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取締役会を置かない一人会社の意思決定(取締役会設置会社との違いと議事録の扱い)

法人成りで取締役1人の株式会社をつくると、取締役会は置きません。取締役会を置かない会社で、業務の決定、代表者、株主総会の権限、議事録がどう変わるかを、会社法の条文で取締役会設置会社と並べて整理します。

法人の運営・機関設計
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

取締役会は、会社法では「置くことができる」機関で、置くかどうかは定款の定めで決まります。一人で始める会社は置かないのが一般的ですが、置かない場合と置く場合とで、意思決定の手順も、残すべき議事録も変わります。

会社には取締役が1人以上必要で、取締役会は定款の定めで置くものです(会社法326条)。取締役会を置かない会社では、取締役が業務を執行し、2人以上なら過半数で決めます(同348条)。取締役会設置会社の議事録と10年の備え置きの規定(同369条・371条)は、置かない会社には当たりません。

取締役会は置かなくてよい

会社法326条1項は、株式会社に一人又は二人以上の取締役を置かなければならないとしています。取締役会は同条2項で、定款の定めによって置くことができる機関の1つに挙げられています。

取締役会を置く場合は、同331条5項により、取締役は3人以上でなければなりません。1人で設立する株式会社が取締役会を置かないのは、この人数の要件によるものです。取締役の人数や監査役との関係は、法人成りで役員は何人必要かで整理しています。

置く会社と置かない会社の違い

項目取締役会を置かない会社取締役会設置会社
取締役の人数1人以上(326条1項)3人以上(331条5項)
業務の決定取締役が業務を執行し、2人以上なら過半数で決定(348条1項・2項)取締役会が業務執行の決定をする(362条2項1号)
代表者取締役が会社を代表する。代表取締役は定款・互選・株主総会の決議で選べる(349条1項・3項)取締役会が取締役の中から代表取締役を選定する(362条3項)
株主総会で決議できる事項会社に関する一切の事項(295条1項)会社法に規定する事項と定款で定めた事項に限る(295条2項)
取締役会の議事録該当なし作成し、取締役会の日から10年間、本店に備え置く(369条3項・371条1項)

取締役会を置かない会社の業務の決め方

取締役会を置かない会社では、会社法348条1項により、取締役は定款に別段の定めがある場合を除き、会社の業務を執行します。取締役が1人であれば、その人が業務を決めて実行します。

取締役が2人以上いるときは、同条2項により、定款に別段の定めがある場合を除き、業務は取締役の過半数で決定します。ただし、支配人の選任・解任や支店の設置・移転・廃止などは、各取締役への委任ができません(同条3項)。

会社を代表するのは、原則として各取締役です(会社法349条1項・2項)。代表取締役を置くなら、定款、定款の定めに基づく取締役の互選、または株主総会の決議で、取締役の中から定めます(同条3項)。代表取締役の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗できません(同条5項)。

株主総会の権限が広がる

会社法295条1項は、株主総会は法律に規定する事項と、会社に関する一切の事項について決議できるとしています。取締役会設置会社ではこの範囲が、法律に規定する事項と定款で定めた事項に限られます(同条2項)。

取締役会を置かない会社では、株主総会が会社の運営全般について決めることができるため、自分が取締役でもあり株主でもある一人会社では、「取締役として決めたこと」と「株主として決めたこと」が、同じ人の判断になります。それでも法律上は別の機関の決定です。

法律が株主総会の決議を必要とする事項は、定款で取締役などが決められるとしても効力がありません(会社法295条3項)。役員報酬の例は役員報酬を決める株主総会決議と議事録で扱っています。

議事録はどこで必要になるか

取締役会設置会社では、取締役会の議事録の作成が会社法369条3項で求められ、371条1項で取締役会の日から10年間の本店での備え置きが定められています。取締役会を置かない会社には、この取締役会の議事録の規定は当たりません。

一方で、株主総会を開いて決議したときの議事録は、取締役会の有無にかかわらず、会社法318条により作成と備え置きが必要です。株主総会の決議を書面で省略した場合は、同319条により同意の書面などを10年間備え置きます。具体的な手順は株主総会の書面決議をご覧ください。

取締役が会社と取引をするときの承認も、取締役会を置かない会社では株主総会で受けます(会社法356条1項)。取締役会設置会社では「株主総会」が「取締役会」に読み替えられます(同365条1項)。社長個人と会社の取引の承認は、社長と会社の取引の承認と議事録で整理しています。

取締役の過半数で決めた業務について、議事録の作成を会社法で一律に求める規定は、取締役会設置会社の369条・371条のような形では、本記事で確認した条文にありません。金融機関や取引先に決定の記録を求められる場合に備えて、決めた日と内容を記録しておくと対応しやすくなります。

まとめ

  • 取締役会は定款の定めで置く機関で、置く場合は取締役が3人以上必要。1人の会社は置かない形が基本になる(会社法326条・331条5項)。
  • 置かない会社では、取締役が業務を執行し、2人以上なら過半数で決める(同348条)。
  • 株主総会は会社に関する一切の事項を決議できる(同295条1項)。取締役会設置会社では、法律と定款に定めた事項に限る(同条2項)。
  • 取締役会の議事録(同369条3項)と10年間の備え置き(同371条)は取締役会設置会社の決まり。株主総会の議事録(同318条)は、取締役会の有無にかかわらず必要。

あわせて読みたい:役員は何人必要か、株主総会の開催義務と議事録、株主総会の書面決議。

公式一次情報

  • e-Gov法令検索「会社法」(295条:株主総会の権限、318条・319条:議事録と決議の省略、326条:機関の設置、331条5項:取締役の人数、348条:業務の執行、349条:会社の代表、356条・365条:競業・利益相反取引、362条:取締役会の権限、369条・371条:取締役会の議事録。2026-11-01確認)

よくある質問

一人で株式会社をつくるとき、取締役会は必要ですか?
必要ありません。取締役会は定款の定めで置く機関で、置く場合は取締役が3人以上必要です(会社法326条2項・331条5項)。
取締役会を置かない会社では、業務は誰が決めますか?
取締役が業務を執行し、2人以上なら定款に別段の定めがない限り過半数で決定します(会社法348条1項・2項)。取締役1人ならその人が決めます。
取締役会を置かない会社でも議事録は必要ですか?
取締役会の議事録は取締役会設置会社の規定です(会社法369条3項)。株主総会を開いて決議したときは、取締役会の有無にかかわらず議事録を作り、本店に10年間備え置きます(同318条)。
取締役会を置かないと株主総会の権限は変わりますか?
取締役会を置かない会社の株主総会は、会社に関する一切の事項を決議できます。取締役会設置会社では、法律に規定する事項と定款で定めた事項に限られます(会社法295条)。
社長個人と会社の取引は、誰の承認が要りますか?
取締役会を置かない会社では株主総会で承認を受けます(会社法356条1項)。取締役会設置会社では取締役会の承認になります(同365条1項)。
本記事について。税理士監修前の概説です。2026年11月1日時点の法令にもとづく一般的な案内で、個別の事情に応じた判断や登記の代理に代わるものではありません。具体的な判断は税理士・司法書士などの専門家へご確認ください。