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役員報酬を決める株主総会決議と議事録(期首の決議・改定時・書面決議)

株式会社の取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます。決議の根拠となる会社法の条文、法人税法の定期同額給与との関係、議事録に書く事項と保存期間、書面で決議を省略する場合の扱いを、条文にもとづいて整理します。

法人の運営・役員報酬
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

法人成りしたあと、役員報酬の金額は「自分で決める」と考えがちですが、会社法では報酬の決め方にも手続きが定められています。税金の面でも、決算のたびに「いつ、誰が、どう決めたか」を示す書類として議事録が求められる場面があります。

取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めます(会社法361条)。決議した内容は議事録に残し、本店に10年間備え置きます(同318条)。税務上は、事業年度開始から3か月以内の改定であれば毎月同額の定期同額給与になります(法人税法施行令69条)。

会社法で決議が要る事項

会社法361条1項は、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益(報酬等)について、次の事項は定款に定めていなければ株主総会の決議で定めるとしています。

  • 報酬等のうち額が確定しているものは、その額
  • 額が確定していないものは、その具体的な算定方法
  • 募集株式や募集新株予約権による報酬は、その数の上限など法務省令で定める事項

つまり、金額が決まっている役員報酬は「いくら」を、業績に連動するものは「どう計算するか」を、定款か株主総会の決議で決めておく必要があります。取締役が自分で決めるだけでは足りません。

役員が社長1人で、その人が株主でもある会社でも、手続きの考え方は同じです。株主総会を開いて決議するか、後述の書面による決議の省略で、決議があった形を残します。

税務との関係:定期同額給与と改定の時期

法人税法34条1項は、役員に支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも当てはまらないものを、損金(経費)にしないと定めています。毎月同じ額を払う役員報酬は、このうち定期同額給与として扱うのが一般的です。

途中で金額を変えると、変えた月の前後で支給額が同額でなくなります。そこで法人税法施行令69条1項1号は、次の改定であれば、改定前と改定後のそれぞれが同額であれば定期同額給与とすると定めています。

改定の種類内容(施行令69条1項1号)
期首から3か月以内の改定事業年度開始の日の属する会計期間の開始の日から3か月を経過する日までにされる改定。継続して毎年所定の時期にされる改定で、3か月経過後にすることに特別の事情があると認められる場合も含まれる
臨時改定事由による改定役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更などのやむを得ない事情による改定
業績悪化改定事由による改定経営の状況が著しく悪化したことなどの理由による減額の改定(増額は含まれない)

たとえば3月決算の会社なら、4月1日から6月30日までに改定の効力が生じる決議をするのが、期首から3か月以内の改定の典型です。この期限に間に合わせるには、決算後に開く定時株主総会の日程を、期首から3か月以内に組む必要があります。

期首から3か月を過ぎた改定や、上の表に当てはまらない増額は、改定後の差額が損金にならない可能性があります。条文の当てはめは個別の事情で変わるため、具体的な判断は税理士などの専門家にご相談ください。

事前確定届出給与は、別に税務署への届出が必要です。くわしくは事前確定届出給与の届出をご覧ください。

議事録に書く事項と保存期間

会社法318条1項は、株主総会の議事について、法務省令で定めるところにより議事録を作成するよう求めています。会社法施行規則72条は、議事録を書面か電磁的記録で作成し、次の事項を内容とするよう定めています。

  • 株主総会が開催された日時と場所
  • 議事の経過の要領とその結果
  • 総会で述べられた意見や発言のうち、規則に挙げられたものの概要(報酬については、会社法361条5項・6項の意見が対象)
  • 出席した取締役、監査役などの氏名または名称
  • 議長がいるときは、議長の氏名
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

役員報酬の決議なら、議事の経過の要領とその結果に、報酬の額(または算定方法)と、それを適用する期間を書いておくと、後で何を決めたのかが分かります。会社法は書き方の様式までは定めていないため、記載例の細かい表現は各社で異なります。

保存については、会社法318条2項が、株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置くことを会社に求めています。同条3項は、支店には議事録の写しを5年間備え置くとしています(電磁的記録で作成し、支店で閲覧請求に応じられる措置をとっていれば不要)。株主と債権者は、営業時間内であれば閲覧や謄写を請求できます。

書面で決議を省略する場合

会社法319条1項は、取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合に、その事項について議決権を行使できる株主の全員が、書面または電磁的記録で同意の意思表示をしたときは、提案を可決する株主総会の決議があったものとみなすとしています。

株主が1人または少数の会社では、実際に総会を開かず、この方法で役員報酬の決議をすることがあります。決議があったとみなされた日から10年間、同意の書面または電磁的記録を本店に備え置く必要があります(同条2項)。

この場合の議事録は、通常の総会とは記載事項が変わります。会社法施行規則72条4項1号は、次の4つを挙げています。

  • 決議があったものとみなされた事項の内容(例:取締役の報酬を月額いくらとする)
  • その提案をした者の氏名または名称
  • 決議があったものとみなされた日
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

書面決議の手続きや、全員の同意が得られないときの扱いの詳しい説明は、株主総会の書面決議で整理しています。

決議のタイミング別の整理

場面決議で決める内容確認する条文
設立のとき最初の役員報酬の額(定款に定めない場合)会社法361条
期首から3か月以内の改定(定時株主総会など)翌期以降の報酬の額。増額も減額も、改定後は同額で支給する法人税法施行令69条1項1号イ
役職の変更・職務内容の重大な変更があったとき変更後の額。変更の事情と決議の日を議事録に書く施行令69条1項1号ロ
経営が著しく悪化したとき減額した額(減額のみ)。悪化の事情を議事録に書く施行令69条1項1号ハ

上の表の「議事録に書く」は、議事録に決まった様式があるという意味ではありません。後から事情を示せるように、決議の事実と理由を議事の経過の要領に入れておく運用の例です。

まとめ

  • 取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で、額が確定しているものはその額、確定していないものは算定方法を定める(会社法361条)。
  • 税務上、定期同額給与として扱える改定は、期首から3か月以内、臨時改定事由、業績悪化改定事由(減額のみ)のいずれか(施行令69条)。
  • 議事録は書面か電磁的記録で作り、日時・場所、議事の経過の要領と結果、出席役員、議長、作成した取締役を載せる。本店に10年間備え置く。
  • 株主全員が同意すれば、書面または電磁的記録で決議があったものとみなせる。その同意の書面も10年間備え置く。

あわせて読みたい:役員報酬の金額の決め方、株主総会の開催義務と議事録、株主総会の書面決議。

公式一次情報

よくある質問

役員報酬は社長が1人で決めてよいですか?
会社法361条では、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めます。社長が唯一の株主でも、総会の決議か、全員の同意による書面決議の形で残します。
役員報酬を変えるのはいつまでにすればよいですか?
毎月同額の定期同額給与として扱うには、期首から3か月以内の改定が基本です(法人税法施行令69条1項1号イ)。臨時改定事由、業績悪化改定事由(減額のみ)の場合は例外です。
議事録はどのくらいの期間、保存しますか?
会社法318条2項により、株主総会の日から10年間、本店に備え置きます。書面決議で省略した場合は、決議があったとみなされた日から10年間、同意の書面などを備え置きます。
株主総会を開かずに役員報酬を決められますか?
議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。この場合の議事録には、提案者の氏名や決議があったものとみなされた日などを載せます。
議事録は電子データで作ってもよいですか?
会社法施行規則72条2項は、株主総会の議事録を書面または電磁的記録で作成するとしています。
本記事について。税理士監修前の概説です。2026年11月1日時点の法令にもとづく一般的な案内で、個別の税務判断や登記・手続きの代理に代わるものではありません。具体的な判断は税理士・司法書士などの専門家へご確認ください。