設備の用途を3年以内に変えたときの消費税の調整
課税売上のためだけに買った100万円以上の設備を3年以内に非課税の事業へ回すと、控除した消費税の全部または一部を戻します。逆に回したときは加算します。
国税庁の制度賃貸用の建物や販売用の機械など、買った時点では「課税売上のためだけ」に使うつもりだった設備を、あとから住宅の貸付けなど非課税の取引に使うことがあります。買ったときに全額控除した消費税は、そのままでは控除しすぎになります。
この差を埋めるのが、消費税法34条(課税業務用から非課税業務用への転用)と35条(非課税業務用から課税業務用への転用)の調整です。対象、期間ごとの割合、計算例を、条文と国税庁の通達にもとづいて整理します。
調整が必要になる転用の組合せ
調整の対象は、税抜100万円以上の調整対象固定資産(建物、機械装置、車両、器具備品など)です。仕入れの消費税を個別対応方式で計算し、その資産を「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」または「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分していた場合に、買った日から3年以内に反対側の業務へ使ったときが対象です(消費税法34条・35条)。
用途の区分は3つあります。課税売上だけに使う「課税業務用」、非課税売上だけに使う「非課税業務用」、両方に使う「課税非課税共通用」です。国税庁の通達は、調整が入る転用と入らない転用を次のように分けています。
| 転用の向き | 調整 | 条文 |
|---|---|---|
| 課税業務用 → 非課税業務用 | あり(仕入控除税額から控除) | 34条 |
| 課税業務用 → 共通用 | なし | 通達12-4-1 |
| 共通用 → 非課税業務用 | なし | 通達12-4-1 |
| 非課税業務用 → 課税業務用 | あり(仕入控除税額に加算) | 35条 |
| 非課税業務用 → 共通用/共通用 → 課税業務用 | なし | 通達12-5-1 |
ただし、課税業務用の資産をいったん共通用にして、その後に非課税業務用にしたときは、34条の調整が入ります。非課税業務用から共通用を経て課税業務用にしたときも、35条が適用されます(通達12-4-1・12-5-1の注)。
比例配分法だけで仕入控除税額を計算する事業者は、この区分自体を使わないため、34条・35条の対象になりません。課税売上割合が動いたときの別の調整は課税売上割合が著しく変動したときの調整で扱っています。個別対応方式と一括比例配分方式の違いは課税売上割合と95%ルールで確認できます。
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転用した時期で決まる調整額の割合
転用した日が、資産の課税仕入れの日から1年以内か、1年超2年以内か、2年超3年以内かで、調整額が100%・3分の2・3分の1に分かれます。調整額の元になるのは、その資産の課税仕入れ等に係る消費税額(調整対象税額)です。
| 転用した日 | 調整額 |
|---|---|
| 課税仕入れの日から1年を経過する日まで | 調整対象税額の全額 |
| その翌日から1年を経過する日まで(2年目) | 調整対象税額の3分の2 |
| さらにその翌日から1年を経過する日まで(3年目) | 調整対象税額の3分の1 |
| 3年を超えたあと | 調整なし |
期間は課税期間ではなく、課税仕入れの日から数えます。調整は、転用した日の属する課税期間の申告で行います(消費税法34条1項・35条1項)。
課税用から非課税用へ転用した場合の計算例
例(課税業務用の機械を非課税業務用へ転用):税抜600万円の機械を課税業務用として買い、その課税仕入れ等に係る消費税額(国税7.8%分)は600万円×7.8%=46万8,000円で、全額を控除しました。調整対象税額はこの46万8,000円です。
- 買って1年以内に非課税業務用へ転用:46万8,000円を転用した日の属する課税期間の仕入控除税額から控除します。
- 買って1年超2年以内に転用:46万8,000円×2/3=31万2,000円を控除します。
- 買って2年超3年以内に転用:46万8,000円×1/3=15万6,000円を控除します。
控除額が仕入控除税額より大きく、控除しきれない金額が出たときは、その金額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして、課税標準額に対する消費税額に加算します(消費税法34条2項)。上の数字は説明用です。実際の申告は国税庁の様式と手引きで確認してください。
個人事業者が課税業務用の資産を家事のために使った場合は、この調整ではなく、使った時点の価額で譲渡があったものとみなされる別の扱いになります(通達12-4-1の注2)。
非課税用から課税用へ転用した場合
反対向きの35条では、同じ割合表を使って調整額を転用した日の属する課税期間の仕入控除税額に「加算」します。非課税業務用として買ったときは控除できなかった消費税の一部を、課税売上に使い始めた分だけあとから控除できる、という考え方です。
条文は、3年以内に課税資産の譲渡等に係る業務の用に供したとき、期間に応じて調整対象税額の全額・3分の2・3分の1に相当する額を仕入れに係る消費税額に加算する、と定めています。
実務で気をつけること
- 用途区分の記録を残す。買った時点でどの区分にしたか、いつ用途を変えたかを固定資産台帳に書いておくと、転用した日と調整額を後から追えます。
- 免税や簡易課税の期間をまたぐ場合。買った課税期間と転用した課税期間の間に免税事業者や簡易課税の期間が含まれていても、34条・35条は適用されます(通達12-4-2・12-5-2)。
- 賃貸の用途変更は特に確認する。店舗として貸していた建物を住宅として貸すように変えると、課税売上から非課税売上へ用途が変わります。変更前に、買った日からの経過年数を確認してください。
個別の資産や用途の判定は、税務署か税理士にご確認ください。
次に知りたいこと:課税売上割合が著しく変動したときの調整/高額特定資産を取得すると消費税の3年縛りになる/会社の車・機械を売却・下取り・廃棄したときの消費税
まとめ
- 税抜100万円以上の調整対象固定資産を個別対応方式で全額課税用(または非課税用)に区分し、3年以内に反対側の業務へ使うと調整が入る。
- 課税用から非課税用への転用は控除、非課税用から課税用への転用は加算。
- 調整額は、課税仕入れの日から1年以内が全額、2年目が3分の2、3年目が3分の1。
- 共通用が間に入る転用や、比例配分法だけの計算では、この調整の対象にならない場合がある。
よくある質問
- 課税用の設備を非課税の事業に使い始めたら、いくら戻しますか?
- 買った日(課税仕入れの日)から1年以内の転用なら調整対象税額の全額、1年超2年以内なら3分の2、2年超3年以内なら3分の1を、転用した日の属する課税期間の仕入控除税額から控除します。
- 課税用の資産を、課税売上と非課税売上の両方に使うようにした場合は調整が必要ですか?
- 課税業務用から共通用への転用だけでは、34条の調整はありません。ただし、その後に非課税業務用へ転用したときは調整が入ります。
- 3年を過ぎてから用途を変えたら調整はありますか?
- 34条・35条の調整は、課税仕入れの日から3年以内に転用した場合に限られます。3年を超えた転用には、この調整はありません。
- 非課税用から課税用に転用したときは、どうなりますか?
- 35条により、同じ割合(全額・3分の2・3分の1)で、転用した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算します。
公式一次情報
- e-Gov法令検索「消費税法」(第34条、第35条)
- 国税庁 消費税法基本通達 第12章第4節「課税業務用から非課税業務用に転用した場合の調整」(12-4-1、12-4-2)
- 国税庁 消費税法基本通達 第12章第5節「非課税業務用から課税業務用に転用した場合の調整」(12-5-1、12-5-2)
- 国税庁「No.6421 課税売上割合が著しく変動したときの調整」(調整対象固定資産の定義)


