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法人化すると傷病手当金・出産手当金がもらえる|国保にはない協会けんぽの給付

病気・けがで働けないときの傷病手当金、出産で休むときの出産手当金は、協会けんぽ等の健康保険では法律上必ず支給される給付ですが、国民健康保険では市区町村の条例次第の任意給付です。支給要件・支給額・支給期間を、健康保険法・国民健康保険法の条文にもとづき整理します。

協会けんぽ・健康保険法の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

個人事業主は国民健康保険、法人の役員・従業員は協会けんぽ等の健康保険に加入します。保険料の違いはよく比較されますが、見落とされがちなのが給付の違いです。病気・けがで働けなくなったときの傷病手当金、出産で仕事を休むときの出産手当金は、健康保険では要件を満たせば必ず支給される法定給付ですが、国民健康保険では市区町村が条例で定めない限り支給されない任意給付です。

この記事では、協会けんぽの案内と健康保険法・国民健康保険法の条文にもとづき、両手当金の支給要件・支給額・支給期間と、国民健康保険との違いを整理します。入院や高額な治療のときの自己負担の上限は、「法人化すると高額療養費の限度額はどう決まるか」で扱っています。

傷病手当金:病気・けがで働けないときの給付

傷病手当金は、健康保険法99条1項により、被保険者が療養のため労務に服することができないとき、労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、労務に服することができない期間について支給されます。最初の3日間は「待期」と呼ばれ支給対象外で、4日目以降が対象です。協会けんぽの案内では、業務外の病気・けがであること、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業期間について給与の支払いがないことが要件として整理されています。

1日あたりの支給額は、支給を始める日の属する月以前の直近12か月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2です(健康保険法99条2項)。協会けんぽの例では、標準報酬月額の平均が17万円の場合、17万円÷30≒5,670円、5,670円×2/3=3,780円が1日あたりの支給額になります。

支給期間は、健康保険法99条4項により、同一の疾病・負傷については、支給を始めた日から通算して1年6か月です。令和4年1月の改正により、途中で就労した期間があっても、実際に休んだ日数の通算で1年6か月まで受給できるようになりました。

出産手当金:出産で休むときの給付

出産手当金は、健康保険法102条1項により、出産の日(出産が予定日後になったときは出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の日後56日までの間で、労務に服さなかった期間について支給されます。出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間も支給対象に含まれます。

出産手当金は給付の話で、産前産後休業中の社会保険料の免除は別の制度です。免除の要件と役員の扱いは、「一人社長・役員の産休と育休で社会保険料は免除されるか」を参照してください。

1日あたりの支給額は、傷病手当金と同じ「直近12か月間の標準報酬月額の平均額の30分の1に相当する額の3分の2」で計算されます(健康保険法102条2項が99条2項を準用)。給与が一部支給される場合でも、その日額が出産手当金の日額より少なければ、差額が支給されます。

国民健康保険にはなぜ無いのか

国民健康保険法58条は、給付を1項(出産育児一時金・葬祭費)と2項(傷病手当金等)に分けています。同法58条2項は「市町村及び組合は、前項の保険給付のほか、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる」と定めており、傷病手当金・出産手当金は市区町村・国保組合が条例・規約で定めた場合にだけ実施できる任意給付です。健康保険法99条・102条の「支給する」という義務的な規定とは異なり、実施するかどうかは市区町村・国保組合の判断に委ねられています。

実際にどの程度の市区町村が常設の制度として実施しているかについて、本記事が確認できた一次資料に全国集計はありません。新型コロナウイルス感染症の影響で休業した国民健康保険の被保険者を対象に、時限的に傷病手当金を支給した市区町村が多くあった例はありますが、これは特例的な措置であり、通常時から恒久的な制度として傷病手当金・出産手当金を実施しているかどうかは、加入先の市区町村・国保組合へ個別に確認する必要があります。

法人化後の受給の注意点(必ずもらえるわけではない)

要確認:傷病手当金・出産手当金は「被保険者」への給付であり、支給要件を満たすかどうかは個々の状況によります。特に法人化直後は次の点を確認してください。
  • 支給額の計算は「支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均」を使うため、法人成りして間もなく標準報酬月額の実績が12か月に満たない場合、協会けんぽの案内にあるとおり、実績のある月数の平均額と、協会けんぽ全体の平均標準報酬月額のいずれか低い額をもとに計算される場合があります(具体的な計算方法の適用条件は、加入時期に応じて協会けんぽへ確認してください)。
  • 代表取締役など経営者自身が労務不能であっても、業務を全く行っていないと客観的に判断できない場合は、傷病手当金の支給要件である「労務に服することができない」に該当しないと判断されることがあります。役員としての傷病手当金の扱いは、確認できた一次資料に明文の一般的基準がなく、本記事では扱いません。
  • 出産手当金は、資格喪失後の継続給付を受ける場合を除き、出産日時点で被保険者であることが前提です。法人成りのタイミングと出産予定日の関係によっては、切り替えのタイミングに注意が必要です。

個別の状況での支給可否・金額は、加入する協会けんぽの支部または健康保険組合に確認することをおすすめします。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに異なるため、保険料の水準は協会けんぽの保険料率が都道府県で変わる仕組みもあわせて確かめてください。

まとめ

  • 傷病手当金は、業務外の病気・けがで働けないとき、待期3日を経過した4日目以降、通算1年6か月まで支給される(健康保険法99条)。
  • 出産手当金は、出産日以前42日(多胎98日)〜出産日後56日の労務に服さなかった期間支給される(健康保険法102条)。
  • 1日あたりの支給額は、いずれも「直近12か月の標準報酬月額の平均額÷30×2/3」で計算される(健康保険法99条2項・102条2項)。
  • 国民健康保険は、市区町村・国保組合が条例・規約で定めた場合にだけ傷病手当金等を実施できる任意給付(国民健康保険法58条2項)。健康保険の「支給する」という義務的な規定とは異なる。
  • 法人化すれば無条件にもらえるわけではなく、標準報酬月額の実績期間、役員としての労務不能の判断、出産手当金の被保険者要件など、個別に確認すべき点がある。

社会保険料そのものの比較は、「マイクロ法人で社会保険料はいくら安くなる」を参照してください。個人事業主と法人の制度全体の違いは、個人事業主と法人の違いで確認できます。

公式一次情報

  • 協会けんぽ「傷病手当金」(支給要件、支給額の計算例(標準報酬月額平均17万円→日額3,780円)、支給期間(通算1年6か月)を掲載。2026-09-15確認)
  • 協会けんぽ「出産手当金」(支給要件、支給期間(出産日以前42日〈多胎98日〉〜出産日後56日)、支給額の計算式(標準報酬月額の30分の1×3分の2)を掲載。2026-09-15確認)
  • e-Gov法令検索「健康保険法」(第99条:傷病手当金の支給要件(1項)・支給額の計算式(2項)・支給期間(4項)、第102条:出産手当金の支給要件(1項)・支給額計算の準用(2項)を規定。2026-09-15確認)
  • e-Gov法令検索「国民健康保険法」(第58条2項:市町村及び組合は、条例又は規約の定めるところにより傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができることを規定(任意給付)。2026-09-15確認)

よくある質問

個人事業主のままでは傷病手当金・出産手当金はもらえませんか?
国民健康保険法58条2項により、傷病手当金は市区町村・国保組合が条例・規約で定めた場合にだけ支給される任意給付です。健康保険(協会けんぽ等)のように要件を満たせば必ず支給される法定給付ではないため、加入している市区町村・国保組合が実施しているかを個別に確認する必要があります。
傷病手当金はいくらもらえますか?
1日あたり、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2です(健康保険法99条2項)。協会けんぽの例では、標準報酬月額の平均17万円の場合、1日あたり約3,780円になります。
出産手当金はいつからいつまでもらえますか?
出産の日(出産が予定日より後になったときは出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の日後56日までの間で、労務に服さなかった期間が対象です(健康保険法102条1項)。
法人化すれば代表者自身も必ずもらえますか?
断定できません。傷病手当金は「労務に服することができない」ことが要件で、代表取締役が業務を続けている実態があると判断されると、支給要件を満たさない場合があります。個別の判断は加入する協会けんぽの支部に確認してください。
本記事について。社会保険労務士監修前の概説です。標準報酬月額の実績期間や役員の労務不能の判断など個別事情により結論が異なるため、実際の支給可否・金額は加入する協会けんぽの支部・健康保険組合にご確認ください。