障害年金、自営業者は3級だと無支給|国民年金と厚生年金の違い
病気やけがで働けなくなったときの障害年金は、国民年金と厚生年金で受給できる範囲が異なります。3級の扱いを中心に、金額・受給者数の公式統計とあわせて整理します。
日本年金機構・厚生労働省の公式情報にもとづく障害年金は、初診日(病気やけがについて初めて医師等の診療を受けた日)に加入していた年金制度によって、種類も受給できる範囲も変わります。個人事業主が加入する国民年金と、会社員が加入する厚生年金とでは、特に「3級」の扱いに大きな違いがあります。
障害年金には基礎年金と厚生年金がある
障害年金は、病気やけがで初めて医師の診療を受けた日(初診日)に加入していた年金制度で種類が決まります。初診日に国民年金に加入していれば障害基礎年金、厚生年金に加入していれば障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が請求できます(出典:日本年金機構)。
個人事業主(国民年金第1号被保険者)が対象になるのは障害基礎年金だけで、会社員(厚生年金加入者)はこれに上乗せして障害厚生年金も対象になります。この違いが、次の3級の扱いに直結します。
自営業者(国民年金)は1級・2級のみ、3級は無支給
障害基礎年金は、法令で定める障害等級表の1級・2級に該当する場合に支給されます。個人事業主が加入する国民年金には、3級に相当する障害基礎年金という区分がそもそも存在しません(出典:日本年金機構)。
1級は他人の介助がなければ日常生活のほとんどができない状態、2級は日常生活が極めて困難で労働による収入を得られない状態です。3級に当たる程度(労働に著しい制限を受ける状態)では、国民年金加入者に障害年金は支給されません。
会社員(厚生年金)は3級でも支給される
厚生年金に加入している間に初診日がある病気やけがで、2級に該当しない程度の軽い障害が残ったときは、障害厚生年金の3級が支給されます(出典:日本年金機構)。
3級の障害厚生年金には最低保障額があり、令和8年4月分から年635,500円(昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)です。同じ程度の障害でも、初診日に加入していたのが国民年金か厚生年金かで、支給の有無が分かれます。
年金額の目安(令和8年度)
令和8年4月分からの年金額(昭和31年4月2日以後生まれの場合)を等級別に整理します。
| 等級 | 障害基礎年金(国民年金) | 障害厚生年金(厚生年金) |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円+子の加算額 | 報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金額 |
| 2級 | 847,300円+子の加算額 | 報酬比例の年金額+配偶者加給年金額 |
| 3級 | 支給なし(区分自体がない) | 報酬比例の年金額(最低保障635,500円) |
子の加算額は2人まで1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円です。配偶者加給年金額は243,800円で、生計を維持する65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます(出典:日本年金機構)。
法人成り後でも初診日が個人事業主時代なら対象外
また、障害年金には保険料の納付要件があり、初診日の前日時点で未納期間が多いと、1級・2級に該当する障害でも支給されない場合があります。納付が難しいときの免除・納付猶予は国民年金保険料が払えないときを参照してください。
受給者数の規模
令和6年度末時点で、障害基礎年金の受給権者は233万人、障害厚生年金の受給権者は74万人です(出典:厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。
老齢年金や遺族年金と比べれば少数派ですが、現役世代でも発生し得る備えとして、国民年金と厚生年金で対象範囲が異なる点は事前に知っておく価値があります。
公的年金シミュレーターで試算する
厚生労働省の「公的年金シミュレーター」では、老齢年金に加えて障害年金の試算もできます。初診日時点の働き方(厚生年金加入の有無)や加入制度を入力すると、大まかな目安の年金額を確認できます(出典:厚生労働省)。
ただし試算は制度を簡略化した仮定にもとづく目安であり、遺族年金は対象外です。実際の受給には障害の程度の審査と保険料納付要件の確認が必要です。
法人成りとあわせて考える
個人事業主のまま老後の年金を上乗せするには付加年金・国民年金基金・iDeCoがありますが、これらは老齢年金の上乗せであり、障害年金の3級の有無を変えるものではありません。
法人化して厚生年金に加入すると、加入後に発生する障害についてはこの3級の非対称性が解消されますが、社会保険料の負担や加入資格の条件も変わります。マイクロ法人と社会保険で解説しているとおり、老齢年金・遺族年金・保険料負担まで含めて比較するのが適切です。
よくある質問
- 個人事業主でも障害年金はもらえますか?
- 国民年金加入者は、障害の程度が障害等級1級・2級に該当し、保険料納付要件を満たせば障害基礎年金を受け取れます。ただし3級に相当する程度の障害では、国民年金には支給する区分自体がありません(出典:日本年金機構)。
- 法人成りすれば3級でも年金がもらえますか?
- 初診日に厚生年金へ加入していれば、2級に満たない軽い障害でも障害厚生年金の3級が支給されます。ただし適用される制度は初診日時点の加入制度で決まるため、法人成り後に厚生年金へ切り替えても、初診日が個人事業主時代であれば障害厚生年金は受け取れません(出典:日本年金機構)。
- 障害年金の目安はどこで試算できますか?
- 厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で、働き方や初診日時点の加入制度を入力すると障害年金の大まかな目安を試算できます。実際の受給には障害の程度の審査と保険料納付要件の確認が必要です(出典:厚生労働省)。
まとめ
- 障害基礎年金(国民年金)は1級・2級のみが対象で、3級に相当する区分は存在しない。
- 障害厚生年金(厚生年金)は1級〜3級が対象で、3級には最低保障額(令和8年度、年635,500円)がある。
- 適用される制度は初診日時点の加入制度で決まるため、法人成り後の厚生年金加入は将来発生する障害にしか及ばない。
- 障害基礎年金受給権者233万人・障害厚生年金受給権者74万人(令和6年度末)。
- 備えの検討は、公的年金シミュレーターでの試算や、法人成りの社会保険料比較とあわせて行う。
社会保険料全体の負担軽減は個人事業主が社会保険を安くする方法、法人成りの判断材料はシミュレーターで確認できます。
公式一次情報
- 日本年金機構「障害年金」(障害基礎年金・障害厚生年金の対象範囲)
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(1級・2級の年金額、令和8年4月分から)
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」(3級の対象・最低保障額、令和8年4月分から)
- 厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(障害年金受給権者数)
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター」(障害年金の試算機能)