決算公告の貸借対照表の要旨に載せる項目|単位・当期純損益の付記
官報や日刊新聞紙で決算公告をする株式会社は、貸借対照表の全部ではなく「要旨」を載せれば足ります(会社法440条2項)。要旨に載せる区分、金額の単位、付記する事項は、会社計算規則137条から145条が定めています。
会社法440条・会社計算規則137〜145条決算公告をすることになったとき、貸借対照表を丸ごと官報に載せるのか、どこまで省けるのかで迷う人は多いはずです。条文では、省いてよい範囲ではなく、要旨に必ず入れる区分が決められています。
この記事は、e-Govの条文にもとづいて、貸借対照表の要旨に載せる区分、金額の単位、付記事項を整理します。誰に義務があるか、公告の方法、過料は決算公告の基本で説明しています。
要旨で足りる会社と、全文が必要な会社
会社法440条1項は、株式会社に、定時株主総会の終結後遅滞なく貸借対照表を公告するよう求めています。2項は、公告方法が官報または日刊新聞紙のときに限り、貸借対照表の要旨を公告すれば足りると定めています(会社法939条1項1号・2号)。
| 定款の公告方法 | 決算公告で載せるもの |
|---|---|
| 官報に掲載 | 貸借対照表の要旨でよい |
| 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙 | 貸借対照表の要旨でよい |
| 電子公告 | 要旨は使えず、貸借対照表の全文が必要 |
定款に公告方法の定めがない会社の公告方法は官報です(会社法939条4項)。電子公告を選んだ場合の扱いは、末尾の「次に知りたいこと」で案内しています。
この記事の内容を申告書に落とすときの本PR
決算と申告の流れを、設立後の小さな会社の立場で確かめたいとき向けです。
要旨に載せる3つの部と主な項目
貸借対照表の要旨は、資産・負債・純資産の3つの部に区分します(会社計算規則138条)。各部の中の項目は次のとおりです。
| 部 | 区分する項目 | 条文 |
|---|---|---|
| 資産の部 | 流動資産・固定資産・繰延資産 | 139条1項 |
| 負債の部 | 流動負債・固定負債 | 140条1項 |
| 純資産の部 | 株主資本・評価・換算差額等・株式引受権・新株予約権 | 141条1項 |
- 資産の部と負債の部の各項目は、適当な項目に細分してよい(139条2項・140条3項)
- 負債に係る引当金があるときは、引当金ごとに他の負債と区分する(140条2項)
- 各項目には、その資産や負債を示す適当な名称を付ける(139条5項・140条5項)
- 公開会社は、固定資産を有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に区分し、各項目を重要なものに細分する(139条3項・4項、140条4項)
公開会社でない株式会社には、固定資産の3区分の義務は条文上ありません。ただし、財産の状態を示す名称の付け方は、公開会社でない会社にも求められます。
純資産の部の項目
141条は、純資産の部を細かく定めています。株主資本は次の項目に区分します(141条2項)。
| 株主資本の項目 | さらに区分する項目 |
|---|---|
| 資本金 | - |
| 新株式申込証拠金 | - |
| 資本剰余金 | 資本準備金・その他資本剰余金(141条3項) |
| 利益剰余金 | 利益準備金・その他利益剰余金(141条4項) |
| 自己株式(控除項目) | - |
| 自己株式申込証拠金 | - |
その他資本剰余金とその他利益剰余金は、適当な名称を付した項目に細分できます(141条5項)。評価・換算差額等は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金などに細分します(141条6項)。
貸借対照表そのものの構成は、決算書の種類と見方でも確認できます。
当期純損益金額の付記・金額の単位・言語
要旨には、区分のほかに次の定めがあります。
| 項目 | 定め | 条文 |
|---|---|---|
| 当期純損益金額 | 付記する。損益計算書の要旨を公告する場合は不要 | 142条 |
| 金額の単位 | 百万円単位または十億円単位で表示する | 144条1項 |
| 単位の例外 | 会社の財産や損益の状態を的確に判断できなくなるおそれがあるときは、適切な単位で表示する | 144条2項 |
| 表示する言語 | 日本語。他の言語で表示しても不当でないときは例外 | 145条 |
百万円単位では会社の状態を判断しにくい場合に、適切な単位を選ぶ根拠が144条2項です。具体的な単位や書式は、公告を申し込む官報販売所などの案内に従ってください。
大会社は損益計算書の要旨も載せる
会社法440条1項は、大会社に、貸借対照表と損益計算書の両方を公告するよう求めています。大会社とは、最終事業年度の貸借対照表で、資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の株式会社です(会社法2条6号)。
要旨で公告する大会社は、損益計算書の要旨を次の項目に区分します(会社計算規則143条1項)。
- 売上高
- 売上原価
- 売上総利益金額または売上総損失金額
- 販売費及び一般管理費
- 営業外収益
- 営業外費用
- 特別利益
- 特別損失
営業外収益と営業外費用、または特別利益と特別損失は、金額が重要でないときに限り、差額を営業外損益や特別損益としてまとめられます(143条2項・3項)。損益計算書の要旨を公告するときは、貸借対照表の要旨への当期純損益金額の付記は要りません(142条ただし書き)。
自社が大会社に当たらない場合は、貸借対照表の要旨だけを準備します。計算書類の備置きと閲覧請求は別の定めです。
公式一次情報
よくある質問
- 決算公告は貸借対照表の全部を載せる必要がありますか?
- 公告方法が官報または日刊新聞紙なら、貸借対照表の要旨で足ります。電子公告の場合は要旨が使えず、全文が必要です(会社法440条2項)。
- 貸借対照表の要旨には何を付記しますか?
- 当期純損益金額を付記します。ただし、損益計算書の要旨を公告する場合は不要です(会社計算規則142条)。
- 要旨の金額は千円単位で書けますか?
- 原則は百万円単位または十億円単位です。ただし、会社の財産や損益の状態を的確に判断できなくなるおそれがあるときは、適切な単位で表示するよう定められています(会社計算規則144条)。
- 損益計算書も公告するのはどんな会社ですか?
- 大会社です。資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の株式会社が当たります(会社法440条1項・2条6号)。
- 純資産の部には何を載せますか?
- 株主資本、評価・換算差額等、株式引受権、新株予約権に区分します。株主資本はさらに資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式などに区分します(会社計算規則141条)。
まとめ
- 官報または日刊新聞紙で公告する株式会社は、貸借対照表の要旨でよい。電子公告は全文が必要。
- 要旨は、資産・負債・純資産の3部に区分し、当期純損益金額を付記する。
- 金額は百万円単位か十億円単位が原則で、判断に支障があるときは適切な単位にする。
- 大会社は、損益計算書の要旨も公告する。
次に知りたいことは、決算公告の基本、他社の決算公告の探し方、公告方法の変更、計算書類の備置きと閲覧請求、特例有限会社の決算公告です。

