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有価証券の帳簿価額の算出方法の届出書|移動平均法と総平均法・届出期限

法人が株式や投資信託を売ったときの原価を決める「一単位当たりの帳簿価額」の算出方法について、選べる2つの方法、届出書の提出期限、届出がないときの扱い、変更の承認申請を、法令と国税庁の案内にそって整理します。

国税庁の制度
編集:個人事業主のお金ラボ編集部 / 運営方針・出典

法人が持っている株式や投資信託を売ると、売った分の原価を「一単位当たりの帳簿価額」から計算します。同じ銘柄を何回かに分けて買っていると、1株あたりの帳簿価額の出し方で譲渡損益が変わります。この出し方は「移動平均法」と「総平均法」から選び、届出書で税務署に知らせます。

届出は、有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までです。届出をしないと移動平均法になります。法人の余剰資金での運用全体の税務は法人の余剰資金で株式・投資信託を運用したときの税務で扱っています。

移動平均法と総平均法の違い

選べるのは2つ:法人税法施行令第119条の2は、有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法として移動平均法と総平均法を定めています。
方法平均単価の出し方
移動平均法同じ銘柄を取得するたびに、その取得の直前の帳簿価額と取得した有価証券の取得価額の合計を、有価証券の総数で割って平均単価を出す
総平均法同じ銘柄について、事業年度開始の時に持っていた有価証券の帳簿価額と、その事業年度に取得した有価証券の取得価額の総額の合計を、有価証券の総数で割って平均単価を出す

どちらも、銘柄ごとに計算します。この「銘柄」は、有価証券を売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券、その他有価証券のいずれかに区分したあとの、それぞれの銘柄です。同じ会社の株式でも、売買目的とその他有価証券に分けて持っていれば、別々に計算します。

数字で比べる

同じ銘柄を次のように売買した例です。数字は説明用の仮定です。

時期取引
期首100株を保有、帳簿価額は合計10万円(1株1,000円)
4月100株を12万円(1株1,200円)で取得
7月100株を14万円(1株1,400円)で売却
10月100株を15万円(1株1,500円)で取得
方法1株の帳簿価額売った100株の原価譲渡損益
移動平均法4月の取得後(10万円+12万円)÷200株=1,100円11万円3万円の利益
総平均法(10万円+12万円+15万円)÷300株=約1,233円約12.3万円約1.7万円の利益

総平均法では、売却の時点ではまだ買っていない10月の取得分も平均に入るため、同じ売却でも原価が変わります。移動平均法は取引のたびに帳簿価額が変わる計算で、総平均法は事業年度の終わりにまとめて単価が決まる計算です。

届出書の提出期限と区分・種類ごとの選定

国税庁の手続案内(C1-27)によると、この届出は、有価証券を持っていなかった法人が新たに有価証券を取得した場合や、持っていた有価証券と区分および種類の異なる有価証券を新たに取得した場合に、算出方法を選んで届け出る手続です。

項目内容
提出する書類有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書
提出期限取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで(仮決算による中間申告書を出すときは、その中間申告書の提出期限まで)
提出先納税地の所轄税務署長
提出方法e-Taxソフトで作成・提出。書面の場合は1部を持参または送付
手続の根拠法人税法施行令第119条の5第2項、第184条第5項

算出方法は、売買目的有価証券・満期保有目的等有価証券・その他有価証券の区分ごとに、かつ有価証券の種類ごとに選びます(施行令第119条の5第1項)。種類は、おおむね金融商品取引法第2条第1項の区分によるとされ、国債証券、地方債証券、社債券、株券、証券投資信託の受益証券などは、それぞれ別の種類にできます。外貨建てと円貨建て、外国法人の発行するものと内国法人の発行するものも、別の種類にできます。

届出書の「算出方法」欄には選ぶ方法の番号を書き、「新たに取得した年月日」欄には取得日を書きます。

以前の事業年度に、同じ区分・種類の有価証券について届出をすべき場合は、改めて届け出る必要がありません。たとえば株式を売買目的で取得して届け出たあとに、同じ売買目的の株式を買い増しても、新しい届出は要りません。一方で、投資信託を初めて買うときのように種類が新しくなる場合や、同じ株式でもその他有価証券に区分して買う場合は、その区分・種類について届出が必要です。

届出をしなかったときは移動平均法

届出をしなかった法人は、法令で定められた方法である移動平均法によります(施行令第119条の7第1項)。国税庁の手続案内にも、届出がない場合は移動平均法による原価法になると書かれています。

移動平均法でよければ届出は不要ですが、総平均法を使いたいときは期限までに届出が必要です。選んだ方法(届出をしなかった場合の移動平均法を含む)と違う方法で計算していた場合、税務署長は、その方法が2つの方法のどちらかに当たり、所得金額の計算が適正にできると認めるときは、その方法で計算した所得金額を基礎に更正や決定をすることができます(同条第2項)。届け出た方法と違う計算をした年があっても、直ちに否認されるとは限りませんが、方法はそろえて使うのが基本です。

方法を変えるときは承認が必要

選んだ方法(届出をしなかった場合の移動平均法を含む)を変えるには、納税地の所轄税務署長の承認が必要です(施行令第119条の6第1項)。

項目内容
提出する書類棚卸資産の評価方法・短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・特定譲渡制限付暗号資産の評価方法・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の変更承認申請書
提出期限新しい方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日まで
書くこと変更しようとする理由など
却下される場合現在の方法を採用してから相当期間を経過していないとき、または新しい方法では所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるとき
承認の扱い書面で通知される。事業年度終了の日(中間申告書を出す法人は、事業年度開始から6か月を経過した日の前日)までに承認・却下の処分がなければ、その日に承認があったものとみなされる

届出は取得した事業年度の申告期限までですが、変更の申請は新しい方法を使いたい事業年度の開始前に出す必要があります。届出と同じ感覚で申告期限まで待つと間に合いません。

次に知りたいこと

公式情報

まとめ

  • 算出方法は移動平均法と総平均法の2つ。同じ売却でも原価と譲渡損益が変わる。
  • 算出方法は、売買目的・満期保有目的等・その他有価証券の区分ごと、かつ種類ごとに選ぶ。
  • 届出は、取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで。以前に同じ区分・種類で届出をすべき場合は不要。
  • 届出をしなければ移動平均法になる。
  • 方法を変えるには、新しい方法を使う事業年度開始の日の前日までに、変更承認申請書を出す。

よくある質問

有価証券の帳簿価額の算出方法の届出をしないと、どうなりますか?
法令で定められた移動平均法で計算します。届出が必要なのは、総平均法を選びたいときです(出典:国税庁、法人税法施行令第119条の7)。
届出書はいつまでに出しますか?
有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までです。仮決算の中間申告書を出すときは、その中間申告書の提出期限までです(出典:国税庁)。
株式の届出をしたあとに、投資信託を初めて買ったときも届出が必要ですか?
算出方法は有価証券の区分ごと、種類ごとに選ぶため、株券と証券投資信託の受益証券は別の種類にできます。種類が新しくなる場合は、その区分・種類について届出が必要です(出典:国税庁の記載要領)。
総平均法から移動平均法に変えたいときは、どうしますか?
変更承認申請書を、新しい方法を使いたい事業年度の開始の日の前日までに税務署へ出し、承認を受けます。現在の方法を使い始めてから相当期間が過ぎていない場合は、却下されることがあります(出典:法人税法施行令第119条の6、国税庁)。
本記事について。税理士監修前の概説です。試算の数字は説明用の仮定です。区分や種類の判断、届出の要否は個別の事情で変わるため、届出前に税務署または税理士へ確認してください。