YouTuber・動画配信者の法人成り判断(広告収益の所得区分・米国税務情報・外国税額控除)
動画の広告収益を受け取っている人が、法人にする前に確認したい点を、所得の区分・米国の税務情報と源泉徴収・外国税額控除・消費税の4点で整理します。
国税庁・YouTubeヘルプの情報動画配信の収益は、米国の会社が源泉徴収の義務者になる点が、国内の事業と大きく違います。法人にする前に、収益の受け取り方と税の扱いを分けて確認します。
法人成りの一般的な判断は法人成りのガイドに、副業の所得区分は事業所得と雑所得の違いにまとめています。ここでは、動画配信者に特有の点に絞ります。
4つの分岐の早見表
| 分岐 | 確認すること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 事業所得か雑所得か。雑所得の損失は損益通算できない | 所得区分 |
| 米国の税務情報 | 提出の期限・有効期間・アカウントの種類 | 源泉徴収 |
| 外国税額控除 | 外国で課された所得税相当の税を日本の所得税額から差し引けるか | 外国税額控除 |
| 消費税 | 海外の支払元との取引の扱い | 消費税 |
広告収益の所得区分
国税庁のNo.1500は、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係る雑所得」としています。所得税基本通達35-2の注は、事業所得と認められるかどうかを、活動が社会通念上事業と称するに至る程度かで判定し、帳簿書類の保存がない場合は、業務に係る雑所得に該当することに留意するとしています。ただし、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は除かれます。
No.1500には、雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得と損益通算できないとあります。機材や編集の費用が収益を上回っても、会社員の給与とは相殺できません。
動画配信の収益が、通達35-2に例示された所得(原稿料、著作権の使用料など)のどれに当たるかは、収益の種類で変わります。判断に迷う場合は税務署に確認してください。
米国の税務情報と源泉徴収
YouTubeヘルプ「YouTubeでの収益に関する米国の税務要件」は、次の点を案内しています。
- 税務フォームの提出と、租税条約の恩典の申請(対象者のみ)は、毎年12月10日までに完了する。
- 税務フォームは、署名した年の翌年から3暦年目の最終日に期限切れになるため、数年に一度は再提出が必要。
- 米国外のクリエイターが税務情報を提出した場合、源泉徴収率は米国の視聴者から生じた収益の0〜30%で、居住国が米国と租税条約を結んでいるかで変わる。
- 提出しない場合の最大税率は、アカウントの種類がビジネスで受取人が米国外に居住なら米国で得た収益の30%、個人なら予備の源泉徴収として全世界の総収益の24%。
このように、アカウントの種類(個人かビジネスか)が、未提出時の税率を左右します。法人にして収益の受取人を変える場合は、税務フォームとアカウントの設定も合わせて見直す必要があります。
具体的な手続きは、YouTube向けAdSenseの画面とヘルプで確認してください。YouTubeとGoogleは税金の助言を行わないとされており、租税条約の恩典の可否は税理士に確認するよう案内されています。
外国税額控除
国税庁のNo.1240によると、居住者が外国の法令により所得税に相当する租税を納付することになる場合、控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引けます。控除限度額は、その年分の所得税額に、調整国外所得金額が所得総額に占める割合を掛けて計算します。
一方、納付後に任意で還付を請求できる税などは、外国所得税に含まれないとされています。源泉徴収された額が控除の対象になるかは、源泉徴収の内容を確認したうえで判断してください。法人の場合の扱いは、個人とは別に確認が必要です。
消費税の扱い
海外の会社から支払いを受ける場合や、海外のサービスを使う場合の消費税は、海外クライアント・海外サービス利用時の消費税で整理しています。個人事業者の納税義務の免除は、前々年の課税売上高が1,000万円以下であることが原則で、適格請求書発行事業者の登録をしていれば免除されません(国税庁No.6501)。登録の判断は「インボイスに登録すべきか」で、法人にする場合の消費税は法人成りと消費税の免税で確認してください。
動画配信は、支払元の国や契約の相手によって、消費税の扱いが変わる可能性があります。契約書や請求の相手を確認してください。
公式一次情報
- 国税庁「No.1500 雑所得」(業務に係る雑所得、損益通算の不可)
- 国税庁「法第35条《雑所得》関係」(所得税基本通達35-2)(事業所得と認められる判定と帳簿書類の保存)
- 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」(控除限度額と外国所得税の範囲)
- 国税庁「No.6501 納税義務の免除」(基準期間1,000万円と適格請求書発行事業者の登録)
- YouTubeヘルプ「YouTubeでの収益に関する米国の税務要件」(提出期限・有効期間・源泉徴収率。公的機関ではなく事業者の案内)
まとめ
- 広告収益が業務に係る雑所得になると、損失を他の所得と損益通算できない。帳簿の保存と収入の規模を確認する。
- 米国の税務情報は、居住地を問わず提出が求められ、期限は毎年12月10日、有効期間は3暦年目まで。法人の場合の扱いはヘルプで確認する。
- 未提出時の税率は、アカウントの種類(個人・ビジネス)で変わる。
- 外国で課された所得税相当の税は、控除限度額の範囲で日本の所得税額から差し引ける場合がある。
よくある質問
- 動画の広告収益は、事業所得と雑所得のどちらですか?
- 活動が社会通念上事業と称するに至る程度かで判定し、帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得とされます(出典:国税庁 所得税基本通達35-2)。
- 法人にすれば、米国の税務情報は不要になりますか?
- YouTubeヘルプは、居住地を問わず収益化するすべてのクリエイターに提出を求めており、ビジネスのアカウントでも未提出時の税率が定められています。法人の場合の個別の扱いはヘルプで確認してください(出典:YouTubeヘルプ)。
- 税務情報を出さないとどうなりますか?
- 最大税率で源泉徴収される可能性があります。ビジネスのアカウントで米国外に居住する場合は米国で得た収益の30%、個人の場合は全世界の総収益の24%とされています(出典:YouTubeヘルプ)。
- 米国で源泉徴収された税は取り戻せますか?
- 外国所得税に当たる場合、控除限度額を限度として、日本の所得税額から差し引ける場合があります(出典:国税庁 No.1240)。
- 雑所得で赤字になったら、給与と相殺できますか?
- できません。雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得の金額と損益通算できません(出典:国税庁 No.1500)。