特例有限会社から株式会社への移行|商号変更の決議要件と2週間以内の登記
有限会社は新しくつくれませんが、会社法の施行前につくられた有限会社は「特例有限会社」として続いています。この会社が株式会社になるときの手続きを、会社法の整備法45条・46条、14条3項、会社法466条・309条の条文で整理します。
会社の運営特例有限会社は、株式会社への移行を義務づけられていません。移行するかどうかは会社が決めます。移行するときは、定款を変更して商号に「株式会社」を使い、本店の所在地で2週間以内に登記をします。
| 手順 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 移行の判断 | 移行は任意。移行しない特例有限会社は、商号に「有限会社」を使い続ける | 整備法2条・3条 |
| 2. 株主総会の決議 | 定款を変更して、商号に「株式会社」を使う | 整備法45条1項 |
| 3. 決議の要件 | 総株主の半数以上、かつ議決権の4分の3以上 | 整備法14条3項 |
| 4. 本店での登記 | 決議から2週間以内に、解散の登記と設立の登記 | 整備法46条 |
| 5. 効力の発生 | 本店の所在地での登記によって、定款変更の効力が生じる | 整備法45条2項 |
特例有限会社とは
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、整備法)2条1項は、会社法の施行の際に存在していた旧有限会社を、会社法による株式会社として存続させると定めています。旧有限会社の社員は株主、持分は株式、出資一口は一株とみなされます(同条2項)。
整備法3条1項は、この存続する株式会社に、商号中に「有限会社」の文字を使うよう求めています。これを整備法は「特例有限会社」と呼んでいます。
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移行は任意
整備法45条1項は、特例有限会社は、定款を変更して商号中に「株式会社」の文字を使う商号の変更を「することができる」と定めています。移行を義務とする規定ではありません。
移行しない場合は、特例有限会社のまま続けられます。特例有限会社には決算公告が不要という整備法の特例があります。決算公告の扱いは特例有限会社は決算公告が不要で整理しています。
株主総会の決議要件
株式会社の定款変更は、会社法466条で株主総会の決議によると定められています。会社法309条2項11号により、この決議は特別決議です。
特例有限会社の特別決議の要件は、整備法14条3項が別に定めています。会社法309条2項の「議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2」という要件の代わりに、次の要件になります。
- 総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めたときは、その割合以上)であること。
- その株主の議決権の4分の3以上であること。
株主の人数と議決権の数の両方が条件なので、議決権を多く持つ株主が賛成しても、人数が足りなければ決議は成立しません。決議の内容は、商号を株式会社を使うものに変える定款変更です。
登記の期限と効力が生じる時
整備法46条は、特例有限会社が株式会社への商号変更の定款変更を決議したときは、2週間以内に、本店の所在地で次の2つの登記をするよう定めています。
- 特例有限会社:解散の登記。
- 商号変更後の株式会社:設立の登記。
定款変更の効力は、この登記(本店の所在地におけるものに限る)をすることによって生じます(整備法45条2項)。決議をしただけでは、商号は変わりません。
登録免許税法17条の3は、この設立の登記を、別表第一第24号(一)ホの「組織変更による株式会社の設立の登記」とみなして税額を定めると書いています。登録免許税の金額は、申請の時点の法務局の案内で確認してください。
移行後の商号の決まり
整備法3条2項は、特例有限会社が、特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社、合同会社と誤認されるおそれのある文字を商号に使うことを禁じています。逆に、3項は、特例有限会社以外の株式会社などが、特例有限会社と誤認される文字を商号に使うことを禁じています。
違反して、他の種類の会社と誤認されるおそれのある文字を商号に使った人は、100万円以下の過料に処せられます(同条4項)。移行後の商号を決めるときは、誤認されるおそれのある文字が入っていないかを確かめてください。
移行後に変わること
移行後は、特例有限会社に適用されていた整備法の特例が使えなくなります。たとえば、整備法14条3項の特別決議の要件は、特例有限会社の株主総会だけに適用されます。移行後は、会社法309条2項の特別決議の要件になります。
決算公告の義務も、特例有限会社のときの特例から外れます。株式会社の決算公告の仕方は決算公告の方法と費用で確認できます。株式の譲渡制限の有無で公開会社か非公開会社かが決まる点は、公開会社と非公開会社の違いで整理しています。
移行の前に選任した役員の任期の扱いは、株式会社へ商号変更するときで法務省の注意を紹介しています。
会社を畳む場合の手続きは特例有限会社の解散と清算にあります。
次に知りたいこと
特例有限会社は決算公告が不要:整備法28条と株式会社への移行後
公開会社と非公開会社の違い:株式の譲渡制限と機関設計
特例有限会社の解散と清算:決議要件・みなし解散・特別清算
公式情報
- e-Gov法令検索「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(2条・3条の特例有限会社、14条3項の決議要件、45条・46条の株式会社への商号変更と登記。2026年10月31日確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(466条の定款の変更、309条2項の特別決議。2026年10月31日確認)
- e-Gov法令検索「登録免許税法」(17条の3の移行の登記の扱い。2026年10月31日確認)
まとめ
- 特例有限会社が株式会社になるかどうかは任意。
- 移行は、定款を変更して商号に「株式会社」を使う形で行う。
- 決議は、総株主の半数以上かつ議決権の4分の3以上(整備法14条3項)。
- 決議から2週間以内に、本店で解散の登記と設立の登記をする。
- 定款変更の効力は、本店での登記によって生じる。
よくある質問
- 特例有限会社は、株式会社に移行しなければなりませんか?
- しなくても構いません。整備法45条1項は、定款を変更して株式会社の商号に変更「することができる」と定めており、義務ではありません。
- 株式会社への移行には、株主総会の決議が必要ですか?
- 必要です。定款の変更は株主総会の特別決議によります。特例有限会社の特別決議は、総株主の半数以上で、議決権の4分の3以上の賛成が要件です(整備法14条3項)。
- 登記はいつまでにしますか?
- 決議をしたときから2週間以内に、本店の所在地で、特例有限会社の解散の登記と株式会社の設立の登記をします(整備法46条)。
- 決議をすれば、すぐに商号が株式会社になりますか?
- なりません。定款変更の効力は、本店の所在地で登記をすることによって生じます(整備法45条2項)。
- 登録免許税はいくらですか?
- 登録免許税法17条の3は、移行の設立の登記を、組織変更による株式会社の設立の登記とみなして税額を定めています。金額は、申請時点の法務局の案内で確認してください。

