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変動所得・臨時所得の平均課税|原稿料・印税の範囲と20%基準

原稿料や印税、一時的な権利金の年に税額が重くなりすぎないよう、税率を平均する制度です。対象になる所得、20%の判定、税額の計算を国税庁の設例で整理します。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

平均課税は、変動所得と臨時所得の合計が総所得金額の20%以上のときに選べる計算方法です。所得が年によって大きく上下する人や、権利金のような一時的な収入があった年の税率を、なだらかにするための制度です(所得税法90条)。

対象になる変動所得は、漁獲やのりの採取、養殖のほか、印税・原稿料・作曲料などの所得です。臨時所得は、3年以上の契約で受ける権利金や補償金などに限られます。

この記事では、対象になる所得の範囲、20%の判定、国税庁の設例にもとづく税額の計算を順に説明します。

変動所得と臨時所得の範囲

変動所得と臨時所得は、どちらも国税庁が範囲を限っています。どの業種でも「収入が不安定だから」という理由で対象になるわけではありません。

変動所得

事業所得か雑所得のうち、次のものです(国税庁「変動所得・臨時所得の説明書」)。

  • 漁獲やのりの採取による所得
  • はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得
  • 印税、原稿料、作曲料などによる所得

漁獲は、水産動物を捕獲してそのまま、または簡単な加工をして販売する場合に限られます。こんぶ・わかめなどの水産植物の採取や、えび・こい・ますなどの養殖は含まれません。

臨時所得

事業所得、不動産所得、雑所得のうち、次のものです。

  • 不動産、借地権、特許権などを3年以上の期間他人に使わせて一時に受ける権利金や頭金で、その契約の使用料の2年分以上のもの
  • 公共事業などに伴う休業・転業・廃業で、3年以上の期間分の事業の所得を補う補償金
  • 鉱害その他の災害による資産の損害で、3年以上の期間分の事業の所得を補う補償金
  • 職業野球の選手などが3年以上の専属契約で一時に受ける契約金で、報酬の2年分以上のもの

建物を所有するための借地権の設定などで、権利金が土地の価額の2分の1を超えるなどの場合は、臨時所得ではなく譲渡所得になります。

つまり:対象は上の一覧に当たる所得だけです。収入が不安定というだけでは変動所得になりません。自分の収入がこの一覧に入るかを先に確かめます。

平均課税を選べる20%の判定

平均課税が使えるかどうかは、その年の所得金額と、前々年・前年の変動所得で決まります(所得税法90条1項、国税庁の確定申告書等作成コーナー)。

  • 前々年・前年に変動所得がない、または前々年と前年の合計の2分の1が本年の変動所得に満たない場合:本年の変動所得と臨時所得の合計が、本年の総所得金額の20%以上であること。
  • 前々年と前年の合計の2分の1が本年の変動所得以上の場合:本年の臨時所得だけで、総所得金額の20%以上であること。

総所得金額は、申告書第一表の所得金額等の合計です。分離課税とされる所得や、山林所得・退職所得は除きます。

注意:前々年・前年の変動所得は、そのときに平均課税を使ったかどうかにかかわらず、各年分の金額を使います。過去の申告で変動所得を区分していなくても、金額の確認が必要です。

税額の計算の流れ

国税庁の「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」の順に、次の4段階で計算します。

  1. 変動所得の平均額との差を出す:本年の変動所得から、前々年と前年の変動所得の合計の2分の1を引いた額(プラスのときだけ)を求めます。
  2. 平均課税対象金額を出す:上の差額と、本年の臨時所得を足します(所得税法90条3項)。
  3. 調整所得金額を出す:課税総所得金額から、平均課税対象金額の5分の4を引きます。課税総所得金額が平均課税対象金額以下なら、課税総所得金額の5分の1です。
  4. 税額を合計する:調整所得金額にかかる通常の税額と、残りの部分に平均税率をかけた税額を足します。平均税率は小数点以下2位まで求め、3位以下は切り捨てます。

青色申告特別控除は、変動所得・臨時所得と、それ以外の所得の金額の比であん分します。必要経費も、変動所得に対応する部分とそれ以外に分けて計算します。

数字で見る計算例

国税庁の計算書の記載例(令和7年分)の設例を使い、通常の計算と比べます。税額は所得税の速算表で求めた概算で、復興特別所得税や住民税は含みません。

項目金額
各種の所得金額の合計6,000,000円
うち変動所得(原稿料)820,000円
うち臨時所得(権利金)1,500,000円
課税される所得金額4,300,000円
令和5年分・令和6年分の変動所得200,000円・280,000円
  1. 20%の判定:前々年と前年の合計480,000円の2分の1は240,000円で、本年の変動所得820,000円より小さいので、変動所得と臨時所得の合計2,320,000円で判定します。2,320,000円は6,000,000円の約38.7%で、20%以上です。
  2. 平均課税対象金額:820,000円−240,000円=580,000円。これに臨時所得1,500,000円を足して、2,080,000円。
  3. 調整所得金額:課税所得4,300,000円は2,080,000円より大きいので、4,300,000円−(2,080,000円×4/5=1,664,000円)=2,636,000円。
  4. 調整所得金額への税額:2,636,000円×10%−97,500円=166,100円。平均税率は166,100円÷2,636,000円=約0.063で、小数点以下2位まで求めて3位以下は切り捨てるので0.06(6%)。
  5. 残りの部分の税額:4,300,000円−2,636,000円=1,664,000円に6%をかけて、99,840円。

合計は166,100円+99,840円=265,940円です。通常の計算(4,300,000円×20%−427,500円=432,500円)より、この設例では約16.7万円低くなります。

つまり:平均課税の効果が大きいのは、臨時所得のように一度に大きな所得が入った年です。変動所得だけの場合は、前々年・前年の水準との差の分だけが対象です。

税率の速算表は、個人事業主の所得税率で整理しています。

申告のしかたと注意点

  • 確定申告書に平均課税の適用を受ける旨を書き、計算の明細を添付した場合に限って適用されます(所得税法90条4項)。申告書第一表の「税金の計算」欄の次に、国税庁の「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」で特別の計算をします。
  • 確定申告書等作成コーナーでは、平均課税対象金額と変動・臨時所得の金額を入力する画面があります。前々年・前年の変動所得の金額も入力します。
  • 赤字が出た年の損失の繰越しは、純損失の繰越控除で確認してください。
  • 事業所得と雑所得の区分は、事業所得と雑所得の違いが判断の前提になります。
  • 報酬から源泉徴収される原稿料などの扱いは、フリーランスの源泉徴収で整理しています。

まとめ

  • 平均課税は、変動所得と臨時所得の合計が総所得金額の20%以上のときに選べる(所得税法90条)。
  • 変動所得は漁獲・養殖・印税・原稿料・作曲料など、臨時所得は3年以上の契約の権利金・補償金・専属契約金などに限られる。
  • 前々年・前年の変動所得の合計の2分の1が本年の変動所得以上なら、臨時所得だけで20%を判定する。
  • 税額は、課税所得から平均課税対象金額の5分の4を除いた調整所得金額の税率(平均税率)を、除いた部分にも当てはめて計算する。
  • 確定申告書に適用を受ける旨を書き、計算書を添付する。

公式一次情報

よくある質問

原稿料や印税があれば、必ず平均課税を使えますか?
使えません。変動所得と臨時所得の合計が総所得金額の20%以上であることが要件です。前々年・前年の変動所得の水準によっては、臨時所得だけで判定します(出典:国税庁)。
20%の判定に使う総所得金額には何が入りますか?
申告書第一表の所得金額等の合計です。分離課税とされる所得や、山林所得・退職所得は除きます(出典:国税庁)。
前々年・前年に平均課税を使っていなくても、変動所得の金額は必要ですか?
必要です。前々年分または前年分の申告で平均課税を使ったかどうかにかかわらず、各年分の変動所得の金額を使います(出典:国税庁)。
養殖業の所得は、すべて変動所得ですか?
いいえ。はまち・まだい・ひらめ・かき・うなぎ・ほたて貝・真珠・真珠貝の養殖に限られ、えび・こい・ますの養殖などは含まれません(出典:国税庁)。
平均課税を使うには、どんな手続きが必要ですか?
確定申告書に適用を受ける旨を書き、計算の明細を添付します。添付がないと適用されません(所得税法90条4項)。
本記事について。税理士監修前の概説です。制度・期限は改正される場合があります。個別の判断は税務署または専門家へご確認ください。