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会計帳簿の作成・保存義務と株主の閲覧請求(会社法432条・433条)

会社法は、会社に「適時に、正確な会計帳簿」を作る義務と、閉鎖から10年間の保存義務を定めています。株式会社では、議決権または発行済株式の3%以上を持つ株主が、理由を示して帳簿の閲覧・謄写を請求できます(会社法432条・433条)。

会社法432条・433条・615条
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

会計帳簿の保存というと、税務署向けの7年や10年を思い浮かべる人が多いはずです。ところが、会社法にも会計帳簿の作成と保存の定めがあり、税法とは別の根拠で動いています。

この記事は、会社法が会社に求める会計帳簿の作成・保存と、株主から閲覧を求められたときの扱いを整理します。税法側の保存期間は法人の帳簿・書類の保存期間で説明しています。

会計帳簿の作成義務(会社法432条1項・計算規則)

会社法432条1項は、株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならないと定めています。法務省令は会社計算規則です。

決まり内容根拠
作成の形書面または電磁的記録で作成する会社計算規則4条2項
資産の価額別段の定めがない限り、取得価額を付す会社計算規則5条1項
償却する資産事業年度の末日に、相当の償却をする会社計算規則5条2項
取り立てられないおそれのある債権事業年度の末日に、取り立てられないと見込まれる額を控除する会社計算規則5条4項

ここで言う会計帳簿は、仕訳帳や総勘定元帳など、決算書のもとになる記録です。決算書そのものの種類は決算書の種類と見方で整理しています。

保存義務は閉鎖の時から10年

432条2項は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存しなければならないと定めています。数える起点は作成した日ではなく、帳簿を閉鎖した時です。

  • 対象は、会計帳簿と「その事業に関する重要な資料」の2つ
  • 保存は、書面でも電磁的記録でもよい(作成の形が両方認められているため)
  • 税法の保存期間とは別の定めで、両方を満たす必要がある

電子データで保存する場合の税法側の要件は電子帳簿保存法で確認できます。

株主の閲覧・謄写請求(会社法433条)

433条1項によると、次のどちらかを満たす株主は、会社の営業時間内、いつでも会計帳簿の閲覧または謄写を請求できます。

  • 総株主の議決権の100分の3以上を持つ株主(議決権を行使できない株主は総株主から除く)
  • 発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上を持つ株主

どちらも、定款で3%より低い割合を定めた場合は、その割合になります。請求は、理由を明らかにしてしなければなりません。帳簿が書面なら書面の閲覧・謄写、電磁的記録なら表示したものの閲覧・謄写を請求します。

請求の可否は個別の事情で変わるため、個別の事案は弁護士に確認してください。株主名簿の備え置きや閲覧は株主名簿の作成と備え置きで説明しています。

会社が請求を拒める場合

433条2項は、会社は次のいずれかに当てはまると認められる場合を除き、請求を拒めないと定めています。つまり、拒めるのは次の5つの場合だけです。

拒める場合号
権利の確保・行使に関する調査以外の目的で請求したとき1号
会社の業務を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求したとき2号
請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事しているとき3号
閲覧で知った事実を、利益を得て第三者に通報するために請求したとき4号
過去2年以内に、閲覧で知った事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき5号

親会社の社員は、権利の行使に必要があるときは、裁判所の許可を得て同じ請求ができます(433条3項)。ただし、2項の事由があるときは、裁判所は許可できません(433条4項)。

裁判所の提出命令・過料

訴訟になった場合、裁判所は、申立てにより、または職権で、訴訟の当事者に会計帳簿の全部または一部の提出を命じることができます(会社法434条)。

会計帳簿に記載・記録すべき事項を記載しなかったり、虚偽の記載をしたりしたときは、取締役などに100万円以下の過料が科されることがあります(会社法976条7号)。ただし、その行為について刑を科すべきときは過料の対象になりません。

合同会社の場合

合同会社などの持分会社にも、同じ内容の作成・保存の定めがあります。持分会社は、適時に正確な会計帳簿を作成し、閉鎖の時から10年間、その会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存しなければなりません(会社法615条)。裁判所の提出命令も同様です(会社法616条)。

株主の3%要件による433条の請求は株式会社の定めです。合同会社の社員が見られる範囲は別の条文に分かれているため、この記事の対象外です。会社の形による違いは合同会社と株式会社の違いで比べられます。

公式一次情報

よくある質問

会社法では、会計帳簿をいつまで保存しますか?
会計帳簿の閉鎖の時から10年間です。会計帳簿と、その事業に関する重要な資料を保存します(会社法432条2項)。
株主は会社の帳簿を見られますか?
議決権または発行済株式の3%以上(定款で下げた場合はその割合)を持つ株主は、理由を明らかにして、営業時間内に閲覧・謄写を請求できます(会社法433条1項)。
会社は株主の閲覧請求を断れますか?
調査目的以外、会社の業務を妨げる目的、競業者、利益を得て第三者に通報する目的などの5つの場合に限り拒めます。それ以外は拒めません(会社法433条2項)。
帳簿は電子データで保存してもよいですか?
会計帳簿は書面または電磁的記録で作成するとされています(会社計算規則4条2項)。税法上の電子保存の要件は別に確認が必要です。
合同会社にも会計帳簿の作成義務はありますか?
あります。持分会社にも、適時に正確な会計帳簿を作成し、閉鎖の時から10年間保存する義務があります(会社法615条)。

まとめ

閲覧請求のほかに、持株の割合で使える株主の権利は少数株主の権利を持株割合で整理で扱っています。

  • 会社は、適時に正確な会計帳簿を作成し、閉鎖の時から10年間保存する義務がある。
  • 3%以上の株主は、理由を示して帳簿の閲覧・謄写を請求でき、会社が拒めるのは法定の5つの場合だけ。
  • 合同会社にも作成・保存の義務はあるが、株主の閲覧請求は株式会社の定め。

次に知りたいことは、法人の帳簿・書類の保存期間、法人の書類の保存期間一覧、株主名簿の作成と備え置きです。

本記事について。税理士監修前の概説です。個別の閲覧請求への対応や拒否の可否は含めていません。個別の判断は弁護士・税理士にご確認ください。