | 国税庁の資料での扱い |
|---|---|
| 手続きの形 | 法人の新規免許申請と、既存販売場の免許の取消申請を同時に提出する |
| 法人成りとして扱われる条件 | 取消申請の同時提出、人的要件と経営基礎要件の充足、既存販売場と同じ場所での営業、既存販売場が休業場でないこと |
| 休業場 | 1年以上引き続き酒類の販売を行っていない販売場 |
| 登録免許税 | 免許1件につき3万円(通信販売酒類小売業免許の手引きの記載) |
| 標準処理期間 | 申請書等の提出の翌日から2か月以内(補正に要する期間は除く) |
法人成りは新規申請と取消申請の同時提出
国税庁の「法人成り等の場合の免許審査項目一覧表」は、法令解釈通達の第2編第9条第1項関係14に基づく扱いです。審査項目は基本的に新規の場合と同じで、法人成りでは特に次の事項を審査するとしています。
「法人成り等」には、法人成りのほか、法人の合併と会社分割も含まれます。個人事業の法人成りは、酒類販売業者である個人が主体となって法人を設立する場合にあたります。
免許は販売場ごとに受けます。本店で免許を受けていても、支店で販売するなら支店の所在地の税務署から別に免許を受けます(国税庁の通信販売の手引き)。
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法人成りとして扱われる4つの条件
審査項目一覧表は、法人成りの要件として次の4つを挙げています。
- 取消申請書を同時に出す。新規の免許申請書の提出と併せて、それまで営業してきた既存販売場の免許の取消申請書が同時に提出されていること。
- 人的要件と経営基礎要件を満たす。通達が定める申請者等の人的要件と、経営の基礎が薄弱でないことの要件を満たしていること。
- 既存販売場と同じ場所で営業する。場所を変えて始める場合は、この表の「同じ場所」の条件に当たりません。
- 既存販売場が休業場でない。休業場の意味は次の節で説明します。
法人成りだからといって審査が省略されるわけではありません。免許要件誓約書の内容を偽ると、審査段階なら拒否処分、免許取得後なら取消処分の対象になります(国税庁の通信販売の手引き)。
休業場だと何が問題になるか
審査項目一覧表の注記は、休業場を「1年以上引き続き酒類の販売を行っていない販売場」と定めています。卸売免許では、直近1年間の販売実績が基準数量に満たない販売場も休業場とされます。
法人成りの要件の一つが「既存販売場が休業場でないこと」なので、個人の店で1年以上酒類を売っていないと、この表の法人成りの形では扱えません。開業後に売れ行きが悪く、しばらく仕入れていなかった場合などは、法人を設立する前に所轄税務署の酒類指導官へ状況を伝えて、どの申請になるかを聞いてください。
法人成りの要件に当たらない場合の扱いを、今回確認した国税庁の資料は書いていません。一般の新規申請として審査されるのかは、窓口で確認が必要です。
申請の順番と提出時期
- 酒類指導官に相談する。酒類指導官が置かれている税務署と担当税務署は、国税庁のホームページで確認できます。
- 法人を設立する。申請者となる法人の役員全員が人的要件を満たすか確認します。
- 新規免許申請書と取消申請書を同時に出す。販売場の所在地の所轄税務署長へ提出します。
- 免許付与の通知を受け、登録免許税を納める。納付後に領収証書を提出します。
- 酒類販売管理者を選任し、法人名義で販売を始める。
国税庁の手引きは、法人成り等の場合の提出期限を「あらかじめ免許申請と取消申請を同時に」とし、申請書類の審査の期間(標準処理期間2か月)を考慮して提出するよう求めています。個人の免許の取消しと法人の免許の付与の時期が合うかどうかは、提出前に所轄税務署へ確認するのが安全です。
登録免許税と添付書類
通信販売酒類小売業免許の手引きによると、登録免許税は免許1件につき3万円です。免許を付与する旨の通知のあと、税務署から届く納付通知書で納めます。領収証書の原本を「登録免許税の領収証書提出書」に貼って提出し、写しは認められません。
添付書類は、同じ手引きの一覧で、次のものが挙がっています。一般酒類小売業免許など、ほかの区分では様式や書類が異なることがあるため、申請する免許の手引きで確認してください。
- 免許要件誓約書(申請者、申請法人の役員などについて)
- 申請者の履歴書(法人は監査役を含めた役員全員の職歴)
- 定款の写し
- 地方税の納税証明書(法人は証明事項に特別法人事業税を含める)
- 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
- 土地と建物の全部事項証明書
設立したばかりの法人には、3事業年度の財務諸表がありません。手引きにはこの場合の書き方がないため、設立後すぐに申請するときは、酒類指導官に提出する書類を確認してください。
酒類販売管理者の選任
酒類小売業者は、販売場ごとに、酒類の販売業務を開始するときまでに、酒類販売管理者を選任しなければなりません。選任できるのは、酒類の販売業務に従事する人で、酒類販売管理研修を過去3年以内に受けた人のうち、手引きが定める要件に当たる人です。
酒類小売業者が法人のときは、役員がその販売場で酒類の販売業務に従事するなら、自ら酒類販売管理者になれます。個人時代の選任をそのまま引き継げるかは、今回確認した資料に書かれていません。法人の免許で改めて選任できるよう、研修の受講時期を確認してください。
事業譲渡・相続の手続きとの違い
国税庁の手引きは、免許取得後の手続きとして、法人成り等のほかに、相続と事業譲渡の申告書を別の様式で定めています。相続では「酒類販売業相続申告書」、事業譲渡では「酒類販売業事業譲渡申告書」を、事由が生じたあと遅滞なく出します。
法人成りは、これらの申告書ではなく、免許申請書と免許取消申請書を同時に出す形です。個人から法人に事業を移すという事情が同じでも、使う様式が異なります。
次に確認する法人成り手続き
酒類以外の許認可も持っているときは、個人事業の許認可19種の引き継ぎ早見表で、新規取得・事前認可・承継届の違いを確認できます。
同じ法人成りで許可を取り直す例は産業廃棄物収集運搬業許可の法人成りで扱っています。在庫や店舗設備を法人へ移す方法は個人から法人への資産引継ぎ、役所や年金事務所への届出順は法人成りの手順ガイドで整理しています。
よくある質問
- 個人の酒類販売業免許を、法人に名義変更できますか?
- 名義変更の手続きは、国税庁の資料に示されていません。法人が新規免許を申請し、個人の免許の取消申請を同時に出します。国税庁は、この組み合わせを法人成りの扱いとして定めています。
- 新規申請と取消申請は、いつ出しますか?
- 国税庁の手引きは、あらかじめ両方を同時に出すとしています。標準処理期間が2か月なので、その期間を考えて提出してください。
- 登録免許税はいくらですか?
- 通信販売酒類小売業免許の手引きでは、免許1件につき3万円です。免許付与の通知のあと、納付通知書で納めます。
- 1年以上酒類を売っていない店でも、法人成りの扱いになりますか?
- 審査項目一覧表は、既存販売場が休業場でないことを要件にしています。休業場は、1年以上引き続き酒類の販売を行っていない販売場です。該当しそうなときは、先に酒類指導官へ相談してください。
- 法人の役員が酒類販売管理者になれますか?
- 国税庁の手引きでは、法人の役員がその販売場で酒類の販売業務に従事するなら、自ら酒類販売管理者になれます。ただし、酒類販売管理研修を過去3年以内に受けている必要があります。
まとめ
- 個人の酒類販売業免許は名義変更できず、法人の新規免許申請と個人の免許の取消申請を同時に出す。
- 法人成りの扱いには、取消申請の同時提出、人的要件と経営基礎要件、同じ場所での営業、休業場でないことの4つが必要。
- 休業場は、1年以上引き続き酒類の販売を行っていない販売場。
- 標準処理期間は2か月。登録免許税は免許1件につき3万円(通信販売の手引き)。
- 販売場ごとに酒類販売管理者を選任する。新設法人の添付書類は酒類指導官に確認する。
公式一次情報
- 国税庁「酒類販売業免許の法人成り等の場合の免許審査項目一覧表」(法人成りの形態、4つの要件、休業場の定義)
- 国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」(標準処理期間、登録免許税、添付書類、法人成り等の手続き、酒類販売管理者)
確認日:2026年10月22日。免許の区分ごとの要件・様式は改正されることがあります。

