同族会社の行為計算の否認(法人税法132条)|対象になる会社と役員との取引の見方
法人成りして自分が株主になった会社は、多くの場合「同族会社」に当たります。同族会社には、税の負担を不当に減らす取引を税務署長が計算し直せる規定(法人税法第132条)があります。条文で確かめられる範囲と、役員への賃貸・貸付・給与で別に見られる点を整理しました。
e-Gov法令検索・国税庁タックスアンサーにもとづく法人税法第132条は、同族会社の行為または計算を、そのまま認めると法人税の負担を不当に減らす結果になると認められるときに、税務署長が認めるところで税額を計算できると定めています。株主が1人の会社も、持ち株の合計が50%を超える3人以下の株主グループがあれば同族会社に入ります。
条文の基準は「不当に減少させる結果」かどうかで、取引の種類や金額の線引きは書かれていません。このページは条文の読み方の整理で、個別の取引が否認されるかは判断していません。
対象になる会社(同族会社)
同族会社は、法人税法第2条第10号が定めています。株主等の3人以下と、これらと政令で定める特殊の関係のある個人および法人が、発行済株式の総数または総額の50%を超える数または金額を持つ会社などをいいます。会社が持つ自己株式は、分母から除かれます。
1人で全株を持つ会社は、株主1人(3人以下)で50%を超えるため、同族会社に当たります。家族だけで株を持つ会社も、特殊の関係のある個人として合算されます。
第132条は、この同族会社のほか、3以上の事業所を持ち、事業所の長が以前に個人で事業を営んでいた事実がある一定の法人にも適用されます(第1項第2号)。判定は、行為または計算があった時の現況で行います(第2項)。
条文が定める要件
| 見るところ | 条文の内容 |
|---|---|
| だれが | 税務署長が、更正または決定をする場合に(第132条第1項) |
| 何を | 同族会社の行為または計算で、容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの |
| どうする | その行為または計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、課税標準・欠損金額・法人税の額を計算できる |
| 判定の時点 | 同族会社に当たるかは、行為または計算の事実があった時の現況による(第2項) |
条文には、どの取引が「不当」にあたるかの一覧や金額の基準はありません。取引相手が身内であること自体が禁止されているわけではなく、結果として税の負担が不当に減るかどうかが問われます。
役員との取引で見られる点
役員との取引は、第132条とは別に、役員給与の規定でも見られます。国税庁のタックスアンサーNo.5202は、役員に対する経済的利益の例として、居住用の土地・家屋を無償または低額で貸した場合の賃料との差額、無利息または低率で金銭を貸した場合の利息との差額などを挙げています。
役員に継続して供与される経済的利益は、毎月おおむね一定であれば定期同額給与に当たり、損金に算入されます。それ以外のものは損金に算入されません(No.5202、No.5211)。
つまり、役員への低い家賃や無利息の貸付は、まず役員給与の規定で扱われる場合があります。第132条は、これらの規定に当てはまらない取引についても、同族会社の取引を計算し直せる規定として位置づけられます。どちらの規定で扱うかは、取引の内容と実態によります。
- 社宅の家賃と通常の賃貸料の差:役員社宅の家賃と経費の扱い
- 役員への貸付と利息:役員への貸付と認定利息
- 役員との売買・貸借の取引条件:利益相反取引の手続き
- 管理料・サブリース:不動産管理会社方式の違い
個人側の規定(所得税法157条)
所得税法第157条第1項にも同様の規定があります。同族会社の行為または計算を容認すると、株主等である居住者などの所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるときに、税務署長が所得税を計算し直せます。
法人税法第132条第3項は、同族会社の行為または計算につき所得税法第157条第1項の規定の適用があったときに、法人税についても同じ扱いができる旨を準用しています。会社と株主個人の両方に影響しうる規定です。
同族会社の判定は、法人事業概況説明書でも表れます。同族会社の場合は、代表者に対する報酬・貸付金・仮払金・賃借料・支払利息などの金額を記載する欄があります(国税庁の記載要領)。代表者との取引の残高は、毎年の申告で税務署に示される形になります。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「法人税法」(第2条第10号、第132条)
- e-Gov法令検索「所得税法」(第157条)
- 国税庁 No.5202 役員等に対する経済的利益
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
- 国税庁 法人事業概況説明書の記載要領
確認日は2026年10月12日です。
よくある質問
- 株主が自分1人の会社は、同族会社ですか?
- はい。株主等の3人以下が発行済株式の50%を超えて持つ会社は同族会社です(法人税法第2条第10号)。1人で全株を持つ会社も当たります。
- 法人税法第132条で否認されるのは、どんな取引ですか?
- 同族会社の行為または計算で、容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものです。取引の種類や金額の基準は条文にないため、個別の判断は税理士に確認してください。
- 役員への低い家賃や無利息の貸付は、第132条の対象ですか?
- 国税庁は、これらを役員に対する経済的利益として役員給与の規定で扱う例を示しています(No.5202)。どちらの規定で扱うかは取引の実態によるため、条文だけでは決められません。
- 否認されると、何が変わりますか?
- 税務署長が、その行為または計算にかかわらず、課税標準・欠損金額・法人税の額を計算できます。実際の更正の内容は個別の事情で決まります。