旅行業登録の法人成り|基準資産額と営業保証金
個人で旅行業の登録を受けている人が法人成りするときは、法人で登録を申請し直します。観光庁の施行要領と都道府県の案内で、基準資産額、営業保証金、旅行業務取扱管理者、個人の廃業届の期限を整理します。
観光庁の旅行業法施行要領と都道府県の案内で確認旅行業を個人で登録している人が法人成りするとき、変更手続きではなく、法人が登録を申請し直します。観光庁の旅行業法施行要領に、個人営業を法人営業に改める場合の扱いとして明記されています。
旅行業の登録には、基準資産額と営業保証金(または協会への分担金)という、お金の要件があります。この記事では、法人で申請するときに用意する額と、個人側の手続きを順に確認します。
登録は申請し直す
観光庁の旅行業法施行要領は、個人営業を法人営業に改める場合は、変更手続きによらず、登録を申請し直す必要があると定めています。事業を他の個人に譲るときも、譲り受ける人が登録を申請し直します。
変更手続きで足りるのは、株式会社と合同会社の間の組織変更のように、法人格の同一性が保たれる場合です。個人から法人への切り替えはこれに当たりません。
法人の登録が済む前に、法人名義で旅行業を始めることはできません。個人の営業をやめる日と、法人の登録日がずれないよう、日程を組んでください。
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基準資産額と設立直後の申請
登録には、登録の区分ごとに基準資産額が決まっています。愛知県と兵庫県の案内に示された額は次のとおりです。
| 登録の区分 | 基準資産額 |
|---|---|
| 第1種 | 3,000万円 |
| 第2種 | 700万円 |
| 第3種 | 300万円 |
| 地域限定 | 100万円 |
旅行業者代理業は、基準資産額を問われません。基準資産額は、資産総額から繰延資産・営業権・不良債権を除き、負債総額と営業保証金(または分担金)を引いて算定します。
法人成りで役立つのは、設立後に最初の決算期を終えていない法人の扱いです。施行要領では、会社設立時の貸借対照表を提出すれば足りるとされています。つまり、資本金など法人へ入れた財産で、基準資産額を満たす形にします。
資本金の決め方は法人の資本金の決め方で整理しています。
営業保証金と分担金
旅行業者は、営業保証金を供託します。旅行業協会(JATAやANTA)の保証社員になる場合は、営業保証金の代わりに弁済業務保証金分担金を協会へ納めます。観光庁の資料では、取引額が2億円未満の場合の額は次のとおりです。
| 登録の区分 | 営業保証金 | 分担金 |
|---|---|---|
| 第1種 | 7,000万円 | 1,400万円 |
| 第2種 | 1,100万円 | 220万円 |
| 第3種 | 300万円 | 60万円 |
地域限定は、取引額によって額が変わります。観光庁の表では、取引額が400万円未満なら営業保証金15万円(分担金3万円)、5,000万円未満なら100万円(分担金20万円)、2億円未満なら300万円(分担金60万円)です。
旅行業者代理業は、代理をする旅行業者が保証を負うため、自身の保証金は不要です。
基準資産額に保証金は含まれません。たとえば第3種で保証社員になる場合、基準資産額300万円のほかに、分担金60万円を協会へ納める資金が要ります。
旅行業務取扱管理者の選任
旅行業者は、営業所ごとに旅行業務取扱管理者を1名以上選任します(旅行業法11条の2)。海外旅行を扱う営業所では、総合旅行業務取扱管理者が必要です。
法人成りのときは、個人の登録で選任していた人を、法人の登録でも選任できるかを確認します。施行要領では、選任する管理者が過去5年以内に旅行業協会の定期研修を受けていないと、登録を拒否される事由になります。新規申請では、次回の研修を受けて修了後に届け出る旨の誓約で足りるとされています。
申請先・手数料・期間
第1種は観光庁長官、第2種・第3種・地域限定・旅行業者代理業は主たる営業所を管轄する都道府県知事に申請します。
- 新規登録の手数料:都道府県で異なります。宮城県は23,000円、愛知県は19,000円、大阪府は20,600円です。
- 標準処理期間:観光庁の通達で60日です。大阪府のように、申請の予約が約1か月先になる運用もあり、そのぶん長くなることがあります。
- 有効期間:登録の日から5年です。更新は期限の2か月前までに申請します。
第1種の登録手数料は、確認できた資料に載っていませんでした。第1種を考えるときは、観光庁の案内で確かめてください。
役員も審査の対象です。法人の役員に、申請前5年以内の不正行為や暴力団員などの欠格事由がある場合、登録は拒否されます(旅行業法6条1項)。申請書類には、役員が欠格事由に当たらない旨の宣誓書が必要です。
個人の廃業届と保証金
個人として旅行業をやめるときは、事業を廃止した日から30日以内に、都道府県へ届け出ます(大阪府の案内)。旅行業の登録抹消日は、廃止の場合は届出日です。
個人が供託した営業保証金は、取り戻せます。官報に取戻しの公告を載せ、公告から6か月が過ぎて債権の申立てがなければ、大阪府の証明書を受けて供託所で手続きします(大阪府の取戻し手続きの案内)。なお、旅行業協会へ納めた分担金は、協会で取戻しの手続きをします。
一方で、登録が抹消された後6か月以内に、承継した者が旅行業者として登録して届け出れば、その営業保証金は新しい登録者のものとみなされます(旅行業法16条)。個人から法人への切り替えで、この承継の扱いを使えるかは、案内からは確認できませんでした。営業保証金の取り戻しと承継のどちらにするかは、廃業届を出す前に、登録先の都道府県へ相談してください。
税務署への廃業届は別の手続きです。書き方は廃業届の書き方で整理しています。
よくある質問
- 個人の旅行業登録を、法人に変更届で引き継げますか?
- 引き継げません。観光庁の旅行業法施行要領は、個人営業を法人営業に改める場合は、変更手続きによらず登録を申請し直す必要があると定めています。
- 設立したばかりの法人でも登録を申請できますか?
- 設立後に最初の決算期を終えていない法人は、会社設立時の貸借対照表を提出すれば足りるとされています。その貸借対照表で、基準資産額を満たす必要があります。
- 第3種旅行業の登録で用意する金額は?
- 基準資産額が300万円です。そのほか、営業保証金300万円、または旅行業協会の保証社員になる場合は分担金60万円を納めます(取引額2億円未満の場合)。
- 個人の廃業届はいつまでに出しますか?
- 事業を廃止した日から30日以内に、登録先の都道府県へ届け出ます。
まとめ
- 個人営業から法人営業へ改めるときは、変更手続きではなく登録を申請し直す。
- 基準資産額は、第1種3,000万円、第2種700万円、第3種300万円、地域限定100万円。
- 基準資産額とは別に、営業保証金または協会への分担金が必要。
- 設立直後は会社設立時の貸借対照表で審査される。
- 個人の廃業届は、事業を廃止した日から30日以内。
次に知りたいこと
個人事業の許認可は法人成りで引き継げるか:建設業・飲食店など許認可ごとの扱い
労働者派遣事業の許可の法人成り:資産要件と申請費用
宅建業免許の法人成り:不動産業の新規申請と保証金
公式一次情報
- 観光庁 旅行業法施行要領(個人から法人への申請し直し・設立時の貸借対照表・管理者の研修。2026-10-22確認)
- 観光庁 営業保証金・弁済業務保証金制度の概要(2026-10-22確認)
- 観光庁 審査基準・標準処理期間について(2026-10-22確認)
- 大阪府 事業の廃止・譲渡等の届出(2026-10-22確認)
- 愛知県 旅行業登録のあらまし(基準資産額・手数料。2026-10-22確認)
- 大阪府 旅行業廃止による営業保証金・分担金の取戻し手続き(官報公告・6か月。2026-10-22確認)

