ガイド

個人の青色申告の承認が取り消される3つの場合(所得税法150条)

税務署長が個人の青色申告の承認を取り消せる3つの事由、取り消された年分の扱い、書面での通知、取消し後に再び申請するときの制限を、所得税法の条文で整理します。

所得税法の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

個人事業主が青色申告の承認を受けていても、帳簿の備付けや記録が決まりどおりでないなどの事実があると、税務署長が承認を取り消すことがあります。取消しの事由は、所得税法150条1項に3つ定められています。

取消しは、事由のあった年までさかのぼって行われ、その年分以後に出した青色申告書は青色以外の申告書とみなされます。自分で青色をやめる「取りやめ」とは別の手続きです。

取消しの3つの事由

所得税法150条1項は、青色申告の承認を受けた居住者に次のいずれかの事実があるとき、納税地の所轄税務署長が承認を取り消すことができると定めています。「できる」という書き方で、事由に当たれば必ず取り消されるという意味ではありません。

号事由(条文の要旨)さかのぼる年
1号不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務に係る帳簿書類の備付け・記録・保存が、財務省令の定めに従って行われていないその事実のあった年
2号その帳簿書類について、税務署長が148条2項に基づいてした指示に従わなかったその指示に従わなかった年
3号帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺいし、または仮装して記載・記録した、その他、記載・記録した事項全体の真実性を疑うに足りる相当の理由があるその事実のあった年

3つに共通するのは、いずれも帳簿書類に関する事由だという点です。申告の期限に遅れた、納税が遅れたといったことは、150条1項の事由として列挙されていません。

2号の「指示」は、148条2項が定める税務署長の権限です。税務署長は、必要があると認めるときに、青色申告の承認を受けている人の帳簿書類について必要な指示ができます。

取り消されたときの扱い(さかのぼり)

150条1項は、承認を取り消せる範囲を「各号に掲げる年までさかのぼって」と定めています。さらに、取消しがあったときは、その年分以後の各年分の所得税について、承認に係る青色申告書は青色申告書以外の申告書とみなされます。

  • 取消しの対象は、事由のあった年から後の各年分の申告です。
  • その年分の申告書は、青色の申告書として出していても、青色以外の申告書として扱われます。
  • 青色申告の承認を前提にした制度は、承認が取り消された年分では前提を失います。たとえば青色事業専従者給与は、条文上「青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者」が対象です(所得税法57条1項)。

どの特典がどの年分から使えなくなるか、すでに納めた税額がどう変わるかは、事由のあった年と取消しの範囲で変わります。個別の見通しは、税務署または税理士にご確認ください。

取消しは書面で通知される

税務署長が取消しの処分をするときは、書面で本人に通知します(所得税法150条2項)。その書面には、処分のもとになった事実が1号から3号のどれに当たるかを書き添えなければならないと定められています。

つまり、取消しを受けた人は、通知書で「どの号に当たるとされたか」を確認できます。条文が付記を求めているのは号の区分で、事前の通知や弁明の機会を定めた規定ではありません。

事由になる「帳簿書類」の決まり

1号の「財務省令で定めるところ」にあたるのが、所得税法施行規則の青色申告者の帳簿書類の定めです。青色申告者は、規則56条に従って、次条以下の定めに沿って帳簿書類を備え付けます。

  • 備付け:すべての取引を借方と貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)と、勘定科目の種類別に整理する帳簿(総勘定元帳)その他必要な帳簿を備え、財務大臣の定める事項を記載します(規則58条1項)。
  • 保存:帳簿、棚卸表・貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類、取引の相手方から受け取った注文書・契約書・領収書などを、起算日から7年間保存します。ただし、取引関係書類のうち現金預金取引等関係書類以外のものは5年間です(規則63条1項)。
  • 起算日:帳簿は閉鎖の日の属する年の翌年3月15日の翌日、書類は作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日です(規則63条4項)。

保存の決まりを守っていないことも、1号の「保存が財務省令で定めるところに従って行われていない」に含まれます。記帳だけでなく、領収書や請求書の保存まで含めて備えておく必要があります。なお、前々年分の事業所得などの合計が一定額以下の小規模事業者には、規則63条2項の別の扱いがあります。

取消し後に再び青色にする場合の制限

取消しのあと、また青色申告をしたいときは、あらためて承認申請書を出します。ただし、所得税法145条3号は、取消しの通知を受けた日以後1年以内に申請書を出したときは、税務署長が申請を却下できると定めています。

同じ条文は、自分で取りやめ届出書を出した日以後1年以内の申請も却下の対象にしています。取消しでも取りやめでも、青色にすぐ戻れるとは限りません。

承認申請の却下事由には、申請する年の帳簿書類の備付けが省令どおりでないこと、備え付ける帳簿に隠ぺい・仮装など不実の記載があると認められる相当の理由があることも挙げられています(145条1号・2号)。申請の期限は青色申告承認申請書の期限で整理しています。

取消しに不服があるとき

国税に関する法律に基づく税務署長の処分に不服がある人は、国税通則法75条1項により、処分をした税務署長への再調査の請求か、国税不服審判所長への審査請求のどちらかを選べます。

不服申立てができる期間は、処分があったことを知った日(通知を受けた場合は受けた日)の翌日から3か月です(同法77条1項)。正当な理由があるときは例外があります。

承認の取消しがこの「処分」にどう当たるかは、通知書の案内にも沿って確認してください。通知を受けたときは、期限が短いため、早めに税務署または税理士へ相談するのが安全です。

取りやめ・法人の取消しとの違い

取消し(本記事)取りやめ
きっかけ帳簿書類に関する事由があり、税務署長が処分する本人が青色をやめようとして届出書を出す
根拠条文所得税法150条所得税法151条
書面税務署長から取消しの通知(事由の号を付記)本人が提出する届出書
再申請通知を受けた日以後1年以内は却下され得る届出書を出した日以後1年以内は却下され得る

取りやめの期限と書き方は青色申告の取りやめ届出書で説明しています。法人になってからの取消しは、法人税法に別の定めがあり、法人の青色申告の承認が取り消される場合で整理しています。

まとめ

  • 個人の青色申告の承認は、帳簿書類の備付け・記録・保存の不備(1号)、税務署長の指示に従わなかったこと(2号)、隠ぺい・仮装など真実性への疑い(3号)のときに取り消され得る(所得税法150条1項)。
  • 取消しは事由のあった年までさかのぼり、その年分以後の青色申告書は青色以外の申告書とみなされる。
  • 取消しは書面で通知され、1〜3号のどれに当たるかが付記される(同条2項)。
  • 取消しの通知を受けた日以後1年以内の承認申請は、却下され得る(145条3号)。
  • 不服があるときは、通知を受けた日の翌日から3か月以内に再調査の請求または審査請求ができる(国税通則法75条・77条)。

公式一次情報

よくある質問

青色申告の承認が取り消されるのは、どんな場合ですか。
所得税法150条1項が、帳簿書類の備付け・記録・保存が省令どおりでない場合、帳簿書類についての税務署長の指示に従わなかった場合、帳簿書類に取引の隠ぺい・仮装があるなど記載の真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合の3つを定めています。
取り消されると、いつの年分から青色でなくなりますか。
各号の事由のあった年までさかのぼって取り消すことができ、その年分以後の青色申告書は青色以外の申告書とみなされます(所得税法150条1項)。
取消しは書面で通知されますか。
取消しの処分をするとき、税務署長は書面で通知し、その書面に事由が1〜3号のどれに当たるかを付記しなければなりません(所得税法150条2項)。
取り消されたあと、すぐに青色申告を申請し直せますか。
取消しの通知を受けた日以後1年以内の申請は、税務署長が却下できると定められています(所得税法145条3号)。
領収書を紛失した場合も取消しの対象になりますか。
書類の保存が省令の定めに従っていないことは1号の事由に当たり得ます。実際に取消しになるかは個別の事情で判断されるため、税務署または税理士にご確認ください。

次に知りたいこと

本記事について。税理士監修前の概説です。2026年11月3日時点の所得税法・同施行規則・国税通則法の条文にもとづく一般的な整理で、個別の事情での取消しの可否や不服申立ての要否を保証するものではありません。税務署または税理士にご確認ください。