中小企業技術基盤強化税制|試験研究費の税額控除の対象・上限・繰越
試験研究費の一部を法人税額から差し引ける制度の、対象となる会社、控除の上限(調整前法人税額の25%)、使いきれなかった分の3年繰越、一般の試験研究費の税額控除との関係を国税庁の案内で整理します。
令和8年4月1日現在の制度中小企業技術基盤強化税制は、青色申告書を提出する中小企業者が、試験研究費を支出した事業年度に、その額に一定割合を掛けた金額を法人税額から差し引ける制度です。国税庁のタックスアンサー No.5444 が、対象者・控除額・上限・繰越を示しています。
- 対象は、青色申告書を提出する中小企業者(基本は資本金1億円以下の法人)です。
- 控除する割合は、通常12%で、試験研究費の増え方などに応じて上がり、上限は17%です。
- その事業年度に控除できる額には、調整前法人税額の25%という上限があります。
- 控除しきれなかった分は、3年間繰り越せます。
- 同じ事業年度に、一般試験研究費の税額控除(No.5442)とは併用できません。
対象になる会社
国税庁によると、この制度の適用対象法人は、青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等です。中小企業者とは、基本的に資本金1億円以下の法人をいいます。詳しい判定は、国税庁の No.5432(措置法上の中小法人及び中小企業者)の「研究開発税制に規定する中小企業者」を見るよう案内されています。
青色申告書の提出が前提なので、法人成りした会社は、青色申告の承認を受けているかが入口になります。承認申請は法人の青色申告の承認申請で整理しています。
次の事業年度には適用できません。
- 一般試験研究費の額に係る税額控除制度(No.5442)の適用を受ける事業年度
- 解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度
- 清算中の各事業年度
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対象になる試験研究費
国税庁の案内では、試験研究費の額は、製品の製造や技術の改良、考案、発明に係る試験研究(新たな知見を得るため、または利用可能な知見の新たな応用を考案するために行うものに限る)に要した費用で、損金の額に算入されるものが中心です。次の費用が挙がっています。
- 試験研究のための原材料費、人件費(専門的知識をもって試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る)、経費
- 他の者に委託して試験研究を行う場合に、委託先へ支払う費用
- 技術研究組合法9条1項の規定により賦課される費用
対価を得て提供する新しい役務の開発に係る試験研究のうち、情報解析専門家がソフトウエアで大量の情報を分析するなど一定の要件を満たすものも対象です。単にソフトを作る費用が自動的に対象になるわけではなく、新たな知見を得るための試験研究に当たるかが問われます。
売上原価などの原価の額は除かれます。また、試験研究費に充てるため他の者から支払を受ける金額があれば、その額は差し引きます。令和8年度税制改正で、国外へ委託する試験研究の費用は、区分に応じた割合(令和8年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度は、臨床試験を除き70%相当額)だけが対象とされました。
控除額と上限
控除できる額(中小企業者等税額控除限度額)は、控除対象試験研究費の額に、事業年度ごとの税額控除割合を掛けて計算します。
| 事業年度の区分 | 税額控除割合 |
|---|---|
| 増減試験研究費割合が12%以下で、試験研究費割合も10%以下 | 12% |
| 増減試験研究費割合が12%を超える | 12%+(増減試験研究費割合-12%)×0.375 |
| 試験研究費割合が10%を超える | 12%+(12%×控除割増率)。割増率は(試験研究費割合-10%)×0.5で上限10% |
税額控除割合には17%という上限があります。増減試験研究費割合や試験研究費割合の用語は、国税庁が No.5442 の「用語の説明」を参照するよう案内しています。
増減試験研究費割合が12%を超える事業年度は、25%に調整前法人税額の10%が加わります。試験研究費割合が10%を超える事業年度は、調整前法人税額に「(試験研究費割合-10%)×2」(上限10%)を掛けた額が加わります。この2つは重複して適用できず、前者が優先されます。
調整前法人税額は、そもそも法人税額が小さい小規模な会社では上限も小さくなります。法人税の税率は中小法人の法人税率にあります。
控除しきれなかった分の繰越
控除限度額が上限額を超えて、全部を控除しきれなかった場合、その控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)は3年間繰り越せます。ただし、繰越税額控除を受ける事業年度に、試験研究費の額が比較試験研究費の額を超えている場合に限られます。
繰越を受けるには、繰越超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に、繰越税額控除限度超過額の明細書を添付する必要があります。
併用できない制度と申告の手続き
この制度を適用する事業年度は、一般試験研究費の額に係る税額控除制度(No.5442)を適用できません。逆に No.5442 の適用を受ける事業年度は、この制度を使えません。どちらを使うかを事業年度ごとに選ぶ形です。
手続きとして、控除の対象となる控除対象試験研究費の額、試験研究費の額、控除を受ける金額を確定申告書等に記載し、計算に関する明細書を添付します。減価償却資産の取得価額に試験研究費の額が含まれ、その額についてこの制度の税額控除を受けた場合は、その資産について、他の制度による特別償却や税額控除との重複適用は認められません。
根拠法令は、国税庁によると租税特別措置法42条の4、53条などです。適用の可否は個別の事情で変わるため、申告前に税理士へ確認してください。小さな法人に税理士が必要かどうかは、マイクロ法人と税理士の関係を扱う記事で確認できます。
よくある質問
- 資本金が1億円を超える会社でも使えますか?
- 国税庁は、対象の中小企業者を基本的に資本金1億円以下の法人としています。詳細な判定は No.5432 の「研究開発税制に規定する中小企業者」を確認してください。
- 白色申告の法人は使えますか?
- 使えません。対象は、青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等です。
- 控除できる額には上限がありますか?
- あります。税額控除割合は17%が上限で、その事業年度に控除できる額は、調整前法人税額の25%相当額が上限です。一定の場合は上限が上乗せされます。
- 使いきれなかった控除額はどうなりますか?
- 3年間繰り越せます。ただし、繰越税額控除を受ける事業年度の試験研究費の額が、比較試験研究費の額を超えていることが条件です。
- 一般試験研究費の税額控除と同じ年に使えますか?
- 使えません。この制度を適用する事業年度は、No.5442 の制度を適用できません。

