ガイド

課税売上割合が著しく変動したときの消費税の調整

100万円以上の設備を買った3年後に、課税売上割合が大きく動いていると、控除した消費税を第3年度の申告で加算・控除し直します。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

機械や車を買った課税期間は、そのときの課税売上割合で仕入税額控除を計算します。ところがその後の3年間で非課税売上(たとえば家賃収入や利子)が増えたり減ったりすると、最初の計算が実態と離れることがあります。

この差を埋めるのが、消費税法33条の「課税売上割合が著しく変動した場合の調整」です。対象になる資産、いつ調整するか、「著しく」の基準、計算例を、国税庁と条文にもとづいて整理します。

調整の対象になる資産と事業者

調整の対象は、棚卸資産以外の資産で、一の取引の単位につき税抜(支払対価の額の110分の100)100万円以上のもの(調整対象固定資産)です。建物とその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具・器具・備品、鉱業権などが挙がっています(消費税法施行令5条)。

事業者の側では、課税事業者であって、その資産の課税仕入れ等の税額を「比例配分法」で計算した場合が対象です。比例配分法とは、個別対応方式で課税資産の譲渡等とその他の資産に共通して要するものに課税売上割合を乗じる方法、または一括比例配分方式をいいます。

課税期間中の課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上のため、仕入れの消費税が全額控除された場合も対象に含まれます(国税庁 No.6421の注2)。課税売上割合そのものの考え方は課税売上割合と95%ルールで確認できます。

買ってから3年以内に用途を課税用から非課税用へ変えた場合の調整は、設備を非課税の業務へ転用したときの調整で扱っています。

名前の似た高額特定資産の3年縛り(税抜1,000万円以上)は、免税事業者に戻れない期間の話で、この調整とは別の制度です。

調整するのは第3年度の課税期間

調整は、資産を買った課税期間(仕入れ等の課税期間)の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間、つまり「第3年度の課税期間」の申告で行います。買った年に調整するのではなく、3年後にまとめて見直す仕組みです。

見直しの材料になるのは「通算課税売上割合」です。買った課税期間から第3年度の課税期間までの各期間に行った資産の譲渡等の対価の合計のうち、課税資産の譲渡等の対価の合計が占める割合で、買った課税期間の割合と比べます。

例(個人事業者が令和8年に機械を買った場合):買った課税期間が令和8年(1月〜12月)なら、その初日(令和8年1月1日)から3年を経過する日は令和10年12月31日で、これが属する令和10年が第3年度の課税期間です。調整が必要なら、令和10年分の消費税の申告で行います。

「著しく」変動したと判定される基準

通算課税売上割合が少し動いただけでは調整しません。政令(消費税法施行令53条)は、増加と減少のそれぞれについて、次の2つの条件を両方満たす場合を「著しく」と定めています。

変動の向き条件1(割合の変化率)条件2(差の大きさ)第3年度の申告での扱い
著しく増加(通算課税売上割合 − 買った課税期間の割合)が、買った課税期間の割合の50%以上通算課税売上割合 − 買った課税期間の割合が5%以上仕入控除税額に加算
著しく減少(買った課税期間の割合 − 通算課税売上割合)が、買った課税期間の割合の50%以上買った課税期間の割合 − 通算課税売上割合が5%以上仕入控除税額から控除

たとえば買った課税期間の割合が100%なら、通算課税売上割合が50%以下になれば条件1を満たし、差も5%以上ですから「著しく減少」に当たります。割合が95%から90%に下がった程度では、条件1(95%の半分以下)を満たさないため調整しません。

買った課税期間に課税売上がゼロで、その後に課税売上が出た場合は割合の変化率を計算できません。この場合は、通算課税売上割合が5%以上なら「著しく増加」に当たるものとして扱われます(消費税法基本通達12-3-2)。

加算・控除の計算例

調整額は、第3年度の末日に保有している調整対象固定資産ごとの「調整対象基準税額」(その資産の課税仕入れ等に係る消費税額。国税の7.8%分)を使って計算します。

調整額は、調整対象基準税額に通算課税売上割合を乗じた額と、調整対象基準税額に買った課税期間の課税売上割合を乗じた額との差です。買った課税期間に全額が控除された場合は、基準税額そのものを後者として扱います(消費税法33条1項)。

例1(著しく減少:控除):買った課税期間は課税売上割合100%で全額控除、機械は税抜500万円。調整対象基準税額は500万円×7.8%=39万円です。第3年度までの通算課税売上割合が30%になったとします。

  • 減少の判定:(100%−30%)÷100%=70%(50%以上)、差は70ポイント(5%以上)で、条件を両方満たします。
  • 控除する金額:39万円 −(39万円×30%)=27万3,000円。これを第3年度の仕入控除税額から控除します。

例2(著しく増加:加算):買った課税期間は課税売上割合20%、同じ機械で調整対象基準税額39万円。通算課税売上割合が80%になったとします。

  • 増加の判定:(80%−20%)÷20%=300%(50%以上)、差は60ポイント(5%以上)で、条件を両方満たします。
  • 加算する金額:(39万円×80%)−(39万円×20%)=31万2,000円−7万8,000円=23万4,000円。これを第3年度の仕入控除税額に加算します。

減少の場合に控除しきれない金額があるときは、その金額を第3年度の課税標準額に対する消費税額に加算します(消費税法33条3項)。上の例は説明用の数字です。実際の申告は、通算課税売上割合の端数の扱いも含めて、国税庁の様式と手引きで確認してください。

調整が不要になる場合

第3年度の課税期間の末日に、その調整対象固定資産を保有していなければ調整は不要です。除却、廃棄、滅失または譲渡をして手元にない場合が当たります(消費税法基本通達12-3-3)。

機械や車を3年以内に売却したときは、調整ではなく売却そのものの消費税が論点になります。会社の車・機械を売却・下取り・廃棄したときの消費税で扱っています。

一方、買った課税期間と第3年度の間に免税事業者だった期間や簡易課税を適用した期間があっても、調整そのものが外れるわけではありません。その期間の資産の譲渡等の対価も通算課税売上割合の計算に含めます(基本通達12-3-1)。簡易課税の基本は簡易課税と本則課税の違いで確認できます。

実務で気をつけること

  • 買った時点で将来の見込みを置いておく。貸付用の不動産や金融取引など、非課税売上が大きく動きやすい事業では、購入時に3年分の売上構成の見込みをメモしておくと、第3年度に慌てません。
  • 資産ごとの台帳を残す。調整は資産ごとの調整対象基準税額で計算するため、取得した課税期間、税抜価額、控除した税額を固定資産台帳と一緒に残しておきます。
  • 還付を受けた設備投資は特に確認する。大きな設備投資で消費税の還付申告をした場合、3年後に課税売上割合が下がると、返った分の一部を第3年度で取り戻される形になります。

個別の資産や期間をまたぐ計算は、税務署か税理士にご確認ください。

次に知りたいこと:高額特定資産を取得すると消費税の3年縛りになる/課税売上割合に準ずる割合の承認申請/貸倒れの消費税の控除

まとめ

  • 税抜100万円以上の調整対象固定資産を、比例配分法または全額控除で仕入税額控除した場合、買った課税期間から3年を経過する日の属する課税期間(第3年度)で割合を見直す。
  • 「著しく」とは、割合の変化が買った課税期間の割合の50%以上で、かつ差が5%以上の場合。
  • 増加なら加算、減少なら控除。控除しきれない額は課税標準額に対する消費税額へ加算する。
  • 第3年度の末日に資産を保有していなければ調整は不要。

よくある質問

調整対象固定資産は何円以上の資産ですか?
棚卸資産以外の資産で、一の取引の単位につき税抜(支払対価の額の110分の100)100万円以上のものです。建物、機械装置、車両、工具器具備品などが含まれます。
調整はいつの申告で行いますか?
資産を買った課税期間の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間(第3年度の課税期間)の申告で行います。買った年には行いません。
課税売上割合が少し下がっただけでも調整が必要ですか?
少しの変動では不要です。買った課税期間の割合との差が、その割合の50%以上で、かつ5%以上ある場合に限り「著しく」変動したとされます。
第3年度までに資産を売却したら調整は必要ですか?
第3年度の課税期間の末日に保有していなければ調整はありません。除却、廃棄、滅失、譲渡のいずれでも同じです。

固定資産の購入で控除しきれない消費税等が残るときの税務上の処理は控除対象外消費税額等の処理で扱っています。

公式一次情報

本記事について。税理士監修前の概説です。制度・要件は改正される場合があります。個別の判断は税務署または専門家へご確認ください。