特定期間の給与等支払額に数えるもの・数えないもの
消費税の特定期間では、課税売上高に代えて、給与等の支払額で1,000万円を超えるかを判定できます。この記事は、その金額に数えるもの(給与・賞与・役員報酬)と数えないもの(通勤手当などの非課税分・未払分・出向の給与負担金)を、国税庁の質疑応答事例と通達で整理します。
消費税基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、その課税期間から消費税の課税事業者になります。ただし判定は、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額で行うこともできます。
給与等の金額は、帳簿の人件費をそのまま足せばよいわけではありません。支払った日で数えること、所得税が非課税の手当は外すことなど、数え方に決まりがあります。特定期間そのものの範囲は消費税の特定期間とはで扱っています。
給与等の金額は何を指すか
特定期間の判定で使う給与等の金額は、所得税法施行規則100条1項1号が定める、支払明細書(源泉徴収票など)に記載すべき給与等の金額に当たるものです。国税庁の通達(消費税法基本通達1-5-23)は、これを所得税の課税対象とされる給与、賞与等と説明しています。
言い換えると、源泉徴収の対象になる給与の金額で数える、ということです。帳簿上は人件費でも、所得税が課税されない部分は含まれません。
役員も同じです。国税庁タックスアンサーNo.2508は、給与所得を「使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得」と説明しています。役員報酬も、所得税で給与所得になる限り、この金額の対象と考えます。
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数えるもの・数えないものの早見表
| 種類 | 特定期間の給与等支払額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 従業員の給与・賞与 | 数える | 基本通達1-5-23 |
| 役員報酬 | 数える(所得税で給与所得になるもの) | 基本通達1-5-23、タックスアンサーNo.2508 |
| 残業手当・住宅手当・家族手当など所得税が課税される手当 | 数える | タックスアンサーNo.2508 |
| 通勤手当・旅費など所得税が非課税のもの | 数えない | 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」 |
| 特定期間中に支払っていない未払分 | 数えない | 基本通達1-5-23(注)1 |
| 出向先が出向元へ払う給与負担金(出向元が給与を支払い、支払明細書を交付する場合) | 出向先は数えない | 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」 |
退職手当については、国税庁の例示に載っていません。この記事では扱わないので、該当する支払いがあるときは税務署または税理士に確認してください。
未払額は支払った時に数える
通達の注記は、特定期間中において支払った給与等の金額には、未払額は含まれないとしています。特定期間の末日までに支払っていない給与は、その期間の金額に入りません。
したがって、数える基準は「どの月の働きに対する給与か」ではなく「特定期間のうちに支払ったか」です。たとえば月末締め・翌月払いの会社では、特定期間の最後の月の給与は、期間が終わってから支払うため数えません。一方で、特定期間の前月分を期間内に支払っていれば数えます。
出向の給与負担金はどちらの金額か
出向契約で、出向先が出向元に給与負担金を支払う場合があります。国税庁の質疑応答事例は、出向する使用人の給与を出向元が支払い、その支払明細書も出向元が交付するなら、その金額は出向元の給与支払額になるとしています。
そのため、出向先の特定期間の給与等支払額には、給与負担金は含まれません。人を受け入れている側の会社は、負担金を足して1,000万円を超えたと数えないよう注意してください。
計算例|賞与の支払日で結果が変わる
次の数字は仕組みを示すための例で、実際の金額ではありません。3月決算の法人で、前事業年度の開始日が4月1日、特定期間が4月1日から9月30日の6か月の場合を考えます。
| 項目 | 特定期間中の支払い | 数えるか |
|---|---|---|
| 役員報酬(月80万円×6か月) | 480万円 | 数える |
| 従業員の給与(月40万円×6か月) | 240万円 | 数える |
| 通勤手当(月1.5万円×6か月) | 9万円 | 数えない(所得税が非課税の範囲) |
| 賞与 | 9月に300万円を支払った | 数える |
この場合の給与等支払額は、480万円+240万円+300万円で1,020万円です。通勤手当の9万円は足さないので、1,029万円にはなりません。1,000万円を超えるため、課税売上高の側も1,000万円を超えているなら、課税事業者になります。
賞与を10月に支払っていれば、特定期間の支払いは480万円+240万円の720万円で、1,000万円以下です。賞与の支払日が特定期間の内か外かで、判定が逆になることがあります。
ただし課税売上高による判定は別で、課税売上高が1,000万円以下であることが免税のままでいる前提になります。判定の順番は、基準期間の課税売上高、特定期間の順です。
支払日を動かして判定を避けることが適切かどうかは、会社の事情で変わります。個別の判断は税務署または税理士へ相談してください。
国外事業者は給与での判定ができない
給与等支払額での判定は、国外事業者以外の事業者が選べる方法です。国税庁の案内は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者と、法人税法に規定する外国法人)は、特定期間の判定を給与等支払額の合計額で行えないとしています。
まとめ
- 給与等の金額は、所得税の課税対象となる給与・賞与等で数える(基本通達1-5-23)。
- 役員報酬や、課税される手当は数える。通勤手当・旅費など所得税が非課税のものは数えない。
- 数えるのは特定期間中に支払った金額で、未払分は含めない。
- 出向先は、出向元が給与を支払い支払明細書を交付する場合の給与負担金を数えない。
- 賞与の支払日が特定期間の内か外かで、1,000万円を超えるかが変わる場合がある。
- 国外事業者は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から給与での判定ができない。
次に知りたいこと
消費税の特定期間とは(特定期間の範囲と判定の手順)
消費税課税事業者届出書(特定期間用)の出し方
法人成りで消費税は2年免税になるか
よくある質問
- 特定期間の給与等支払額に役員報酬は入りますか?
- 所得税で給与所得になる役員報酬は、対象と考えます。給与所得は、使用人や役員に支払う給料や賞与などをいいます(出典:消費税法基本通達1-5-23、国税庁タックスアンサーNo.2508)。
- 通勤手当は給与等支払額に含めますか?
- 所得税が非課税の通勤手当や旅費などは含めません(出典:国税庁質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」)。
- 未払いの給与は数えますか?
- 数えません。特定期間中に支払った金額だけが対象です(出典:消費税法基本通達1-5-23(注)1)。
- 出向者の給与負担金は出向先で数えますか?
- 出向元が給与を支払い、支払明細書も出向元が交付する場合は、出向元の給与支払額になるため、出向先では数えません(出典:国税庁質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」)。
- 課税売上高と給与等支払額は、どちらで判定してもよいのですか?
- 国外事業者以外の事業者は、どちらで判定するかを選べます(出典:国税庁質疑応答事例「特定期間の判定」)。
公式一次情報
- 国税庁 質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」(給与等の金額の意味、非課税の通勤手当・旅費、未払額、出向の給与負担金。2026-10-15確認)
- 国税庁 質疑応答事例「特定期間の判定」(特定期間の範囲と、給与等支払額による判定。2026-10-15確認)
- 国税庁 消費税法基本通達1-5-23(特定期間における課税売上高とすることができる給与等の金額。2026-10-15確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.2508「給与所得となるもの」(役員に支払う報酬・手当が給与所得になること。2026-10-15確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」(国外事業者が給与等支払額で判定できない取扱い。2026-10-15確認)

