試用期間中の社会保険・雇用保険・解雇予告の扱い
法人化して初めて従業員を雇うとき、「まず試用期間で様子を見てから保険に入れる」と考えがちです。ところが、社会保険と雇用保険は試用期間でも要件を満たせば加入が必要で、解雇の予告と最低賃金にも試用期間ならではの決まりがあります。ここでは、その決まりを順に説明します。
従業員を雇う試用期間は、本採用の前に適性を見るために設ける期間です。労働基準法には、試用期間を設けるかどうかの定めはありません。
この記事では、試用期間だからといって外れない保険と、試用期間だけに設けられた例外を、社会保険・雇用保険・解雇予告・最低賃金の順に確認します。
4つの制度の比較
| 制度 | 試用期間中の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 | 報酬が支払われれば使用関係が認められ、加入の対象 | 日本年金機構 |
| 雇用保険 | 雇用関係があり適用要件を満たす就労なら被保険者 | 厚生労働省(労働局)の資料 |
| 解雇の予告 | 14日を超えて使用するまでは、予告の規定が適用されない | 労働基準法第21条第4号 |
| 最低賃金 | 労働局長の許可を受けた場合に限り、減額の特例がある | 最低賃金法第7条第2号 |
上の2行は「試用期間でも外れない」もの、下の2行は「試用期間に特有の例外」です。
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社会保険(健康保険・厚生年金保険)
日本年金機構の「適用事業所と被保険者」のページは、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方が被保険者になると説明しています。ここでいう使用関係は、雇用契約書の有無とは関係なく、適用事業所で働いて労務の対償として給与や賃金を受けることです。
同じページに、試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められるとの記載があります。試用期間であることを理由に加入を待つ根拠は、同ページには示されていません。
事業主の届出は、日本年金機構の「就職したとき」のページで、事実の発生から5日以内とされています。法人は社長1人でも社会保険の適用事業所になるため、従業員を雇うときの手続きは法人成りの社会保険の記事から確認できます。パートの加入の拡大は短時間労働者の適用拡大の記事にまとめています。
雇用保険
厚生労働省の労働局が公表している被保険者の範囲の資料には、試用期間中の者について「本採用決定前の試用期間中であっても、雇用関係が存在し、適用要件を満たした就労であれば被保険者となります」と書かれています。
加入の基準(週の所定労働時間と31日以上の雇用見込み)と届出の期限は、雇用保険の加入条件の記事で確認できます。試用期間の長さではなく、実際の所定労働時間と雇用の見込みで判断する点が、社会保険と共通しています。
解雇の予告と14日の例外
労働基準法第20条は、労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払うよう定めています。
第21条は、予告の規定が適用されない労働者を並べています。その第4号が「試の使用期間中の者」です。ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、この例外から外れます。
つまり、入社から14日を超えたあとの解雇には、30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いが必要になります。この条文は予告の手続きを定めたもので、解雇そのものが認められるかどうかは別の問題です。個別のケースは労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。
最低賃金の減額特例
最低賃金法第7条は、使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、一定の労働者について最低賃金額を減額できると定めています。対象の第2号が「試の使用期間中の者」です。
許可を受けないまま、試用期間だからという理由で最低賃金を下回る賃金を払うことはできません。減額する場合の許可の手続きと減額の幅は、都道府県労働局に確認してください。
公式一次情報
- 日本年金機構 適用事業所と被保険者(2026-10-16確認)
- 日本年金機構 就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き(2026-10-16確認)
- 愛知労働局(厚生労働省) 雇用保険の被保険者について(第4章)(2026-10-16確認)
- e-Gov法令検索 労働基準法(第20条・第21条)(2026-10-16確認)
- e-Gov法令検索 最低賃金法(第7条)(2026-10-16確認)
まとめ
試用期間中でも、報酬が払われ要件を満たせば社会保険と雇用保険の加入対象です。試用期間に特有の例外は、解雇予告の規定が14日を超えるまで適用されないこと(労働基準法第21条第4号)と、労働局長の許可を受けた場合の最低賃金の減額特例(最低賃金法第7条第2号)の2つです。
次に知りたいことは、社会保険の手続き、雇用保険の加入条件、従業員のマイナンバーの取扱いの記事で確認できます。
よくある質問
- 試用期間中は社会保険に入れなくてもよいですか?
- 日本年金機構は、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められるとしています。適用事業所で常用的に使用される人は、加入の対象になります。
- 試用期間中でも雇用保険に入る必要がありますか?
- 厚生労働省の労働局の資料は、試用期間中であっても、雇用関係があり適用要件を満たす就労なら被保険者になるとしています。
- 試用期間中なら、いつでも予告なしに解雇できますか?
- 労働基準法第21条第4号により、試用期間中の者には解雇予告の規定が適用されません。ただし、14日を超えて引き続き使用された場合は適用されます。解雇が認められるかどうかは別に判断されます。
- 試用期間中は最低賃金を下回ってよいですか?
- 最低賃金法第7条第2号の特例は、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、減額できるとするものです。許可がないまま下回ることはできません。
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