特例有限会社は決算公告が不要|整備法28条と株式会社への移行後
「有限会社」の名前を残している会社に、決算公告の義務があるかを整理します。結論は不要です。根拠の条文と、不要にならない書類の備え置き、株式会社へ変えたあとの扱いをまとめます。
会社法・整備法会社名に「有限会社」と付く会社は、会社法の上では特例有限会社という株式会社です。株式会社は毎年、決算公告をするのが原則ですが、特例有限会社には会社法440条を適用しないと整備法に定められています。
有限会社は今も存在するのか
有限会社という会社の種類は、会社法の施行に伴う整備法でなくなりました。法務省のQ&Aによると、施行日に存在した有限会社は株式会社として存続し、これを「特例有限会社」と呼びます(整備法2条・3条)。
- 特例有限会社は、商号の中に「有限会社」という文字を使う必要があります(整備法3条1項)。
- 新しく有限会社を設立することはできません。今あるのは、施行日に存在した会社だけです。
- 株式会社であるため、会社法の規定が原則として適用されます。例外は整備法が個別に定めています。
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決算公告が不要になる条文
整備法28条は、特例有限会社について会社法440条(計算書類の公告)と442条2項の規定を適用しないと定めています。
| 条文 | 内容 | 特例有限会社 |
|---|---|---|
| 会社法440条 | 定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は貸借対照表と損益計算書)を公告する | 適用しない(公告は不要) |
| 会社法442条2項 | 計算書類等の写しを、支店に3年間備え置く | 適用しない(支店への備え置きは不要) |
決算公告を怠ると、会社法976条2号により100万円以下の過料の対象になります。特例有限会社は、公告の義務がそもそも生じないため、この過料の対象になりません。
株式会社の決算公告の方法や費用は決算公告とはで、合同会社が対象外である理由もあわせて整理しています。
公告は不要でも書類の備え置きは必要
整備法28条が外しているのは、440条と442条2項だけです。本店への備え置きを定める442条1項は、特例有限会社にも適用されます。
- 各事業年度の計算書類、事業報告、附属明細書は、定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社は2週間)前の日から5年間、本店に備え置きます(会社法442条1項1号)。
- 株主と債権者は、営業時間内であればいつでも、書類の閲覧などを請求できます(会社法442条3項)。謄本や抄本の交付などは、会社が定めた費用の支払いが要ります。
つまり、官報などで広く知らせる義務はなくなっても、株主や債権者から請求されたら見せる義務は残ります。
株式会社へ商号変更するとき
特例有限会社は、定款を変更して商号に「株式会社」の文字を使えば、通常の株式会社になれます(整備法45条1項)。法務省のQ&Aでは、株主総会で商号変更の定款変更を決議し、株式会社の設立登記と特例有限会社の解散登記を申請するとされています。
- 登記は、株主総会の決議から2週間以内に、本店の所在地で行います(整備法46条)。
- 通常の株式会社になれば、整備法28条の特則の対象ではなくなります。この場合、会社法440条の決算公告が原則として必要です。
- 商号変更の前に選任した役員の任期は、有限会社で選任した日から数えます。法務省は、商号変更の効力が生じると同時に任期が満了することがあり、改めて選任しないと選任懈怠になると注意しています。
株式会社になったあとの公告方法の決め方は公告方法の変更手続きにまとめています。移行によって決算公告の費用が増える点は、変更の前に見込んでおくと判断を誤りません。
次に知りたいこと
決算公告とは:公告の方法・費用・怠った場合の過料
決算公告に載せる貸借対照表の要旨:要旨で足りる会社と載せる項目
公告方法の変更手続き:官報から電子公告へ変えるときの登記
特例有限会社の解散と清算:決議要件・みなし解散・特別清算の違い
法人の運営と解散のまとめ:決算公告・休眠・清算を一覧で確認
まとめ
- 「有限会社」の会社は、特例有限会社という株式会社として存続している。
- 整備法28条により、会社法440条の決算公告は特例有限会社に適用されない。
- 本店への計算書類の備え置き(5年間)と、株主・債権者の閲覧請求への対応は残る。
- 株式会社へ商号変更すると、特則の対象外になり、決算公告が原則として必要になる。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(2条・3条 特例有限会社、28条 計算書類の公告等の適用除外、45条・46条 株式会社への移行)
- e-Gov法令検索「会社法」(440条 計算書類の公告、442条 計算書類等の備置き及び閲覧、976条 過料)
- 法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」(特例有限会社の位置づけ、通常の株式会社への移行手続、役員の任期)
よくある質問
- 有限会社でも決算公告をする必要がありますか?
- 特例有限会社には、会社法440条の計算書類の公告は適用されません(出典:整備法28条)。
- 決算公告が不要なら、決算書を誰にも見せなくてよいのですか?
- いいえ。計算書類などは本店に5年間備え置き、株主と債権者から閲覧の請求があれば応じます(出典:会社法442条1項・3項。整備法28条が外すのは442条2項だけです)。
- 株式会社に商号変更すると、決算公告は必要になりますか?
- 通常の株式会社になるため、整備法28条の特則の対象ではなくなります。会社法440条の決算公告が原則として必要です。
- 特例有限会社から株式会社への移行登記の期限はいつですか?
- 商号変更の決議をした株主総会から2週間以内に、本店の所在地で解散登記と設立登記をします(出典:整備法46条)。
- 合同会社も決算公告が不要ですか?
- 会社法440条は株式会社を対象にした条文であり、合同会社には義務がありません。詳しくは決算公告とはを見てください。

