法人の決算書の種類と見方:貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表
法人が決算で作る書類の種類と、それぞれに何が書かれているかを、会社法・会社計算規則・法人税法の条文で整理します。作成義務、承認の手順、法人税の申告に添える書類もあわせて確認します。
決算株式会社は、各事業年度について、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つの計算書類と、事業報告、これらの附属明細書を作る必要があります(会社法435条2項、会社計算規則59条1項)。合同会社は、貸借対照表と、損益計算書、社員資本等変動計算書、個別注記表です(会社法617条2項、会社計算規則71条1項2号)。
決算書は、貸借対照表が決算日の財産の状態、損益計算書が1年間の成績、株主資本等変動計算書が純資産の動き、個別注記表が数字の前提を示す、という役割で読み分けると整理しやすくなります。法人成りしたあとの最初の決算に向けて、書類の名前と役割を押さえるための記事です。
決算書の種類と役割
| 書類 | 何がわかるか | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表 | 決算日時点の資産・負債・純資産 | 作成 | 作成 |
| 損益計算書 | 1事業年度の収益・費用・利益 | 作成 | 作成 |
| 株主資本等変動計算書(合同会社は社員資本等変動計算書) | 純資産の各項目が1年間でどう動いたか | 作成 | 作成 |
| 個別注記表 | 会計方針などの数字の前提 | 作成(項目は省略可) | 作成(項目は省略可) |
| 事業報告・附属明細書 | 事業の状況の説明、計算書類の補足 | 作成 | 条文上の作成義務は計算書類のみ |
計算書類は当該事業年度の会計帳簿にもとづいて作ります(会社計算規則59条3項・71条3項)。日々の帳簿づけは勘定科目の基本、決算全体の流れは法人の決算と申告で扱っています。
貸借対照表:資産・負債・純資産
貸借対照表は、資産の部、負債の部、純資産の部に区分して表示します(会社計算規則73条1項)。左側に預金や売掛金などの資産、右側に借入金や未払金などの負債と、資本金や利益の蓄積などの純資産を並べ、決算日にどれだけの財産があり、その元手が借入か自己資金かを見る書類です。
株式会社は、成立の日の貸借対照表も作ります(会社法435条1項)。設立1期目の期首の姿を示すものです。
損益計算書:利益が段階ごとに出る
損益計算書は、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外収益、営業外費用、特別利益、特別損失の項目に区分して表示します(会社計算規則88条1項)。区分ごとに差し引いていくので、本業の利益と本業以外の損益、臨時の損益を分けて読めます。
| 項目 | 入る内容の例 |
|---|---|
| 売上高・売上原価 | 本業の売上と、その売上に直接かかった原価 |
| 販売費及び一般管理費 | 役員報酬、給料、家賃、通信費など |
| 営業外収益・営業外費用 | 受取利息、支払利息など本業以外 |
| 特別利益・特別損失 | 固定資産売却損益など臨時のもの |
項目の例は、規則に例示された区分名と、一般的な科目の目安です。実際にどの科目に入れるかは、会社の会計処理の方針で決まります。
株主資本等変動計算書と個別注記表
株主資本等変動計算書は、株主資本、評価・換算差額等、株式引受権、新株予約権の項目に区分します。株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式などに分かれ、それぞれ当期首残高、当期変動額、当期末残高を明らかにします(会社計算規則96条)。当期の利益が利益剰余金にどう加わり、配当などでどう減ったかを追う書類です。
個別注記表は、継続企業の前提、重要な会計方針、会計方針の変更など、規則98条1項に22の項目が並びます。会計監査人を置かない非公開の株式会社は、継続企業の前提、貸借対照表等・損益計算書に関する注記、税効果会計など多くの項目の表示が不要です(同条2項1号)。表示が必要な項目には、重要な会計方針に関する注記などが残ります。
持分会社の個別注記表も、規則98条2項5号で表示を要しない項目が定められています。
承認・保存・公告と法人税の申告
決算書の作成後の手順は、会社法の定めで次のようになります。
| 手順 | 株式会社の定め |
|---|---|
| 承認 | 取締役は計算書類と事業報告を定時株主総会に提出し、計算書類は総会の承認を受ける(会社法438条)。監査役や取締役会を置く場合は、提出前に監査や取締役会の承認が入る |
| 保存 | 計算書類と附属明細書を作成した時から10年間保存(会社法435条4項)。持分会社の計算書類も10年間(会社法617条4項) |
| 公告 | 定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告(会社法440条1項) |
法人税の確定申告は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行い、申告書には貸借対照表、損益計算書その他の書類を添付します(法人税法74条1項・3項)。法人税法施行規則35条1項は、貸借対照表と損益計算書、株主資本等変動計算書または社員資本等変動計算書または損益金の処分表、勘定科目内訳明細書、事業等の概況に関する書類などを挙げています。帳簿書類の保存は法人の帳簿書類の保存期間、電子での保存は電子帳簿保存法の基本で扱っています。
申告期限を延ばす特例は法人の申告期限の延長特例を参照してください。
まとめ
- 株式会社の計算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表。合同会社は損益計算書、社員資本等変動計算書、個別注記表と貸借対照表。
- 貸借対照表は資産・負債・純資産、損益計算書は売上高から特別損失までの区分、株主資本等変動計算書は純資産の動き、個別注記表は数字の前提を示す。
- 会計監査人を置かない非公開の株式会社は、個別注記表の多くの項目を省略できる。
- 計算書類は10年間保存し、株式会社は定時株主総会の承認と貸借対照表の公告が必要。法人税の申告には決算書と勘定科目内訳明細書などを添える。
公式一次情報
- 会社法 第435条・第438条・第440条・第617条(計算書類の作成・保存、定時株主総会の承認、貸借対照表の公告。2026-10-07確認)
- 会社計算規則 第59条・第71条・第73条・第88条・第96条・第98条(計算書類の範囲、各書類の区分、注記表の省略。2026-10-07確認)
- 法人税法 第74条(確定申告と決算書の添付。2026-10-07確認)
- 法人税法施行規則 第35条(確定申告書の添付書類。2026-10-07確認)
よくある質問
- 決算書は何の書類を指しますか?
- 会社法では計算書類といい、株式会社は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を作ります。事業報告と附属明細書も作ります。
- 合同会社でも貸借対照表と損益計算書は必要ですか?
- 必要です。合同会社は貸借対照表に加え、損益計算書、社員資本等変動計算書、個別注記表を作ります。
- 個別注記表はすべての項目を書く必要がありますか?
- 会計監査人を置かない非公開の株式会社は、継続企業の前提、貸借対照表等・損益計算書に関する注記、税効果会計などの項目の表示を要しません。重要な会計方針などは表示が必要です。
- 決算書は何年保存しますか?
- 会社法は、計算書類を作成した時から10年間の保存を求めています。税務の帳簿書類の保存期間は別の定めなので、保存期間のガイドで確認してください。
- 法人税の申告には、どの決算書を添付しますか?
- 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など、勘定科目内訳明細書、事業等の概況に関する書類などです(法人税法施行規則35条)。