ガイド

法人成りで社会保険に入ったときの国民健康保険・国民年金の脱退手続き

個人事業主が法人を設立して健康保険・厚生年金に入ったあと、市区町村で出す国保の脱退届の期限・持ち物・保険料の月割りと、国民年金で届出が要らない理由、家族が国保に残る場合の注意をまとめます。

法人化後の社会保険
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

結論:国民健康保険は自分で脱退届を出す必要があり、国民年金は法人が資格取得届を出す通常の場合、市区町村への届出が要りません。国保の脱退は、社会保険の資格を取得した日から14日以内に、世帯主が市区町村へ届け出ます。国民年金は、法人が出す厚生年金の資格取得届で第2号被保険者に切り替わります。

法人を設立して役員報酬を受け取ると、法人の健康保険(協会けんぽなど)と厚生年金に加入します。そのとき、これまで入っていた国保と国民年金の第1号被保険者の扱いが問題になります。

国保の届出を忘れると、加入していない国保の納付書が届き続けます。ここでは、法令と自治体・日本年金機構の案内で確認できた範囲に絞って手順を整理します。

なぜ国保と国民年金から外れるのか(根拠条文)

国民健康保険法6条1号は、健康保険法による被保険者を国保の被保険者としないと定めています。同法8条1項は、6条各号のいずれかに該当するに至った日の翌日から国保の資格を喪失するとしています。

国民年金法7条1項は、厚生年金保険の被保険者を第2号被保険者とし、第1号被保険者は第2号・第3号のどちらにも当たらない人と定めています。法人から報酬を受けて厚生年金に入れば、第1号ではなくなります。

国保と国民年金で手続きが違う理由:国保は世帯主が市町村へ資格喪失を届け出る仕組み(国保法9条、施行規則13条)です。国民年金の第1号から第2号への種別変更は、第1号被保険者本人の届出を要さず、就職先から出る厚生年金の資格取得届で行われます(厚生労働省の通知)。

国保の脱退届:期限・窓口・持ち物

国民健康保険法施行規則13条は、6条各号に該当して資格を喪失した人がいるとき、その人の属する世帯の世帯主が、14日以内に届書を市町村へ提出するよう定めています。提出先は世帯主が住所を有する市町村(東京23区は区)です。

社会保険に入っても、国保の資格は自動では消えません。大阪市住吉区の案内は、届出がないと国保料の納付書が世帯主あてに届き続けると説明しています。

期限の数え始めは自治体の案内で表現が分かれます。大阪市住吉区は社会保険の資格を取得した日、日野市は社会保険に加入したことが分かる証明書の発行日から14日以内としています。迷う場合は、早めに窓口へ出すのが確実です。

自治体案内の内容
大阪市住吉区世帯主が社会保険等の資格を取得した日から14日以内に届出。資格確認書・資格情報のお知らせ・健康保険等資格取得証明書のいずれか1つが必要
日野市加入を証明する書類の発行日から14日以内。資格確認書等と本人確認書類が必要。マイナンバーが分かるものは、分からなくても手続きはできると案内

郵送やマイナポータルでの申請を受け付ける自治体もあります。書類は社会保険の資格を取得した本人の分と、あわせて抜ける家族の分が必要です。窓口に行く前に、住んでいる自治体の案内ページで受付方法を確認してください。

国保の保険料は前月分まで:月割りと精算

国保料は日割りではなく月割りです。江東区の案内では、保険料はその月の末日に国保の資格があると1か月分かかるとされ、会社の保険に入った場合は、加入した日の前月分までを払う形です。

月の途中で社会保険に入っても、その月の国保料はかかりません。江東区の例では、3月中旬に会社の保険に入る場合、3月末時点で国保の資格を喪失しているため3月分はかからず、2月分までを払います。4月1日から入る場合は、3月末時点では資格があるため3月分までを払います。

月末日に入る場合の扱いは自治体で異なる可能性があるため、窓口で確認してください。

大阪市住吉区の例も同じ考え方です。6月10日に社会保険に入ると、国保料は5月分までで、4月と5月の2か月分になります。

年度の途中で資格を喪失したときは、保険料が再計算されます。大阪市住吉区は、すでに払った額が再計算後より多い場合は差額を還付し、少ない場合は差額を払うとしています。国保の納期や再計算の通知時期は自治体ごとに違います。

脱退後に国保証を使ったとき:大阪市住吉区は、社会保険の資格を取得した日以降に国保の保険証等で受診した場合、原則として世帯主へ医療費の返還請求をすると案内しています。社会保険の資格取得日が決まったら、その日以降は新しい保険の資格確認書等を使います。

国民年金は届出不要:前納・口座振替の扱い

厚生労働省(旧社会保険庁)の通知は、就職による第1号から第2号への種別変更について、国民年金法施行規則6条の2に基づき、第1号被保険者からの届出を要さず、就職先から出る厚生年金保険等の資格取得届で種別変更を行うと説明しています。

法人成りでは、法人が年金事務所へ出す資格取得届(役員自身の分を含む)が切り替えのもとになります。市区町村の国民年金窓口に、別途の脱退届を出す必要はありません。資格取得届の期限や書き方は社会保険の資格取得届・資格喪失届で扱っています。

注意が要るのは、国民年金保険料を前納または口座振替にしている場合です。日本年金機構のFAQでは、1年分をまとめて納付して年度途中で就職したときなど、重複して納付したことが分かった場合に、国民年金保険料還付請求書を送ると案内しています。届いたら必要事項を記入して提出します。

口座振替についても、厚生年金の加入手続きには一定の期間がかかるため、就職後にいったん引き落とされることがあり、重複期間の分は後日還付になると案内されています。

家族が国保に残る場合(世帯主の扱い)

配偶者や子を法人の健康保険の被扶養者にできない場合、その家族は国保に残ります。このとき、世帯主が社会保険に入って国保を抜けても、国保料(国保税の自治体では国保税)の納付義務と届出義務は世帯主に残ります。

敦賀市の案内は、世帯主が社会保険に加入していても世帯に国保加入者がいれば世帯主が納税義務者になり、これを擬制世帯主と呼ぶと説明しています。

小城市の案内は、国民健康保険税の根拠として地方税法703条の4を挙げています。敦賀市・小城市は国保税の自治体です。国保料の自治体の日立市も、世帯主が国保に加入していなくても納入通知書は世帯主に送られると案内しています。

国民年金については、被扶養配偶者は第3号被保険者になれます。国民年金法7条1項3号は、第2号被保険者の配偶者で、主として第2号被保険者の収入により生計を維持する20歳以上60歳未満の人としています。日本年金機構は、第3号被保険者の手続きは配偶者の勤務している事業所を通じて行うと案内しています。

  • 被扶養者にならない配偶者は、国民年金の第1号被保険者として市区町村での手続きと保険料の納付が必要です。
  • 被扶養者にしない子は、国保に残ります。国保の世帯の被保険者数が減るので、国保料の計算が変わります。

被扶養者にできる条件(収入基準など)は、加入先の健康保険ごとに決まっています。この記事では条件の金額までは扱いません。

手続きの順番と確認項目

  1. 法人の健康保険・厚生年金の資格取得日を、法人側の届出控えまたは新しい資格確認書等で確認する。
  2. 国保の資格喪失届を、資格取得日から14日以内を目安に市区町村へ出す(郵送・オンラインの可否は自治体で確認)。
  3. 国保料の再計算の通知を受け取り、過不足を精算する。
  4. 国民年金を前納・口座振替にしていた場合は、還付請求書が届いたら提出する。
  5. 被扶養者にしない家族がいる場合は、国保の世帯主と、配偶者の国民年金の種別を確認する。

社会保険料の負担が個人のときと比べてどう変わるかは、国保と協会けんぽの保険料を年収別に比較で試算しています。法人化前の判断段階の方は、法人化シミュレーターで手取りの目安を確認できます。

まとめ

  • 国保は、社会保険の資格取得日から14日以内に、世帯主が市区町村へ脱退届を出す。自動では抜けない。
  • 国保料は月割りで、会社の保険に入った日の前月分まで。月の途中に入ると、その月の分はかからない。
  • 国民年金は、法人の厚生年金の資格取得届で第2号に切り替わり、第1号の届出は要らない。前納分は還付請求書で戻る。
  • 家族が国保に残る場合は世帯主に納付義務が残り、配偶者は被扶養者なら第3号、そうでなければ第1号になる。

次に知りたいこと

公式一次情報

よくある質問

法人成りで社会保険に入ったら、国民健康保険は自動で抜けますか?
自動では抜けません。国民健康保険法施行規則13条により、世帯主が14日以内に市町村へ資格喪失の届書を出します。大阪市住吉区の案内も、届出がないと納付書が届き続けるとしています。
国保料は月の途中で脱退したら日割りになりますか?
日割りではなく月割りです。江東区の案内では、会社の保険に入った日の前月分までを払います。月の途中で入った場合、その月の国保料はかかりません。
国民年金の脱退届は市区町村に出しますか?
就職による第1号から第2号への種別変更は、第1号被保険者の届出を要さず、就職先が出す厚生年金の資格取得届で行われます。市区町村への別の届出は不要です。
国民年金保険料を前納していた場合はどうなりますか?
重複して納付したことが分かると、日本年金機構から国民年金保険料還付請求書が送られます。記入して提出すると還付を受けられます。口座振替で重複分が引き落とされた場合も後日還付とされています。
家族が国保に残る場合、保険料は誰が払いますか?
世帯主です。世帯主が社会保険に入っても、世帯に国保加入者がいれば世帯主が納税義務者になります(擬制世帯主)。
本記事について。専門家監修前の概説です。2026年10月24日時点の法令と、各自治体・日本年金機構の公開情報にもとづく一般的な案内で、個別の社会保険の判断に代わるものではありません。実際の届出は、お住まいの市区町村の窓口、年金事務所、または社会保険労務士へご確認ください。

あわせて読む