株式会社の商号(会社名)の決め方|使える文字・類似商号調査は必要か
会社法が定める商号の基本ルール、使える文字・符号、そして「類似商号調査は必要か」という疑問を条文と法務省の公式情報で整理します。
法人化(法人成り)法人化(法人成り)の準備で最初に決めることが多いのが商号(会社名)です。商号は原則自由に決められますが、会社の種類を示す文字を含める義務や、使える文字・符号の制限があります。
「同じ名前の会社が既にあったら登記できないのでは」という不安から類似商号調査を検討する人もいますが、この規制は2006年の会社法施行で廃止されています。本記事では、商号のルールと、現在も確認が必要な範囲を条文で整理します。
商号は原則自由。ただし会社の種類の文字は必須
会社法6条1項は、会社はその名称を商号とすると定めています。商号に使う言葉自体に大きな制限はなく、事業内容と無関係な名称でも構いません。
ただし同条2項により、株式会社であれば商号中に「株式会社」の文字を、合同会社であれば「合同会社」の文字を用いなければなりません。さらに同条3項は、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を商号中に用いることを禁止しています(例:合同会社なのに商号に「株式会社」を含めることはできません)。会社形態そのものの選び方は合同会社と株式会社の違いで比較しています。
商号は定款の記載事項でもあります。定款作成から設立登記までの全体の流れは法人化の手続きで確認できます。
使える文字・符号は告示で限定されている
商号の登記に使用できる文字・符号は、商業登記規則50条にもとづく法務省告示(平成14年7月31日、同年11月1日施行)で定められています。使用できるのは漢字・ひらがな・カタカナに加え、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字、そして「&」「'」「,」「-」「.」「・」の符号です。
これらの符号には使い方の制限があります。符号は字句を区切る際に使用する場合に限られ、商号の先頭または末尾に用いることはできません(ピリオドのみ、省略を表す場合は末尾での使用が認められています)。またローマ字で複数の単語を表記する場合に限り、単語の間にスペース(空白)を使うことができます。
告示に定められている符号は上記に限られるため、括弧やローマ数字などは商号に使用できません。
類似商号調査は不要。必要なのは「同一商号×同一本店所在地」の確認
かつての商法には、同一市区町村内で同じ事業目的の類似した商号を持つ会社は登記できないという「類似商号規制」がありました。この規制は2006年(平成18年)5月施行の会社法により廃止されています。
現行制度で商号登記ができないのは、商業登記法27条が定める1つのケースだけです。同条は、商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつその本店所在地も当該他人の商号の登記に係る本店所在地と同一であるときは、登記をすることができないと定めています。つまり本店所在地が異なれば、同一または類似した商号でも登記自体は可能です。
- 調査すべきは「類似」ではなく「同一商号×同一本店所在地」の有無に絞られる。
- 本店所在地を賃貸オフィス・バーチャルオフィスにする場合、同じ住所を過去に使っていた会社の商号が残っていないか確認しておくと安全(住所の選び方は本店所在地の決め方を参照)。
不正の目的で他社と誤認されるおそれのある商号は禁止
本店所在地が異なれば同一・類似の商号でも登記自体は通りますが、それとは別に会社法8条1項が、不正の目的をもって他の会社であると誤認されるおそれのある名称・商号を使用してはならないと定めています。
同条2項により、この規定に違反する名称・商号の使用によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある会社は、侵害の停止または予防を請求できます。登記が通ったこと自体は、他社との誤認・トラブルが起きないことを保証するものではない点に注意が必要です。
まとめ
- 商号は原則自由に決められる(会社法6条1項)が、会社の種類の文字(株式会社等)を含める必要があり、他の種類の会社と誤認される文字は使えない(同条2項・3項)。
- 使える文字・符号は法務省告示で限定される。符号は字句を区切る場合のみ使用でき、先頭・末尾には使えない(商業登記規則50条告示)。
- 2006年施行の会社法により、旧来の類似商号規制は廃止された。現在登記できないのは「同一商号×同一本店所在地」の場合のみ(商業登記法27条)。
- 本店所在地が違えば登記は通っても、不正目的で他社と誤認されるおそれのある商号の使用は会社法8条で禁止され、差止請求の対象になり得る。
商号を決めたら、次は法人化の手続きで定款作成から設立登記までの流れを確認してください。個人事業主の屋号との違いは屋号の決め方・商号登記との違いで整理しています。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「会社法第6条(商号)」(会社の種類の文字を商号中に用いる義務、他種類会社と誤認される文字の禁止)
- e-Gov法令検索「会社法第8条」(不正の目的をもって他の会社であると誤認されるおそれのある名称・商号の使用禁止、差止請求)
- e-Gov法令検索「商業登記法第27条(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)」(同一商号かつ同一本店所在地の場合のみ登記不可)
- 法務省「商号にローマ字等を用いることについて」(使用できる符号の種類と、区切り符号としての使用制限)
よくある質問
- 商号は自由に決められますか?
- 原則自由ですが、会社の種類(株式会社・合同会社等)を示す文字を必ず含める必要があります。他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字も使えません(出典:e-Gov法令検索・会社法6条2項・3項)。
- 商号にひらがなや記号は使えますか?
- 漢字・ひらがな・カタカナに加え、ローマ字・アラビア数字、「&」「'」「,」「-」「.」「・」の符号が使用できます。ただし符号は字句を区切る場合に限られ、商号の先頭・末尾には使えません(出典:法務省「商号にローマ字等を用いることについて」)。
- 類似商号調査は必要ですか?
- 2006年施行の会社法により、旧来の類似商号規制は廃止されました。現在、登記できないのは他人が既に登記した商号と同一であり、かつ本店所在地も同一である場合だけです(出典:e-Gov法令検索・商業登記法27条)。
- 同じ商号を使う会社があっても大丈夫ですか?
- 本店所在地が異なれば登記自体はできますが、不正の目的で他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使うことは会社法8条で禁止されており、損害賠償請求や差止請求の対象になり得ます(出典:e-Gov法令検索・会社法8条)。