法人成りしても国保組合に残れるか|健康保険被保険者適用除外承認申請書
国民健康保険組合(国保組合)にすでに加入している人が法人成りすると、健康保険は原則として協会けんぽへ切り替わります。「健康保険被保険者適用除外承認」を受ければ健康保険だけは国保組合に残れる場合があることを、一次資料にもとづいて整理します。
健康保険法・日本年金機構の制度文芸美術国民健康保険組合や建設業の国保組合など、国保組合にすでに加入している人が法人を作ると、健康保険(医療保険)は原則として協会けんぽへ切り替わります。ただし、一定の要件を満たして「健康保険被保険者適用除外承認」を受ければ、健康保険だけは国保組合に残れる場合があります。この記事では、承認の基本的な要件・手続き・厚生年金保険との関係を一次資料にもとづいて整理します。
国保組合の保険料の仕組みや高さについては「個人事業主の国民健康保険はいくら?」を、社会保険の全喪届・新規適用届の基本手続きについては「法人成りの社会保険|全喪届と新規適用届」を参照してください。この記事は、すでに国保組合に加入している人が法人成りしたときの、健康保険の適用除外承認に絞って整理します。
誰が対象か(前提は「法人化前から組合員」であること)
法人の事業所は、常時使用する従業員数にかかわらず健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります(健康保険法第3条第3項第2号)。そこで働く役員・従業員は原則として協会けんぽ(または勤務先の健康保険組合)と厚生年金保険に加入しますが、健康保険法は一定の承認を受けた者を健康保険の被保険者にしない仕組みも定めています(健康保険法第3条第1項第8号)。
協会けんぽへ切り替えるか国保組合に残るかは、保険料だけでなく給付と家族の扱いでも比べます。協会けんぽ側の傷病手当金・出産手当金と、配偶者・親を健康保険の被扶養者にできるかを確かめ、国保組合側の給付と家族の加入の扱いは加入している組合の案内で確認します。協会けんぽへ切り替える場合の保険料率は都道府県ごとに異なるため、協会けんぽの保険料率が都道府県で変わる仕組みで住所地の水準を確かめてください。
対象になり得るのは、国保組合にすでに加入している個人事業主・一人親方や、その事業所で働く人が、事業を法人化した、または常時5人以上の従業員を使う事業所になったケースです。日本年金機構の様式「健康保険 被保険者適用除外承認申請書(国民健康保険組合被保険者)」により申請します。
複数の国保組合が公開している案内では、健康保険の適用事業所になる「その日」に現に国保組合の被保険者であることが前提とされています。法人化した後にあらためて国保組合へ加入し直して適用除外を受ける、という順序は想定されていません。
申請の流れと提出期限
申請書は、まず加入している国保組合に提出し、「事業運営上必要な者である」ことの証明(理事長印)を受けたうえで、管轄の年金事務所へ提出します。提出期限は、法人設立日や5人以上事業所になった日など事実が発生した日から14日以内です。
日本年金機構の様式は2枚セットになっており、健康保険の適用除外承認申請書と、厚生年金保険の被保険者資格取得届を同時に提出する形です。届出が遅れると、協会けんぽの健康保険の適用除外が承認されない場合があります。
厚生年金保険は適用除外にできない
この適用除外の対象は健康保険(医療保険)だけで、厚生年金保険は適用除外にできず、必ず加入することになります。日本年金機構の申請様式自体、健康保険の「適用除外」と厚生年金保険の「資格取得」を1組の届出として扱っています。
つまり法人成り後は、医療保険は従来どおり国保組合に残しつつ、年金は厚生年金保険に新規加入する、という組み合わせになります。国保組合側も、厚生年金保険には適用除外の仕組みが無く強制加入である旨を案内しています。
承認後に要件を欠いたときの扱い
適用除外承認は「国保組合の被保険者であること」を前提にした仕組みです。退職などでその国保組合の会員資格自体を失えば、適用除外の前提も失われ、健康保険は協会けんぽなどの被用者保険に切り替わります。
組合ごとに確認が必要なこと
ここまでの承認の基本的な考え方(法人化前から組合員であること、厚生年金保険は適用除外にできないこと、提出期限14日)は、複数の国保組合の案内で共通して確認できました。一方で、次の点は組合ごとに異なるため、加入している組合へ個別に確認してください。
- そもそも加入できる業種・地域・世帯の条件:国保組合ごとに対象業種(創作活動、建設業、士業など)や対象地域が異なります。
- 「事業運営上必要な者」の理事長認定の運用:承認の最終判断は組合の理事長が行うため、運用の厳格さは組合によって異なり得ます。
- 資格を失う具体的な事由:退職のほか、対象業種でなくなる、組合の規約が定める地域外への転居など、組合の会員資格の規約によって異なります。
- 保険料額:定額か所得比例かを含め組合ごとに公表額が異なります。特定の金額はここでは断定せず、加入している組合の公表額で確認してください。
まとめ
- 法人の事業所は従業員数にかかわらず健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になるが、あらかじめ国保組合の被保険者だった人は、健康保険だけ「適用除外承認」を受けて組合に残れる場合がある。
- 申請は国保組合の証明を受けたうえで、事実発生から14日以内に管轄の年金事務所へ提出する。
- 厚生年金保険は適用除外にできず、法人成り後は必ず厚生年金保険に加入する。
- 適用除外は組合員資格が続く限りのものであり、組合員資格を失えば健康保険は協会けんぽ等へ切り替わる。加入対象の条件・認定の運用・保険料は組合ごとに異なるため、最終判断は加入している国保組合と管轄の年金事務所に確認する。
法人化した場合の手取り・社会保険料は法人化シミュレーターでまとめて試算できます。役員報酬の金額ごとの比較は役員報酬シミュレーターを、社会保険の全喪届・新規適用届の基本的な流れは、「法人成りの社会保険|全喪届と新規適用届」を参照してください。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「健康保険法」(第3条第1項第8号:厚生労働大臣・健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者は、健康保険の被保険者でないことにより国民健康保険の被保険者であるべき期間に限り被保険者にならないことができる旨。第3条第3項第2号:法人の事業所は常時従業員を使用するものであれば強制適用事業所となる旨。2026-09-19確認)
- 日本年金機構「従業員を採用したとき」(健康保険被保険者適用除外承認申請書のご案内)(国保組合に引き続き加入する場合の適用除外承認申請は、国保組合理事長が認めた場合に限られ、事実発生日から14日以内に提出する必要がある旨。2026-09-19確認)
- 日本年金機構「健康保険 被保険者適用除外承認申請書(国民健康保険組合被保険者)」様式(国保組合理事長の証明欄、健康保険の適用除外承認申請書と厚生年金保険の被保険者資格取得届が1組の様式になっている構成を確認。2026-09-19確認)
- 東京都弁護士国民健康保険組合「健康保険(協会けんぽ)の適用除外承認について」(厚生労働省通知(平成17年12月15日保国発第1215001号)の抜粋として、国保組合の被保険者である者を使用する事業所が法人となる等により適用事業所となる日において現に組合員である者を承認対象とする要件、および厚生年金保険には適用除外の仕組みが無く強制適用となる旨を案内。組合自身による厚労省通知の引用であり、当組合発ではこの通知原文を厚労省サイト上で直接確認できていない。2026-09-19確認)
- 全国建設工事業国民健康保険組合「資格・適用のご案内」(すでに建設国保に加入している個人事業所・一人親方が法人または常時5人以上の事業所を新たに設立した場合、事実発生日から14日以内に日本年金機構へ手続きし、健康保険被保険者適用除外の承認を受ければ引き続き加入できる旨を、別業種の組合の例として案内。2026-09-19確認)
- 東京都弁護士国民健康保険組合「資格喪失について」(適用除外承認を受けて組合に加入している人が、退職や組合規約の定める地区外への転居等により資格を喪失する事由と、いったん協会けんぽに加入すると雇用継続中は再加入できない旨を、一組合の例として案内。2026-09-19確認)
よくある質問
- 国保組合に入っている個人事業主が法人成りすると、健康保険はどうなりますか?
- 原則は協会けんぽ(または勤務先の健康保険組合)への切り替えです。ただし、法人化などで健康保険の適用事業所になる時点ですでに国保組合の被保険者であれば、「健康保険被保険者適用除外承認」を受けて、健康保険だけ国保組合に残れる場合があります。
- 適用除外承認を受ければ、厚生年金保険にも加入しなくてよいですか?
- いいえ。適用除外の対象は健康保険だけで、厚生年金保険は適用除外にできません。日本年金機構の申請様式も、健康保険の適用除外申請と厚生年金保険の資格取得届が1組の届出になっています。
- 適用除外承認の申請はいつまでに、どこへ提出しますか?
- 法人設立日や5人以上事業所になった日など、事実が発生した日から14日以内に、加入している国保組合の証明を受けたうえで、管轄の年金事務所へ提出します。
- いったん適用除外承認を受ければ、ずっと国保組合に残れますか?
- 組合員資格が続く限りは残れますが、退職や組合の対象業種・対象地域から外れるなど、加入している国保組合の会員資格の要件を欠けば、健康保険は協会けんぽなどへ切り替わります。具体的な要件は組合ごとに異なるため、加入している組合に確認してください。