事務所の敷金・礼金・更新料の経理処理(繰延資産と20万円未満の特例)
法人で事務所を借りるとき、敷金は返ってくる前提のお金、礼金は返ってこないお金です。返還の有無で、税務上の扱いは大きく変わります。権利金や礼金が繰延資産になる条件、償却期間の決め方、20万円未満なら全額を損金にできる特例を説明します。
法人税・経費事務所を借りる初期費用は、家賃、敷金、礼金、仲介手数料などに分かれます。全部を一括で経費にできるわけではなく、お金の性質ごとに処理が分かれます。
返還される敷金は経費ではなく、返還されない礼金や権利金は、支出の効果が1年以上に及ぶなら繰延資産として数年に分けて損金にする、というのが基本の考え方です。仲介手数料はその期の損金にできます。
返還される敷金の扱い
契約が終われば返ってくる敷金は、費用として支出したお金ではなく、貸主に預けているお金です。このため、法人税の所得計算でも経費にはなりません。帳簿には差入保証金などの資産として載せるのが一般的です。
繰延資産は、法人が支出する費用が対象です(法人税法施行令14条1項)。返還されるお金は費用に当たらないため、繰延資産にもなりません。
退去時に原状回復費用などで差し引かれる部分は、差し引かれることが確定した時点で費用になります。契約で返還されない額があらかじめ決まっている場合は、その部分の性質を次の権利金等の考え方で確認します。
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礼金・権利金は繰延資産になる
国税庁タックスアンサーNo.5460は、法人が建物を賃借するために支払った権利金、立退料などの費用で、支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶものは繰延資産になるとしています。法人税法施行令14条1項6号ロの「資産を賃借するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用」が根拠です。
法人税基本通達8-1-5は、建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用を、この繰延資産の例に挙げています。礼金は、貸主に返還を求めない一時金のため、実務ではこの権利金等と同じ枠で検討します。
償却期間と毎年の損金算入額
繰延資産になる権利金等の償却期間は、法人税基本通達8-2-3と国税庁の案内で次のとおり決まっています。
| 権利金等の内容 | 償却期間 |
|---|---|
| 新築建物の所有者に払い、金額が賃借部分の建設費の大部分に相当し、建物の存続期間中賃借できる状況のもの | 建物の耐用年数の10分の7 |
| 契約や慣習で、明渡しの際に借家権として転売できるもの | 賃借後の見積残存耐用年数の10分の7 |
| 上の2つ以外 | 5年(賃借期間が5年未満で、更新の際に再び権利金等の支払が必要なことが明らかなときは、その賃借期間) |
多くの事務所の礼金は、3番目の「上の2つ以外」に当たります。償却期間に1年未満の端数があれば切り捨てます。
毎年の償却限度額は、繰延資産の額を償却期間の月数で割り、その事業年度の月数を掛けた金額です。期の途中で支払った場合は、支出の日から事業年度末までの月数で計算します。1か月に満たない端数は1か月とします。
たとえば礼金が60万円で償却期間が5年(60か月)なら、1か月あたり1万円です。支払いが期の途中で、その期に6か月分あるなら、その期の償却限度額は6万円になります。償却費を損金にするには、確定申告書に別表16(6)を添付します。
20万円未満なら全額を損金にできる
施行令134条は、繰延資産となる費用のうち、1回に支出する金額が20万円未満のものについて、支出した日の属する事業年度に損金経理をしたときは、その金額を損金の額に算入するとしています。
礼金や権利金が20万円未満なら、支払った期に全額を費用として処理する選択ができます。この特例は損金経理が条件なので、帳簿上も費用に計上します。
金額の判定は支出ごとに行うため、固定資産の少額減価償却資産の考え方とは別です。固定資産側の判定は少額の減価償却資産の特例で確認できます。
繰延資産の全般的な考え方は繰延資産の基本でも扱っています。
更新料と仲介手数料
仲介手数料は、国税庁タックスアンサーNo.5460と通達8-1-5の注で、支払った日の属する事業年度の損金にできるとされています。繰延資産にする必要はありません。
更新料については、法人税基本通達8-1-5に更新料という語はなく、国税庁の案内でも個別の取扱いは示されていません。償却期間の表が「更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかなとき」を想定していることから、更新のたびに支払う一時金は、権利金等として繰延資産になるか、賃借期間に対応する前払費用になるかを、契約の内容から判断することになります。
消費税の扱い
国税庁タックスアンサーNo.6225によると、事務所などの建物の賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金、更新料のうち、返還しないものは、権利の設定の対価として課税の対象です。契約の終了で返還される保証金や敷金は、資産の譲渡等の対価ではないため、課税の対象になりません。
住宅用の賃貸借の場合は、返還しないものも非課税です。事務所として借りるなら、返還されない礼金や更新料には消費税がかかります。借りる側の課税仕入れの考え方は消費税の取引区分でも確認できます。
まとめ
- 返還される敷金は経費にならず、差入保証金などの資産として載せる。
- 返還されない礼金や権利金は、効果が1年以上に及ぶなら繰延資産になる。
- 償却期間は多くの場合5年で、賃借期間が5年未満かつ更新時に再び支払が必要なことが明らかなら、その賃借期間になる。
- 1回の支出が20万円未満で、その期に損金経理すれば全額を損金にできる。
- 仲介手数料は支払った期の損金にできる。更新料は契約内容から判断する。
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公式一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.5460 建物を賃借するための権利金等(繰延資産の該当・償却期間・仲介手数料。2026-10-13確認)
- 国税庁 法人税基本通達 第1節 繰延資産の意義及び範囲等(8-1-5。2026-10-13確認)
- 国税庁 法人税基本通達 第2節 繰延資産の償却期間(8-2-3。2026-10-13確認)
- 法人税法施行令 第14条・第64条・第134条(繰延資産の範囲・償却限度額・20万円未満の損金算入。2026-10-13確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など(消費税の課税関係。2026-10-13確認)
よくある質問
- 事務所の敷金は経費にできますか?
- 契約終了で返還される敷金は、費用ではなく預けているお金のため、経費にはなりません。差し引かれることが確定した部分は、その時点で費用になります。
- 礼金は一括で経費にできますか?
- 支出の効果が1年以上に及ぶ礼金は、繰延資産として償却期間に分けて損金にします。ただし1回の支出が20万円未満で損金経理をすれば、その期に全額を損金にできます。
- 礼金の償却期間は何年ですか?
- 多くの場合は5年です。賃借期間が5年未満で、更新時に再び権利金等の支払が必要なことが明らかなときは、その賃借期間になります。
- 仲介手数料も繰延資産になりますか?
- なりません。建物の賃借に際して支払った仲介手数料は、その支払った日の属する事業年度の損金にできます。
- 礼金や更新料に消費税はかかりますか?
- 事務所など事業用の建物では、返還しないものは課税の対象です。住宅用の賃貸借では非課税です。

