少数株主の権利を持株割合で整理(1%・3%・10%)
株式会社の株主が、持株の割合によって使える権利を一覧にしました。株主提案権、株主総会の招集請求、会計帳簿の閲覧請求、検査役の選任申立て、役員の解任の訴え、解散の訴えについて、必要な割合と、非公開会社で保有期間の条件が外れる点を、会社法の条文で整理します。
法人の運営共同経営者や家族に少しだけ株を持ってもらったとき、持株が少ない株主にも、会社法が認める権利があります。社長の側から見ると、どの割合を持った株主が何を請求できるのかを知らないまま株を渡すと、あとで困ることがあります。
この記事は、議決権の過半数や3分の2に届かない「少数株主」が使える主な権利を、必要な持株の割合ごとに整理します。過半数・3分の2・3分の1といった決議の判定は共同創業の出資比率と議決権で扱っています。対象は株式会社で、合同会社は扱いません。
権利と必要な割合の早見表
次の表は、会社法の本則に書かれた割合です。いずれも、定款でこれより低い割合を定めることができます。
| 権利 | 必要な持株(本則) | 条文 |
|---|---|---|
| 株主提案権(取締役会を置く会社) | 議決権の1%以上、または300個以上 | 303条2項 |
| 株主総会の招集請求 | 議決権の3%以上 | 297条1項 |
| 会計帳簿の閲覧・謄写の請求 | 議決権の3%以上、または発行済株式の3%以上 | 433条1項 |
| 業務の検査役の選任申立て | 議決権の3%以上、または発行済株式の3%以上 | 358条1項 |
| 役員の解任の訴え | 議決権の3%以上、または発行済株式の3%以上 | 854条1項 |
| 会社の解散の訴え | 議決権の10%以上、または発行済株式の10%以上 | 833条1項 |
3%の株主は、帳簿の閲覧、総会の招集、役員の解任の訴えのいずれにも手が届きます。これらの権利は、決議で多数を取れなくても使えるため、持株の割合を決めるときの目安になります。
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株主総会の招集請求と株主提案権
議決権の3%以上を持つ株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項と招集の理由を示して、株主総会の招集を請求できます(297条1項)。請求のあと遅滞なく招集の手続きが行われない場合などには、裁判所の許可を得て自分で招集することもできます(297条4項)。
株主提案権は、株主が一定の事項を株主総会の目的とすることを取締役に請求する権利です(303条1項)。取締役会を置く会社では、議決権の1%以上、または300個以上を持つ株主に限られます(303条2項)。取締役会を置かない会社の条文には、この割合の条件がありません。
議決権の数え方は、その事項について議決権を行使できない株主の議決権を、分母の総株主の議決権から除きます(297条3項・303条4項)。
会計帳簿の閲覧請求と検査役の選任
議決権の3%以上、または発行済株式(自己株式を除く)の3%以上を持つ株主は、会社の営業時間内なら、理由を明らかにして、いつでも会計帳簿とその資料の閲覧・謄写を請求できます(433条1項)。請求があったとき、会社は条文に定める拒否事由に当たる場合を除いて拒めません(433条2項)。拒める場合は会計帳簿の作成義務と株主の閲覧請求で扱っています。
業務の執行に不正の行為や法令・定款に違反する重大な事実があることを疑う事由があるときは、同じ3%以上の株主が、裁判所に検査役の選任を申し立てて、会社の業務と財産の状況を調べさせることができます(358条1項)。裁判所は、申立てを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければなりません(358条2項)。
役員の解任の訴えと解散の訴え
役員の職務執行に不正の行為や法令・定款に違反する重大な事実があるのに、解任の議案が株主総会で否決されたときなどは、議決権または発行済株式の3%以上を持つ株主が、その株主総会の日から30日以内に、訴えで役員の解任を請求できます(854条1項)。期間が短いため、否決された総会の日付を控えておきます。
会社の解散の訴えは、業務の執行が著しく困難で回復できない損害が生じるおそれがあるときや、財産の管理・処分が著しく失当で存立を危うくするときなど、やむを得ない事由がある場合に限り、議決権または発行済株式の10%以上を持つ株主ができます(833条1項)。解散の訴えの全体は株主による解散の訴えで扱っています。
割合を定款で下げられる点と数え方
表の割合は、いずれも「これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合」と条文に書かれています。つまり、定款で1%などに下げている会社があり得ます。持株を渡す前に、自社の定款を確かめます。
保有期間の条件も見ておきます。招集請求(297条1項)、株主提案権(303条2項)、役員の解任の訴え(854条1項)には、本則では議決権を6か月前から引き続き持っているという条件があります。公開会社でない株式会社では、この6か月の条件が外れ、持っていれば足ります(297条2項・303条3項・854条2項)。
発行する株式の全部について譲渡に会社の承認が必要という定款の定めがある会社は、公開会社ではありません(2条5号)。自社の定款の株式の譲渡制限の定めを確かめます。
この記事は条文の整理で、実際に請求や訴えを起こせるかどうかは、事案ごとに変わります。個別の判断は弁護士に確認してください。
まとめ
- 取締役会を置く会社の株主提案権は議決権の1%以上または300個以上。取締役会を置かない会社の条文には割合の条件がない。
- 3%以上の株主は、総会の招集請求、会計帳簿の閲覧、検査役の選任申立て、役員の解任の訴えができる。
- 会社の解散の訴えは10%以上の株主ができる。
- 割合は定款で下げられる。公開会社でない会社では、6か月の保有期間の条件が外れる。
よくある質問
- 議決権の3%を持つ株主は、何ができますか。
- 株主総会の招集請求、会計帳簿の閲覧・謄写の請求、検査役の選任申立て、役員の解任の訴えができます(出典:会社法297条・433条・358条・854条)。
- 株主提案権には、持株の割合の条件がありますか。
- 取締役会を置く会社では、議決権の1%以上または300個以上が必要です。取締役会を置かない会社の条文には、この条件がありません(出典:会社法303条1項・2項)。
- 非公開会社でも、6か月間持っていないと株主提案権を使えませんか。
- 公開会社でない取締役会設置会社では、6か月の保有期間の条件が外れ、持っていれば足ります(出典:会社法303条3項)。
- 会社の解散を裁判所に請求できる持株の割合はいくらですか。
- 議決権または発行済株式の10%以上を持つ株主が、やむを得ない事由がある場合に訴えで請求できます(出典:会社法833条1項)。
- 定款で、これらの割合を変えられますか。
- 本則の割合を下回る割合を定款で定めた場合は、その割合によると条文に書かれています(出典:会社法297条1項・303条2項・433条1項ほか)。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法」(2条・297条・303条・358条・433条・833条・854条。2026-11-03確認)
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