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配偶者を役員にすると賞与は経費にできないか|使用人兼務役員の判定

配偶者を取締役にした場合、賞与を使用人分の給与として経費にできるかは「使用人兼務役員」になれるかどうかで決まります。なれない役員の範囲と持株要件を整理します。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

配偶者を取締役として登記し、経理や現場の実務も担ってもらっている場合、その賞与を使用人分の給与として経費にできるかどうかは「使用人兼務役員」になれるかで変わります。

使用人兼務役員になれない役員の範囲と、同族会社特有の持株要件、税務と雇用保険・社会保険で判定基準が異なる点を、国税庁・厚生労働省の情報にもとづき整理します。

使用人兼務役員とは

使用人兼務役員とは、役員のうち部長・課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ常時使用人としての職務に従事する者をいいます(国税庁タックスアンサーNo.5205)。該当すれば、使用人としての職務に対応する給与・賞与は、役員給与ではなく使用人給与として損金算入の判定を受けられます。

配偶者を取締役にしたうえで経理担当等の実務を任せ、賞与を経費にしたい場合、まず「使用人兼務役員になれるか」が出発点になります。

地位で最初から除外される役員

次の役員は、実際の職務内容にかかわらず使用人兼務役員になれません(国税庁タックスアンサーNo.5205、根拠法令:法人税法34条・施行令71条)。

  • 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
  • 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  • 合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
  • 取締役(指名委員会等設置会社の取締役および監査等委員である取締役に限る)、会計参与および監査役ならびに監事

配偶者を「代表取締役」ではなく「取締役(経理担当)」として登記していれば、この段階では除外されません。次の同族会社の所有割合要件で判定します。

同族会社の役員が除外される3要件

上記の地位に当たらなくても、同族会社の役員のうち、所有割合で判定して次の3要件をすべて満たす役員は使用人兼務役員になれません(国税庁タックスアンサーNo.5205)。

要件内容
①上位株主グループ要件その役員が、株主グループを所有割合の大きい順に並べたとき、第一順位(50%超)、または第一・第二順位の合計、または第一〜第三順位の合計で初めて50%超となる株主グループのいずれかに属していること
②所属グループ要件その役員の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
③本人・配偶者等要件その役員(配偶者、および本人・配偶者の所有割合が50%を超える他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること

マイクロ法人・小規模の同族会社は株主が少なく、配偶者を含めた持株割合がこの基準を超えやすい点に注意が必要です。持株割合にもとづく判定は、配偶者・家族が実質的に「役員」とみなされるかどうかの判定(みなし役員)とも共通点があります。

詳しくはマイクロ法人の配偶者・家族は「みなし役員」になる?判定基準を参照してください。

使用人分の賞与を経費にする条件

使用人兼務役員になれた場合でも、賞与の支給時期には注意が必要です。使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期に未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合、その支払った金額は不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されません(法人税基本通達9-2-26)。使用人分の賞与は、他の使用人と同じ時期に支給する必要があります。

使用人兼務役員になれない場合、または役員としての賞与を経費にしたい場合は、あらかじめ税務署へ「事前確定届出給与に関する届出書」を提出する必要があります。届出の要件・期限は事前確定届出給与とはで解説しています。配偶者を含む専従者への給与の考え方は専従者給与も参照してください(法人の役員給与とは制度が異なります)。

雇用保険は税務の判定と別基準

使用人兼務役員に該当するかどうかは法人税法上の判定であり、雇用保険の被保険者資格は別の基準で判定されます。会社の取締役や役員は、原則として雇用保険の被保険者になりません。ただし、部長・支店長・工場長等の従業員としての身分を有する者は、服務態様・賃金・報酬等からみて労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り加入でき、雇用の実態を確認できる書類等をハローワークへ提出する必要があります(厚生労働省「雇用保険制度Q&A~事業主の皆様へ」)。

配偶者などの同居親族には、さらに別の限定がかかります。個人事業の事業主(実質的に代表者の個人事業と同様と認められる法人を含む)と同居している親族は、原則として雇用保険に加入できません。①業務につき事業主の指揮命令に従っていることが明確であること、②就業の実態が他の労働者と同様であり賃金もこれに応じて支払われていること、③事業主と利益を一にする地位(取締役等)にないこと、の3条件をすべて満たせば加入できますが、配偶者が取締役である場合は③に抵触するため、原則として雇用保険には加入できません(同Q&A)。

雇用保険の失業給付・育児休業給付金への影響は法人成りと雇用保険の失業給付・育休給付で解説しています。

まとめ

  • 使用人兼務役員とは、使用人としての職制上の地位を有し、常時その職務に従事する役員をいう。
  • 代表取締役・副社長・専務・監査役等は、地位そのもので使用人兼務役員になれない。
  • 同族会社の役員は、3つの持株要件(上位株主グループ・所属グループ10%超・本人と配偶者等で5%超)をすべて満たすと使用人兼務役員になれない。
  • 使用人分の賞与は、他の使用人と同じ時期に支給しないと不相当に高額な部分として損金不算入になる。
  • 雇用保険は税務上の使用人兼務役員該当性とは別基準で判定され、配偶者が取締役であれば原則として加入できない。

よくある質問

配偶者を取締役にすると、賞与は絶対に経費にできませんか?
絶対にできないわけではありません。地位(代表取締役等)で除外されず、かつ持株の3要件のいずれかを満たさなければ使用人兼務役員になれ、使用人分の賞与を他の使用人と同じ時期に支給すれば経費にできます。要件を満たさない場合は、事前確定届出給与の届出をすれば役員賞与として経費にできる場合があります(出典:国税庁)。
持株要件の「配偶者を含めて5%」とは、夫婦の持株を合計するということですか?
本人・配偶者、および本人・配偶者の所有割合が50%を超える他の会社の所有割合を合わせて判定します。マイクロ法人など株主が夫婦のみの場合、この要件を満たしやすい点に注意してください(出典:国税庁)。
使用人兼務役員になれれば、雇用保険にも入れますか?
別の基準で判定されるため、自動的には決まりません。配偶者などの同居親族は、事業主の指揮命令下にあること・就業実態が他の労働者と同様であること・取締役等の地位にないことの3条件を満たさなければ加入できず、取締役である時点で原則加入できません(出典:厚生労働省)。
使用人兼務役員かどうかは誰が判断しますか?
地位による除外と持株割合は登記・株主名簿等の事実から機械的に判定できますが、実際の職務従事の実態が争われる場合もあります。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

公式一次情報

本記事について。税理士監修前の概説です。制度・期限は改正される場合があります。個別の判断は税務署または専門家へご確認ください。